映画刀剣乱舞黎明の感想


 
 (マイナス意見とネタバレを含む感想です注意)



 

自己紹介


 書いている人: 審神者8年、刀ミュと刀ステ等のメディアミックスはおおまかに履修済。
特撮:日曜朝は早起きできないので見たためしがない
 
ニトロプラス:とうらぶリリース前から沙耶の唄はプレイ済。中二病要素はあれだけど作風はなんとなく好きという印象。
 ソシャゲ:艦これと「天華百剣斬」くらいしかしたことない
 

感想とネタバレ


【映画雑感】


今回面白かったけど少々不快だった。前作の「継承」は大好き。
ちょうどいい例えが見つからないけど、初期の「Fate/stay night」を魔改造した実写ドラマとしてオリジナル聖杯戦争見るならこういう作風で楽しんでみたいような気はするけど、刀剣乱舞派生作品で見たくはなかった。
観察者羞恥で正視に堪えなかった。
 

【映画のおおまかなあらすじ】


 山姥切国広と三日月宗近が2012年の東京で行方不明となった。
 
 ことの発端は平安時代の調査。三日月たちの部隊は時間遡行軍と戦っている途中、酒呑童子と遭遇。彼は毒を盛られて瀕死の状態であり、意味深な言葉を残して消滅。その際酒呑童子の血を浴びてしまった山姥切国広までもが姿を消す。
 友を探すべく、三日月宗近は平成の東京まで追いかける。しかし慣れぬ時代で実体化を保つ力が足りない。
 そこで三日月は偶然出会った「物の声が聴こえる」という特殊聴覚をもつ女子高生琴音と仮初めの主従契約を結ぶ。
 マイペースで図々しい三日月宗近に戸惑っていた琴音だが、どこか憎めない所があり彼に協力することに。
 時を同じくして、他の刀剣男士も神主からギャルまで個性ある主と組んで山姥切捜索に参加していた。
 くだんの山姥切国広といえば、とある不幸な少年が主になっていた。大枝伊吹は酒呑童子の依り代であり、2012年は一度死んだ酒呑童子の目覚めの年に当たる。
 そこに目をつけたのが時間遡行軍で、酒呑童子を利用して刀剣男士を滅ぼそうとしていた。
 仮の主たちの協力もあり、三日月や長谷部はどうにか山姥切国広を発見できたが、酒呑童子に振り回されているうちに大量の時間遡行軍に囲まれて絶対絶命。
 酒呑童子は共闘関係にあった時間遡行軍の肚が読めていた。時間遡行軍は酒呑童子の「思念を奪う力」を利用して刀剣男士たちを逸話ごと消していた。その直後に酒呑童子は時間遡行軍を見限り始末する。
 
 渋谷では刀剣男士側も多くの本丸から援軍を要請。一般市民と仮の主契約を結んで顕現。スクランブル交差点で大暴れ。敵集を食い止めてもらっている間に、三日月と琴音はスカイツリーに立てこもった酒呑童子を追い詰める。
 そして迎える最終戦、
琴音は人間として、酒呑童子に取り込まれてしまった伊吹の心に寄り添い、懸命に声をかける。そして三日月宗近は刀剣男士の矜持をかけて、酒呑童子と闘う。
 やがて声が届き、依代との解離でスキができた酒呑童子の首を山姥切国広が討ち取る。
 
 役目を終えた三日月たちは、桜吹雪に包まれ笑顔で本丸へ帰っていく。
平和な日常を取り戻した一人の女子高生は、国宝展に飾られた美しい太刀を感慨深げに眺めていた……
 
 
……わかりにくい説明ですいませんが、私の読解力文章力が半分と残りは映画のつくりが原因です
 
※わかってんだけど上記説明書き損じ※
・刀剣男士は一般市民と、時間遡行軍は前世に恨みを持つ酒呑童子と利害が一致
・念いを奪うことで、逸話で形成された刀剣男士の実体を不確かにさせるのが敵の狙い
 

以下箇条書き


◆長く感じたところ
・現世に甦る酒呑童子の黒目がちになって角生えるエフェクト
・大枝伊吹の過去回想
・琴音ちゃんの「あなたの中のあなたの声を聞いて」のあたり
・スカイツリーの山姥切国広が酒呑童子の首を獲るまで
・エンドロール
 
◆逆に足りなかったところ
・平安京の歴史上人物の出番
・三日月宗近以外の刀剣男士と仮の主とのなれそめや関係性(各務と長義等)
・山姥切国広は敵に洗脳されたのか記憶喪失中に情が移ったのかわかりにくい
・終わりがけのシーンでかなり貧しい家庭(弟にまともなおもちゃを買ってやれないほどの)はずの伊吹くんを国宝展に連れて行ってあげた女性は保護者か支援者か
・高速バス
 
◆こういう要素にCG技術使って欲しかった
・刀装兵
・真剣必殺(肌露出少なめの)
・こんのすけ
・時の政府からの入電
 
 
◆見ていてムズムズしたところ
・カフェで写真撮られる三日月宗近
・空を舞う色とりどりのスーモくん
・ありし日の健くんがゴムボールに顔描いてるときのやりとり
・「じゃあネッシーだね」
・スクランブル交差点で応援するモブがしらじらしい
・ギャル審神者で好感持たれようとする作り手の意図
・「……全ての人間が、審神者とある可能性を秘めているということか」←このセリフでゲームの新規ログインをあからさまに募っている
 
 
◆よかった部分
・三日月宗近が一人だけで背負いすぎない
・下手に折れない
・男女ペアの安易な恋愛描写はない
・山姥切長義の活躍
・援軍に現れた陸奥守吉行がイキイキしてた
・殺陣の技術
 
 
 

【映画を見ていてどのように不快に感じたか】


 各所にちりばめた設定と情報量に対し、一つ一つの堀り下げがされていない。
 王道と言えば聞こえはいいが、悲しい過去を持つ敵や心優しい少女といった紋切り型のオリジナルキャラクターや、ことあるごとに「歴史を守るより人の命と心の方が大事でしょう」と言いたげなセリフが目立ち、話のテンポを悪くした。
 仮の主従関係を結んだ酒呑童子と山姥切国広の関連性があまりにも薄く、それならまだ髭切や鬼丸国綱の方が親和性も高いのではないかと思った。
 多くの審神者が嫌がる三日月宗近が主人公で山姥切国広が準主役という位置づけをまたやらかしている。
 制作側が難しく考えずに男性客や子供にアクションバトルを楽しんでもらおうとしているのだと思うが、雑なセリフ回しやこじつけ理論が目立つため知性の無い作風に見えてしまう。
 小烏丸や一期一振などの刀剣男士たちの出番が、くだらないオリジナルキャラクターの犠牲になっている。
 観客視点の仮の主、鈴木琴音は話を進行するための駒でしかないにもかかわらず、歴史を守って山姥切国広を見つけなければならない刀剣男士たちの言動に水を差した。
 「継承」でインパクトを残した豊臣秀吉とは逆に、キャラクターに作り込みがない鈴木琴音にも敵側重要人物の大枝伊吹にも人間らしさは感じられないため、キャラ立ちもしていなければ見る者が感情移入もできない。
 公開直後の感想を見ると「王道」「特撮、ニチアサ」という単語が目立つ。私はニチアサに疎いが、ファンの方々は映画のあのバカっぽいセリフやスーモ君崩れのダサいアイテムを見て面白いと思っただろうか?
 公開前から期待されていた長谷部と仮の主が高速バスに乗るシーンは極端に少なく、また、ギャル審神者役の演技も不自然であったため、場を和ますコメディリリーフ的な役割は果たせていなかった。それだけでなく、バスの中で水五則らしき格言を急にギャルが言い出したくだりがあまりにも不自然で、日本史に疎い私にもどうせ苗字は黒田なのだろうとわかってしまってしらけてしまった。最後の別れ際のシーンに新鮮な驚きがない。
 ちいさいおともだちにも楽しんでもらおうと思ってこれだけ単純な流れにしたのなら、何故腕を斬り落とされたり女子供が殺されたりするショッキングなシーンを導入したのか、そこが理解に苦しむ。
 刀剣男士と仮の主を5組も作っておいて、なれそめがしっかり描かれているのは三日月と琴音だけという雑さ。シチュだけ出してあとは審神者が想像力を膨らませてくれると思ったら大間違い。それなら大枝伊吹と弟の悲しい過去も匂わせだけにとどめて描いたらよかったのではないか。過去回想の伊吹君の、室内のあの謎の動きはなんだったのか。
 作中一番の盛り上げどころとされる、スクランブル交差点の援軍男士だよ全員集合のシーンも「ほらお前たちが見たかったシーンこれだろ」と制作側がいいたげなわざとらしさを感じた。胸熱展開もホロリと泣ける(つもりで描かれた)シーンも上滑りした。
 スカイツリーにて、琴音ちゃんが酒呑童子に取り込まれた伊吹くんに「友達の念い、家族の念い、物への念い、私たちは常に、自分以外への念いに突き動かされて生きてるって知ったんだ」と説明するシーンは言葉選びがポエムでかゆくなってきた。
 歴史保護より人の命と心を大事にするなら、いっそのこと記憶喪失のまんばちゃんにそれをやらせたらよかったのに。記憶を失って己の責務がわからない状態から地の性格で善悪を決めたのであれば、刀剣男士の任務の薄情さに異議を唱えるかもしれない。
 琴音ちゃんが国宝展に付き合わされるシーンで「学校サボって何やってるんだろう」というセリフがあるけれど、映画のために有休をとった審神者の何人かは「仕事サボって何やってるんだろう」と肩透かしを食らったにちがいない。
 映画刀剣乱舞黎明の脚本の稚拙さ加減を何で例えたら伝わるだろうか。
 役者が高級食材でVFX映像技術スタッフが高性能調理器具だったらクソマズ料理ができてしまったような出来。それすなわち調理人の技術不足に他ならない。
 余談だけど映画を見たあと具合が悪くなり、高熱出して悪夢見た。
 ノットフォーミーだとか前作とはジャンルが違うとか、そういった意見もあるけれど、私に向けられてなくても黎明はつまらないし、小林靖子脚本とくらべなくても黎明はおもしろくない。
 言わないように我慢していたが私は元々「主刀」や「刀さに」というジャンルの中で、書いている人の自己愛が強い作品がメチャクチャ苦手で、でもそれを言うときちんと刀剣男士の良さを描ける主刀描きフォロワさんが「もしかして私の事?」って誤解しそうで明言しなかった。
 だからフォロワさんや尊敬する絵師さんは除き、黎明をきっかけに「私の考えた審神者かわいいでしょ?」という主張の強い創剣乱舞が余計に嫌いになってしまった。
 
 これもまたみんなはっきりと言わないようにしていたことだけど、これから劇場版名探偵コナンが放映されたら黎明は話題に挙がらなくなると思う。それはもうしかたない。

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