中国地理ノート

 中国の領土は960万㎢と広大であり、陸上の国境線は2万2千kmと、世界一長い。陸軍兵力は98万人。陸上で危ないのはインドとの国境で、カシミール地方の帰属をめぐって争っている。インドは陸上だけでも113万の兵力を持つ大敵だ。
 同盟国としてはロシアとパキスタンがある。それぞれ陸上戦力は55万。インドは北に中国の98万、西にパキスタンの55万と対峙している。
 インドは中国に対抗するため、軍事同盟のQuad(日、米、豪、印)を形成し、防衛力を強化している。

 海軍戦力は総トン数290万と、世界二位だ。海上で対峙しているのは日本、台湾。その背後にはオーストラリアとアメリカがある。海上戦力はアメリカを除けば有利だが、同盟国のロシアがあれなので少々心もとない。
 台湾侵攻を行った場合、成功するかは微妙なところ。しかし目的を防衛に限れば十分な戦力を持っているといえる。

 国内に目を向けると、東部の沿海部が発展し、西部(内モンゴル自治区含む)は取り残された感がある。

 中国は国内を三つの経済区分に分けている。東部、中古、西部である。東部では環渤海経済圏、長江デルタ経済圏、珠江デルタ経済圏の三地域が発展している。
 環渤海経済圏は首都ペキンを含む地域で、その名の通り渤海を囲むように広がっている。
 長江デルタ経済圏は上海を中心とし、北の江蘇省、南の浙江省にまで広がっている。
 中国における最大の行政区分は省であり、27個ある。東部沿海地域は遼寧省、河北省、山東省、江蘇省、浙江省、福建省、広東省の七つ。この七省が中国の成長をけん引しているといっていい。

 珠江デルタ経済圏は香港を中心とする。いわゆる華南の地である。
 華南はもとは中原から見れば辺境とされていたが、六朝時代にこの地に根を張った諸王朝が開拓したことから発展。唐王朝の経済力は華南の収益でまかなわれていたほどだ。華南は経済力があり、また農作物も豊かであり、華南の物産は多く華北へと運ばれていた。
 現在では華北のほうが土地が豊かになり、逆に華南へ食物を運んでいる。

 中国の経済力の源は今あげた三つの経済圏であり、軍もこれを守ることを前提として考えられていた。海軍基地もこの三か所に置かれている。ちなみに、海兵隊にあたる海軍陸戦隊は三か所にそれぞれ二個旅団ずつ置かれている。

 冷戦下、1960年代の防衛計画は東部沿海地方を第一線、それを支援する北京ー広州鉄道周辺を第二線、それより西を第三線とした。
 第三線には工場など、兵站支援のための設備を建設。その中心となったのが重慶市であり、軍事上の生産拠点となる。

 冷戦が終わってのちは重慶市は民間の工場集積地へと変わり、中央直轄地となり、それまで属していた四川省から独立。現在でも西部における主要な都市となっている。

 1978年に鄧小平政権がはじまると市場経済の実験場として、珠江デルタ経済圏が発展。上海、環渤海地域も発展し、東部は豊かになる。しかし西部は取り残され、経済格差が広まった。

 西部は内モンゴル自治区、陝西省、重慶市、貴州省、雲南省、四川省、広西チワン族自治区、寧夏回族自治区、甘粛省、青海省、新疆ウイグル自治区、チベット自治区だ。面積は国土の7割と広大だが、人口は3割の3億6500万人しかいない。

 西部は漢族以外の人々、つまり少数民族が多く住む土地でもある。中国には56の民族がおり、漢族以外の55族は少数民族と呼ばれている。少数民族の総人口は1億人ほど。朝鮮半島と隣接した地帯などにも自治州があるが、ほとんどの民族は西部に住む。

 1999年ごろから、経済格差をなくすため西部大開発が行われる。目的は経済格差是正だけでなく、少数民族の不満を抑えることにもあった。少数民族の住む地域は国境沿いのため、多くの軍事基地を含む。また、天然ガスや鉱脈などの資源もあるため、これらの地域を安定させることは防衛上も重要な措置だ。

 大開発では鉄道と道路の建設、天然ガスを送るパイプラインなどのインフラが整備された。また、教育水準の向上などによりGDPは年10%以上も上昇。
 2008年のリーマンショックでは西部大開発により内需が拡大していたため、資本主義国がダメージを受ける中でも成長を続けた。

 それでも経済格差は依然として残り、近年は成長も伸び悩んでいる。

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