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志水辰夫「ラストラン」

志水辰夫「ラストラン」。電子復刻第57弾。叙情的な文体で冒険アクションから恋愛小説や時代小説まで手がける。「このミステリーがすごい」でも高い評価を受けていた。全十編の短編集。先の見えない人生、保証のない職場、孤独な境遇、忍び寄る老境。読んでいて、一緒に奈落に落ちてしまいそうな不遇。それでも、どんな凡庸な人生にもドラマは起こる。自らに通ずる、愚かさと浅ましさ。暗い、本当に暗い。人生の哀しさと、やり切れなさを語るエレジーの数々。
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①A列車で行こう 
・片田舎のスナックで働く規子。嫌悪した街だが、指名手配中の男を待っている。
②石の上
・八ヶ岳の牧場を経営する夫婦をつけ回す初老の元刑事。牧場にある岩に潜んだ秘密。
③カネは上野か
・不忍池で鳥に餌をやる日課の老婦人が、池から探し当てたヤバい物とは。。。
④ジャンのなる日
・「男運がない」とボヤく母親に通う情夫。少年ノボルは家に帰れず、競輪場そばの廃車置場で遊んでいたが。
⑤やどり木
・住宅地への道の途中に立つエノキ。そこに建つ祠には母子の怨念が宿るという。
⑥愚者の贈物
・クリーニング店で働く昭子は、コインランドリーで落とした鍵を拾う。こっそりロッカーから回収した荷物の正体は?
⑦わけありごっこ
・横丁のスナックのママが握っていた過去。お金になる情報には、人が蟻のようにたかる。
⑧見返り桜
・工場閉鎖の従業員の再就職。収拾に訪れた専務に仕掛けられたハニートラップ。
⑨狙われた男
・相棒を殺されて、つきまとう臨時工。居酒屋で居合わせた男は、凶行に同伴する。
⑩僕にしか見えない
・ホテルで出会った清楚な女性。しかし求愛する男性に、決して素性を明らかにしない。

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