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中国の鉄道事情

中国の鉄道事情に関する講演を聴いた。非常に面白い内容だった。鉄道事情と言っても、鉄道会社としての観点ではなく、鉄道車両や信号機などを製造する立場からの切り口であった。講演者のご厚意で、当日の発表資料の一部を提供して頂いた。そのうち北京の地下鉄部分は省略して、中国高速鉄道について、講演内容を紹介したい。
 世界的に「高速鉄道」の定義は時速250kmを瞬時にでも出せる路線と車両を指す。日本で言えば新幹線である(そういう意味で山形新幹線は高速鉄道ではない)。ちなみに世界的な鉄道車両製造メーカーは、ドイツのシーメンス、フランスのアルストム、カナダのボンバルディアである。この欧米勢に食い込んできたのが、中国の鉄道車両製造メーカーを合体させた中国中車集団。。高速鉄道の距離数で、世界ランキングを見ると、日本は第2位で3,000km強くらい。しかし第1位の中国は、何と31,000km以上とのこと。国土が広いせいもあるが、日本の10倍以上。しかも今後は南はインドシナ半島、西はイルムチ、北はロシアにまで延伸する計画。更には「一帯一路」で、果てはロッテルダムやヴェニスまでという、成吉思ハーン並みの鉄道構想。中華思想とは、まさに桁が違う。ちなみに第3位はスペイン、第4位はフランス、第5位はドイツ。
 米中貿易摩擦で、米国が問題提起している技術移転。このことに関する講師の見解は「たしかに中国は技術移転の約束を交わしての取引契約することが前提になる。しかし技術移転の約束を交わしていないと、特許技術や設計図データを無断でパクられるリスクがある。しかし技術移転契約をしておけば、そのようなことはなく安心」と肯定的な見解。しかも合弁会社設立で、契約期間は受注が保証される実益もある。「中国人は他国の知的財産を盗む」と中国をディスる人も多い。しかし彼らは彼らなりに努力を怠っていないそうだ。例えば鉄道で言えば、中国東北地方あたりだとマイナス40〜60℃くらいまで気温が下がる。日本では、なかなかそのような場所も少ない。だから日本には油が凍った時にどうすればいいのか?というノウハウが薄い。だから中国人は、手本にした日本にはないノウハウとして、油が凍る地区の輸送に関する知識を得た努力は尊い。その努力を認めてやって欲しいとの、講演者の発言には、政治とは別の角度の、現場どうしならではの心の交流が感じられて感動した。2019年

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