[第5回・後編] そのギャンブルにいくら払う? --- 期待効用理論

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第5回<前編>はこちらです。
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後半では,
・そのギャンブルにいくら払う? ー 期待効用理論
のイントロダクション的な内容について話しました。

【板書】 不確実性下での意思決定における有名なパラドックスである
(1) サンクトペテルブルクのパラドックス
(2) アレのパラドックス
を解説。

(1)のコイン投げのギャンブルでは,賞金の期待金額が無限大に発散するにも関わらず,多くの人はこのギャンブルをプレイするためにほとんどお金を払おうとしません。この単純な例から,期待金額(だけ)を基準に人々が不確実性下の意思決定を行っているわけではないことがうかがえます。板書右上では,仮にギャンブルの胴元に予算制約があって,$2^30(だいたい約10億ドル!)までしか払うことができない,つまり裏が30回続けて出た場合にはギャンブルがその時点で終了して$2^30を受け取る,ような状況では,期待金額がわずか$15.5に過ぎないことを示しています。現実には予算制約が存在するので,それを見越して人々がギャンブルをプレイすることの支払額を決めているのであれば,小額しか払おうとしない現象は(ある程度)説明できるかもしれません。

予算制約とは異なる「サンクトペテルブルクのパラドックス」の有力な“答え”は,人々は期待金額ではなく,
・賞金から得られる“効用”の期待値(=期待効用)を基準に意思決定を行う
というものです。効用関数(のようなもの)をvとおくと,vの形によっては期待効用は有限の値に求まります。vがいったい何を意味しているのか,という点については次回の講義で詳しく解説します。

(2)は,人々が期待効用に基づいて意思決定を行って“いない”ことを示すパラドックスになっています。実際に,クラス内で挙手してもらったところ
・aとbではaを選ぶ
・cとdではdを選ぶ
学生が圧倒的に多かったです。しかし,この選択行動は,期待効用理論では説明できません。なぜなら,aの期待効用がbのそれよりも高いことと,cの期待効用がdのそれよりも高いことが,数学的には同値となっているからです。少し字が小さく読みにくいですが,板書赤字の計算過程を確認してください。


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