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【感想文】『すずめの戸締まり』を見てきた

こんにちは!『すずめの戸締まり』を見てきたので感想をやっていきたいと思います!


どこから手を付けるべきか。まずは全然まったく面白くないと思ったところから始めようと思います。

宗像草太とかいう男

予告を最初に見て懸念したことといえば、「この線の細くてシュッとした顔は良さげだけどなんだか得体のしれない男とすずめとの間になんらかの関係が発展していったとして、我々は本当にそれに感情移入することができるのか?」という点でした。私は無理でした。

予告の段階では「なんらかの関係」などとお茶を濁して見ないことにしながら本編に臨んだわけですが、すずめは最終的に好きな男であるとはっきり言うわけで、分かっていたことではあるんですけど恋愛の話かーいってなるわけですね。さてどうだったか。

そもそもの話ですが、宗像草太とかいう男、メインキャラにして予告編からの情報の増えてなさがヤバいとは思いませんでしょうか?いやだってどんな男かって言われたら、その、ほら予告編見れば大体分かるじゃないですか。実際だいたいあんな感じだったわけでしょう?確かに「家業の閉じ師をやってはいるけど教員志望の大学生で、採用試験の直前まで宮崎くんだりを旅してた」とかバックグラウンドにおや?と思わされた場面もなくはないのですが、そこで止まって先が全然ないように感じるわけですよ。

他のキャラはどうだったかといえば、「実はこのような人物で…」といった情報が付加されるたびにだんだんとそのキャラたちのことが好きになっていく確かな実感があったわけですね。あのダイジンとかいうクソ忌々しい猫畜生が!ってなるようなキャラでさえ、描写が増すほどに前半までとは打って変わって極めて複雑な感情移入が発生してきたわけですよ。ところが宗像草太に限ってはその感覚が湧いてこないんですまことに申し訳ございません。

私はどうしても、全編を通してこの男の人生に対する解像度が異様に低い気がしてしまうわけですよ。「この男、実はとってもモテるんです!!」みたいな描写さえもがもうちょっとどうにかならなかったのか?と首を傾げてしまうんですね。どんな人生送ってきた?何考えてる?よくわかりませんでした。

そこに来てすずめちゃんとの関係に戻りましょうか。好きな男のために死ぬ物狂いで日本のあちこちを駆けずり回るすずめちゃんこそが話をクライマックスに導くわけですが、ごめん何一つ応援できないですよ私…ごめんね…

まず前半がとにかく退屈だと私は思ったわけですよ。実質1人の家出少女が無理やりすぎる伝手を頼りに日本の半分を横断する展開、私は「ちょっと無理…」って思いました。もう少し心穏やかに見てられるロードムービーをやってくれ!(後でちゃんとやってくれました)

そのちょっと無理のありすぎる旅のなかで、かけがえのない大切な思い出…絆….少しずつ心惹かれていく…みたいな要素をお出しされても、私にはまったく受容できませんでした。

この辺りに関しては、全2作がどんなことやってきたかというのを思い起こすとよかろうかと思います。ありましたね?例のやつですよ。

RADWIMPSを流しながらダイジェストすると男と女の間に異様な速度でかけがえのない日々の思い出が充填されていく、という手法のは新海誠の手による世紀の大発明であるというのは皆さんご存じかと思いますが、この黄金のメソッドがいかに強力なものであったかが本作を通じてまたしても間接的に証明されてしまったといっても過言ではないと私は思います。

いやだって、ほら…子供と遊んだり新幹線乗ったり踏み台にしたりされたりキスしたりしなかったりとか…その、あるけど、あるけど足りなくないですか?思い出みたいなのが…

宗像草太とかいう男が「こんなところで終わりだなんて…」「俺はもっと生きたいんだ」みたいなことを言う背景、何がありましたか?本編始まってからの時間軸の話しか出てこなかった気がするんですけど、それって大分空虚な人生だとは思いませんか?なんでもいいからもう少し背景を寄こしてくれ頼む…


というかむしろですよ、宗像草太とかいう男、いなくなってからの方が話が面白いまでありませんでしたか?だって後半、どうやったらそうなる?みたいな意味不明な3人の組み合わせと1+1匹のロードムービー、死ぬほど面白くなかったですか???予告でオチてる予定調和の退屈な展開が終わったと思ったら、画面の向こうでなんか死ぬほど面白ことが始まったんだけど!!というワクワク感!尺的にそんなに長くないのは分かるんだけどもっと続いてくれ~~!!最高!!

というか最初からこれやってくれよ!!!


芹澤朋也とかいう男

芹澤朋也、後で予告を確認したところ一応おったわこいつ、ってなるくらいにはマジでどこからともなく現れた男なんですが、あまりに面白すぎるマジで最高のキャラクターだったので新海誠はマジの超天才だと崇め奉るほかないと私は感じています。芹澤が出てきてからの監督といったらもう創造性が爆発してるというか超絶ノリノリで書いてる間ずっと筆が走ってるだろという感じがヒシヒシと伝わってくるんですね。オンボロ中古車乗り回して懐メロかけるこの男に狂わされてどうかしそうなんですってばほんと。ギャグまで冴え渡るので劇場も全員笑ってたし。

岩戸環とかいう女

え、ここで乱入してくる!?マジで!?って絶句しましたけど、蓋を開けてみると環とすずめの関係こそがこの話を貫く大きな芯の一つだったと分かるわけですね。長年にわたって抱えてきたすずめに対するわだかまりのようなものを一気にぶちまけてしまうところはあまりに苦しいものでした。一方で爽やかな日差しのもと自転車に2人乗りしながらのセリフは「言ったことが全部じゃない」。奥ゆかしくすべてを語らずとも、しかし映像は二人の関係の深まりを美しく煌びやかに描き出しているわけです。なんと尊い一瞬でありましょうか。映画を見ることの喜びはここに極まれり…

いやほんといいものを見た。

ラストにかけての展開は普通に胸を打つものでありました。3月11日の日付を見た瞬間にすべてがつながるあの瞬間。着実に描写を積み重ねながら最後の瞬間にそれらが一点に交わる、息をのむような緊張感。あまりに辛く、苦しく、真っ黒に塗りつぶされた絶望の日々をめくった先に待っていた光…
過去に向き合う、人生に向き合う、失ったもの、今自分が持っているもの、手に入れたいもののすべてに向き合う、そのために扉を潜るすずめの決意、「行ってきます」の一言。

いやほんと凄いよかったな…別に宗像草太とかいう男がどうなっても割とどうでもいいんだけどな…とか思った以外はマジで最高の展開だったと思います。普通に涙がじんわりしてきたのを覚えています。



まとめ

前半が全然面白くなかったけど後半の面白さが異常だったので総合評価で「めちゃくちゃいいもん見たなぁ…」ってなるような作品でした。2回目も見に行くと思います。






追伸:まだ書いてない例のブツはそのうち出ると思います。

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