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[詩] 季節の間

夏だった
男は私くらいの若さ
高校になった初めての夏
図書館の自転車置き場
男が近づき
荒い息をし
私に両手を
伸ばしてきた

悲鳴がようやくもれたのは
私の男友達が
偶然通りかかったとき
声も出ず
何もせず
自分を嫌だと思って責めた

冬だった
男は中年会社員
大学からの帰りの電車
ボックスシートで本を読む
男がつつき
目をあげた
私にペニスを
のぞかせた

誰かに言おうと思ったのは
男がそれをしまいこみ
電車が駅に着いたとき
声も出ず
何もせず
自分を弱いと思って責めた

気がつくと
ソファの上に
押し倒されて
男の頭が
首にあった

やめての言葉が
もれたのは
男の口が
私の口に
重なろうとしかけたとき

男は私を娘と呼んで
結婚してからたわごと言えと
説教たれる人だった

そしてまた
夏がくる 冬がくる

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