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救世主になった話。

今日、僕は救世主になりました。

今さっき、とある高速サービスエリアで大学生くらいの女の子を助けてきた。いや、助けたほどの自覚はないが僕のことを救世主と呼んでいたからきっと助けた。

なぜ今、高速道路サービスエリアにいるのか。

昨晩、経営者のセミナーに誘われて甲府まできた。

いつもお世話になってる美容師さんに誘われた。僕のオーダーはいつも適当で「このあと〇〇にいくので、それに合う感じで!」みたいなもの。でもいい感じにしてくれる。初めてパーマをかけてもらった時の巻きのキツさ以外、満足している。

道中で会社から緊急連絡があり、何かと思ったら、駐車場にカルバンクラインのパンツが落ちていたそうだ。社内で騒ぎになってると連絡があった。

僕が泊まりの為に用意した着替えパンツだ。

使い古したパンツじゃなくてよかった。

いやよくない、パンツが足りない。

不幸中の幸いなのは、たまたま持っていた数少ないカルバンクラインのパンツがその日の出番だったことだ。社長の威厳をなんとか保ってくれた。

そんなこんなで、いつも髪を切ってもらってるお返しに、誘われた会を受け入れてみた。経営者セミナーは、“僕はもう手をつけているよ”の内容だったので、人そのものに興味を持って過ごしていた。何はなくても他者の人生からの学びは多い。

もともと僕は人間観察がすきだ。人間観察というと、やらしい響きなので、目の前の人の物語が好きといいかえておく。

時を戻そう。今その帰り道。

地元から離れたときはできるだけおみやげを買って帰るようにしている。

おみやげはサービスエリアが1番よい。隣の隣の都道府県のものまで置いてある。行ってなくても行ったことにできる。

今回は、子ども用にりんちゃん(ゆるきゃん)のボールペンと富士山を買ってきた。りんちゃんは娘に。富士山そのもの御神体すぎて買えないので手のひらサイズのふじさんのぬいぐるみ。富士山のぬいぐるみってなんだ。そういうわけのわからないものを息子は喜びます。妻にはお菓子を与えておくと大体オッケーだ。

一通り見繕ってレジに立つ。

目の前で女の子2人が「現金じゃないとだめなんですか?」「ATMもないんですか!?」と行き場のない感情というほどでもない困った様子で食い下がってる。店員さんは無理なものは無理といった感じ。

このご時世、レジが現金オンリーとは驚きだ。

僕のお会計になる。みたところPayPayもクレジットカードも使えるようだ。あの子達、このレジ打ちのおばちゃんに現金オンリーと言わせるなんて、どんな悪事を働いたんだろうか。

僕の会計が、りんちゃんのボールペンと富士山とお菓子で4970円と言われて、日本の象徴たる富士山ブランディングに恐れ入ってるさなか、すこし離れたところで現金女子が「もう、無理かもしれません、最悪、私たちは離脱で」などと絶望を相棒に電話している。

おいおい、何が起きてる。

一体レジで何を買おうとしてたんだ。

なんで登山映画のピンチで“私たちはここで置いて行ってください”的なセリフがでるんだよ。すでにミステリーの領域に踏み込んでしまった。

その時だ、まるで走馬灯のようにとはいわないが、思い出したら色々がつながった。

女子大生、団体、冬、、現金でしか買えない、、、女子大生にしてはメイクとチグハグちょいださめのモコモコした服装、、

!!

スキーチケット!!

思い返せば駐車場の車は、スキー板を積んだものばかりだった。

ものの数分で、コナンと金田一の遠い親戚になってしまった。 

問題はここからだ、絶望に打ちひしがれた彼女らを救おうと、救世主の血が覚醒した。

だがお金をあげるつもりはない。思い出してほしい。ATMの有無をたずねていたではないか。人を見た目で判断しては行けない。僕より金持ちの女子大生なんて世の中にはいくらでもいる。

ここでえらそうに助けるのはダサい。その割に誰かを助けるのってわりとなぜだか勇気がいる。

困っているかわからないし、そんな時は「何かできることはありますか」と聞くと助けやすいと聞いた。

しかし、コナンと金田一の血筋の僕は、真実を掴んでいた。なにも確認してないけど。

「現金必要なんですよね?」すべてをわかっているような顔で言った。この時点で算段はあった。

そうPayPayを使った現金交換だ。

彼女らはお金がないのではない。現金が欲しいのだ。

「PayPayで送ってくれたらその分の現金をわたしますよ?」

2人のうち、1人に声をかけた。ボーイッシュなもう1人は先輩らしき人と電話をしていた。

1人はさわやかに「ありがとうございます」と申し訳なさと、ホッとしたのをミックスした顔で答えてくれた。

もう一人は救世主の存在を初めて感じ取った。
「ちょっと、合流できる人がいたらそれを待っててから、え、ちょ、救世主現れました」

ついに救世主になった。PayPay交換理論が共有され、2人分のスキーチケットだから10,000円くらいとたかをくくって用意しようとしたその時だ。

「ありがとうございます。団体なので、全部で10人分です。」

目の前には2人なのに10人分の現金を用意しろといっている。ここまでの推理が完璧だったのに、最後の最後でどんでん返しだ。払えないという、めちゃくちゃダサい終わり方が見えてきた。

払えるのか?いや、はらうのだ。

アガサ博士の秘密道具でなんとかできませんか。

「全部で50,000円なんですけど…」

結果的に言うと合計50,000円をPayPay等価交換してあげられた。

救世主に助けられた経験は新しい救世主を産む。少し多めの現金を持ち歩こう。

これであなたも救世主になれるかもしれない。

家に帰ってレシートをみて驚いた。手のひらサイズのご神体は1,500円だった。多分、頂上でお祓いとかなんとかしてご利益があるんだ。きっとそう。


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