見出し画像

石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』

石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B07J4L83HX/
 堺雅人が主演で大人気だった番組「VIVANT」で取り扱われたことで、6年前の本が一気にブレイクした(こういうところが出版という事業の面白いところ)。「別班」とは、自衛隊内の非合法組織で、米軍と情報を共有するスパイ組織として発足した。露・中・韓で海外情報を収集。身分を秘匿するために、自衛隊を形式上は退職して、外務省職員や民間組織を偽装する。家族にも事情を話せず、同窓会にも出席できず、年賀状も出せなくなる。総理大臣や防衛大臣や幕僚長ですら、その組織の存在を知らないという信じられない記述。知らなければそれで済まされるという、蜥蜴の尻尾切りな無責任。元部下に海上自衛隊員の家族がいたが、行く先も秘匿されると聞いた。たしかに自衛隊には機密事項が多い。しかし別班の扱いは、それどころではない。存在そのものが、シラを切られているのだ。
 もともとこの情報を追ったのは共産党機関紙「赤旗」。共同通信社は、自衛隊関係者に剣もホロロに扱われ続けても、諦めずに5年半もの間ずっと取材を続けた。そして特定秘密保護法の成立と競い合うようにして、記事の発表に踏み切った。ニュアンスとしては『文民統制されていない、自衛隊組織があっていいのか?』。別班の存在は、戦前の関東軍の暴走に比肩する行為ではないかというテーゼである。そして秘密が露見した時には、海外紛争の端緒となり、別班員の身に危険が及ぶだろう。挙句はガードマンが必要なほど、身の危険を顧みずに発表に踏み切った。
 読んでいて驚愕したのは「別班」が、陸軍中野学校の系譜であったこと。陸上自衛隊小平学校(現・情報学校)、その校長も中野学校の教師だった人。小平学校は、その後にムサシノ機関、小金井学校などと通称を変えている。実は亡父が中野学校の出身だった。秘密だったのか、在学当時の記録はなく、名簿や関係書籍は遺っていた。中野学校は、ルパング島で小野田少尉が発見されたことで脚光を浴びた。小野田少尉は南アルプス麓の二俣校だったが、亡父は東京の本校だった。その跡地が現在の東京警察病院で、そこに自分が通っていることに、父子の因縁を感じる。開設当初の中野学校はエリート校だったが、亡父は終戦間際の在学で、その頃は交戦による休学期間もあって、かなりアバウトな教育機関だったようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?