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屋久島の鳥たち 9月

渡りの季節到来


 8月があっという間に過ぎていきました。
 自宅周辺以外のとりさんぽの時間がなかなかとれませんでしたが、南部にツアーの送迎や用事があった時は春田海岸に寄り道。
 押し寄せる波音の中に、「ぴょぴょぴょ」と聞こえてくる声!
だけど姿が見えない!
 確かにこの海岸に、耳馴染みのない鳥がいるはずだ!
と目を凝らして、ゴロゴロした小石の海岸をスキャンして見ていくと、ツツツと動くものが。
 いた!
と思って体をそちらに向けると、鳥たちは警戒するのかパッと飛び立ちます。「ぴよーぴよー」と羽ばたいてちょっと離れた場所に降ります。

慌てて逃げるキアシシギとメダイチドリ
アオアシシギ(左)とキアシシギ(右)

 キアシシギやアオアシシギが浅瀬を歩きながら、水中の魚やカニを狙っているようです。
長い足でひょい、ひょい、と歩く姿が美しく、長いくちばしを素早く水中にパシッと入れる俊敏さは惚れ惚れします。

キアシシギ。長いくちばしで獲物を獲りやすそう

海岸の岩と同化しそうなメダイチドリとキアシシギ

 キョウジョシギやメダイチドリは小さめで、ちょこちょこちょこと小石を超えて歩いて行き、その動きがかわいらしくついつい顔がほころんでしまします。

 シギやチドリたちは春先に屋久島より遥か北方のシベリア周辺まで飛んでいき、そこで繁殖します。産卵しその雛たちが巣立ちの時期を迎えると、もう南へ移動し始めるのだそうです。
 シベリアから赤道を超えて東南アジアやオーストラリアに渡っていきます。
 キアシシギはその距離が1万㎞に及ぶそうです。体長約25cmの小さな体でそんな長旅をするなんて驚いてしまいます。

キョウジョシギ。赤い足が目立つ

 北から南へ向かいながら、日本各地の干潟などに降りて英気を養っていますが、屋久島には広い干潟はないので、そんなにたくさんのシギやチドリが集まっているのは目にしません。
 でも、春田海岸の潮が引いた浅瀬はそんな長旅をする鳥たちにとって、いい栄養補給の場所になっているのでしょう。

 9月は越冬地の南へ向かっていく鳥たちが、屋久島に立ち寄る時期のようで、これからいろんな鳥たちの姿が入れ代わり立ち代わり見られます。
 たくさんの群れで電線に並んでいるコムクドリ。スズメよりもやや大きめで、この時期に電線にたくさんの鳥が並んでいるとついつい凝視してしまいます。

電線にとまるコムクドリの群れ。つぶらな目がかわいい♡

 コムクドリのようにたくさんの群れでいるものもいれば、ひっそりと単独で電線にとまっているものもいます。
 エゾビタキは9月から10月の間見られるスズメよりやや小さい鳥です。飛んでいる虫を捕まえるフライキャッチャーなので、同じような食性である夏鳥のリュウキュウキビタキと争っているような場面も見ることがあります。

ひらけた場所に出てくるエゾビタキ
電線の若いキビタキとエゾビタキ。この後追い回すように飛んで行った

 大型の旅鳥といえばサシバです。9月下旬から10月にかけて、その渡りが見られますが、それはまた今度書くことにします。
 越冬地に向かう旅鳥たちに出会うのはほんの短い期間。出会えることを期待して涼しくなった秋の野道を歩きたいところです。

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福留 千穂/ふくどめ ちほ
 鹿児島生まれの鹿児島育ち。県内の小中学校で養護教諭として勤めていましたが、ガイドを志し2014年に屋久島へ。屋久島の自然を案内する中で、野鳥の存在は避けては通れず、野鳥を覚えるために意識して見るようになったところ、野鳥のかわいさ、美しさ、たくましさに触れ、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。
 現在はカメラを片手に、野鳥の姿や鳴き声を探して歩く「とりさんぽ」が生活の一部になっています。
 耳を澄ますと、いろんなところから鳥の声がする。
 よく見ると、いろんな鳥が近くにいる。
 そのことに気付いてもらえ、野鳥の生活に気持ちを寄せてもらえると嬉しいなと思い、屋久島で見られる野鳥の様子をお伝えしていきたいと思います。