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高層マンションとみなとみらいの男の子

先日、横浜の赤レンガ倉庫で開催しているクリスマスマーケットに、久しぶりに再会した友人たちと行ってきた。

キラキラと白色のフィルムに包まれたような光沢を放つツリーを、白い息を吐きながら見上げる。ネオンに包まれながら、何を食べる、何を見ようかと話しながら歩く。そんな、向こうから迫ってくるクリスマスを全開に感じた日。

帰りは、最近できた桜木町とワールドポーターズの前を結ぶロープウェイの下を歩きながら

バックにそびえ立つ高層ビルのネオンと、光るロープウェイのコントラストに、行ったことはないけどシンガポールとか、香港とか、上海とか、そんな異国味を感じたのである。

そんな光る高層ビルを見ながら、18歳の初めてのみなとみらいでのデートを思い出した。

みなとみらいとは、昼も夜も、平日も休日も、男女が並んで歩く場面を見ない日はない、そんな場所。

学生時代、横浜付近に部屋を借りていた私は、初めて聞いたその平仮名に憧れを抱いていた。

大学1年生のちょっと肌寒くなってきた頃、顔が小さくて背が高い、イケメンに分類されるであろう同い年の男の子とみなとみらいにデート(デート、と呼んでいいのだろうか)に行った。

どこに行ったとか、何をしたとか具体的には思い出せないけれど、コスモワールドに行く道中にある、階段を降りた少し広い広場にベンチがポツンとあった。

そのベンチで、「カップルがよくこのベンチに座って喋ったりしている」そんなことを話した。
私も君とそんな風になれるかなと、なれるまでにまだ至っていない関係性の中でそんなことを思ったような。

デートの帰り道、これは手を繋ぐ雰囲気だよな、なんて思いながら立ち並ぶ高層マンションが綺麗に見える歩道を歩いていた時、ふとその男の子が「俺、将来あんなマンションに住みたいんだよね」とそびえ立つ高層マンションを見ながら、立ち止まってポツリと、でもしっかりした声で呟いた。

彼の黒目は高層マンションの光が反射してキラキラと輝いていた。

私はというと、「いいね」なんて返しながら心ではちっともその言葉に共感できていなかった。

光を放ちながらそびえたつ高層マンションは、何年か経って、私が何者かになれたとしても、とても手が届かない代物に見えたし、そんなマンションに住んでいる自分は全く想像できなかった。

彼のそのほんの些細な一言は、別に本心じゃないのかもしれないし、本心なのかもしれないけど、その言葉に彼と私の何か決定的な違いを感じてしまった。

結局、その男の子と付き合うことはなく学生生活は終わった。その後みなとみらいには何回も足を運んでいるし、いろんな思い出を積み重ねたり、塗り重ねたりしているけれど、みなとみらいの夜景を見たら思い出してしまうそのワンシーン

そうやって、みなとみらいの夜景にはいろんな人のいろんなエピソードがあるんだろうな、とか思ったのです。

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