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知っておきたい高齢者の薬の使い方~④骨粗しょう症

骨粗しょう症とは

骨粗しょう症は、骨密度の低下や骨質の劣化によって、骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。
通常骨の代謝は、骨吸収(骨が壊されること)と骨形成(骨がつくられること)の2つがバランスよく行われています。そのバランスが崩れてしまい、骨吸収(骨が壊されること)が過剰になったり骨形成が減弱すると骨粗しょう症になります。
検査で骨粗しょう症といわれても、「老化によるものだから、わざわざ治療しなくても良いのでは?」と考えられがちです。しかし、骨代謝のバランスの崩れを治療すれば改善する病気なので、転倒・骨折による寝たきりになることを予防するためにも治療は必要です。
高齢化の進む日本では患者さんの数が増加傾向で、およそ1,300万人が骨粗しょう症と言われています。特に女性に多く、患者さんのうち約8割が女性です。

骨粗しょう症治療薬について


骨粗しょう症の治療は薬物療法が基本で、薬の効果によって大きく3つに分けられます。

主な骨粗しょう症の治療薬

薬によって飲み薬や注射薬など剤形に違いがあり、使用する頻度も様々です。医師は骨の状態に合わせて薬を選択しています。

骨粗しょう症治療薬の押さえておきたいポイント

◎正しい方法や注意点を確認する

先ほど紹介したように、骨粗しょう症の治療薬には様々な種類があります。そのため、薬ごとの使用方法や注意点をしっかりと確認しておくことが重要です。

例えばビスフォスフォネート製剤を服用する時には、以下のような注意点があります。
・朝起きて空腹時に服用してください。(薬が食べ物とくっついて吸収されにくくなるのを避けるため)
・服用後30分は横になったり、前かがみになったりしないよう気をつけましょう。(胃の中の薬が逆流して、食道を痛めてしまうおそれがあるため)
・水道水やミネラルの少ない軟水で服用しましょう。(ミネラルが多い硬水で服用すると、薬の成分がミネラルと一緒に体の外に出てしまうため)
また、ビスフォスフォネート製剤を服用すると、顎骨壊死(がっこつえし)という副作用が現れる可能性があります。
顎骨壊死は口の中が不衛生な状態になると起こりやすく、あごの骨に炎症が起こり、あごの腫れや下唇のしびれなどが現れます。歯の治療などは、この薬を使用する前に済ませておくことも大切です。この薬の服用中は、歯の治療はこの薬を服用していることを伝え、口やあごに違和感を感じた場合はすぐに医療者に伝えてください。

◎継続して薬を使用する

骨粗しょう症は長期にわたり治療が必要な病気です。しかし骨粗しょう症の治療薬は他の病気の薬に比べて、効果が出るまでに時間がかかる場合が多くあります。高齢者がご自身の判断で服薬をやめてしまわないように、「薬の継続が骨折をふせぐことにつながる」と声をかけ、サポートしていくことが大切です。

◎サプリメントや食品による影響を確認する

「骨を強くするためには、カルシウムをたくさん摂るのがいい」と言われていますが、ビスフォスフォネート製剤はカルシウムを同時に摂取すると薬の効果が弱まってしまいます。
反対に、薬によってはカルシウムの摂りすぎによって、高カルシウム血症などの副作用が起こるおそれもあります
同じ骨粗しょう症の治療薬といっても薬の種類によってカルシウムとの影響は異なるため、サプリメントの使用にあたっては医師や薬剤師に確認しておくことが大切です。

◎少しの動作でも骨折しやすいことに注意する

骨粗しょう症の方は、転倒などしないように気を付けましょう。特に高齢になると、ふらつきを起こす薬を服用している場合も多く、脱水状態でも転倒しやすくなります。また、寝たきりの方の場合でも、おむつ交換や入浴介助などのちょっとした動作でも骨折してしまうことがあります。背骨や脚の付け根を骨折する場合が多いですが、これら1か所が骨折すると、次から次へと連鎖的に骨折する「ドミノ骨折」も起こりやすいため注意が必要です。家族やヘルパーの方は細心の注意を払いながら介助し、ご本人に痛みなどがないか確認することも大切です。

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<監修>
堀美智子
薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター医薬研究所所長。名城大学薬学部卒・同薬学専攻科修了。著書、メディア出演多数。
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