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北青鵬の引退と宮城野親方の二階級降格処分

 北青鵬が弟弟子への暴力行為で、引退届を日本相撲協会に提出。日本相撲協会は21日のコンプライアンス委員会(外部有識者は青沼隆之委員長=元名古屋高検検事長を含む3名、コンプライアンス部長は花籠親方、他は一門代表のコンプライアンス担当の親方衆)で北青鵬の引退勧告処分と宮城野親方の降格を決めており、23日の臨時理事会でコンプライアンス委員会の提案を承認した。本人も度重なる暴力行為を認めているため、北青鵬の引退はやむを得ないと思う。角界では内部的な暴力事件が多い。近年においても日馬富士、貴ノ岩、貴公俊など他にも数多ある。格闘技で集団生活だから起こりがちのことなのか。昔はもっとひどかったとも聞くが、今は実態がSNSなどで表に出やすくなっている。北青鵬は204cmの身長を持つ大型力士で、恵まれた体格に将来を嘱望されていた。脚が長いせいか腰高で立って、相手に潜り込まれるのを、背中から上手を取るまで辛抱するという、非常に特殊な取り口だった。だから取り組み時間がやたらと長くて、1分以上の長丁場は当たり前。水入りになったことすらある。正直言って『相撲巧者の白鵬の弟子にしては、どうしてこんなに相撲が下手くそなのだろう?』と疑問だった。身体だけで勝っている印象だった。『きっと師匠の言う通りに、稽古してこなかったのだろう』と思っていた。暴力行為の再開を恐れた部屋の力士たちが、本人の現役続行希望を拒否したという話しが、今回の問題の根深さを語っている。

横綱も期待されていた有望株だった北青鵬関

 理事会の決定には宮城野親方の二階級降格と減棒が含まれていたが、これはコンプライアンス委員会案通りだった。同じような暴力事件での親方の処遇は、伊勢ヶ濱親方は二階級降格だけ、陸奥親方への処分は減棒だけだった。量刑は基準を明確化すべきではないだろうか。それにどうしていつも「部屋の責任」なのだろう? 理事長や理事会に、事件頻発の責任はないのだろうか? 責任範囲を極小化させるための防御策であるような気もする。それに加えて、宮城野部屋の伊勢ヶ濱一門預かりと師匠代行を立てるという決定は「親方剥奪?」とも取れるショックな決定だった。コンプライアンス委員会では、宮城野親方の角界追放の意見まで出たと言う。たしかに1年間以上の事実隠匿と、北青鵬本人に注意していなかったというのが事実なら重大だ。部屋の建物が準備中で、旧東関部屋に仮住まい中。まだ家主の高見山が住んでいるので、宮城野親方は通い(そこは貴乃花親方と同じ)で滞在時間が短く、目が届かなかったという事情もあったそうだ。

報道陣を前に謝罪する宮城野親方と北青鵬
報道陣に頭を下げる宮城野親方と北青鵬


 どうも協会は『貴乃花と白鵬には厳しいなあ』と常々思っていた。もともと横審や協会は現役時代から白鵬には手厳しかった。『外国人特にモンゴル人に対する「乗っ取られ」警戒感が意識下になければいいな』と思う。とはいえ音羽山親方(鶴竜)、大島親方(旭天鵬)、高砂親方(朝赤龍)は無事平穏なので、人によるものなのか。いずれにしても、つくづく残念な残念な事件である。日本人にはアンチ白鵬が多い。禁じ手でない張り手やエルボーへの非難や、会場が盛り上がった万歳三唱への処分は自分にはよく理解できない。むしろ白鵬は角界を盛り上げようと、野球賭博や八百長事件で協会が苦しい時期も含めて、誰よりも努力してくれていた不世出の横綱だったと思う。そして宮城野親方は「白鵬杯」など相撲の世界普及にも熱心で、双葉山や宇佐神宮など相撲の歴史もよく研究し、取組解説は頭脳明晰の理論派で、関取も多く輩出していてスカウト能力も高かった。今後の角界を、二所ノ関親方と共に双璧で担うものだと信じていた。外にばかり目が向いていて、内側に目配りできていなかったのだろうか。宮城野親方もまだ38歳と若いので、必ずや不屈の精神で立ち直って欲しい。これを機に角界を去るなどということが、ありませんように。

宮城野親方

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