服薬指導で防げるミス〜貼付剤〜

服薬指導は患者さんに服用を説明する場であったり、薬を理解してもらうようにする場であったり、薬が今回の治療にあっているか確認する場であったり・・・と、非常に多くの意味合いを持ちますが、薬の監査にも役立つ事は薬剤師が意識すべき事かと思います。

経験の浅い頃、私は説明や薬の確認だけで追われて「物を間違えないように」ばかり考えてました。

しかしながら、その薬をなぜ医師が処方したかを考えられるようになると、調剤でミスる事も減りました。

今回は貼付剤を例として説明します。

パップ剤とテープ剤

ロキソプロフェンやらケトプロフェンでよく見かけるかと思います。
パップかテープかを確認するには、急性期か慢性期かがポイントかと思います。

パップ剤は急性期

パップ剤は主成分の他にパップ剤の特徴である「患部を冷やす」という作用を持ってます。体からの水分つまり汗を吸って患部を冷やします。
その為、打撲や捻挫など患部の熱を冷やす必要がある時に良く用いられます。

ですので、パップ剤が出た時はその原因となった事を確認しておくと服薬指導に役に立ちます。

テープ剤は基本慢性期

テープ剤はパップ剤に比べて膏体と呼ばれる部分が薄く、基本的に患部を冷やさないとされてます(実際は貼付すると表面温度は1度程度さがるそうです。)。

その為、腫れは引いたものの痛みが残るといった場合、つまり慢性期的なステージの痛みに使われる事が多いです。

急性期だけどテープ剤?

実際によくあります。手や足の関節部には剥がれにくいテープ剤を使用する事があります。
そもそも、パップ剤が温度を下げると言ってもせいぜい1~2度程度とされ、アイシングのような冷却効果はあまり無いとされてます。

また、急性期の痛みでテープ剤が処方された場合、関節部に使う事が多いので、貼り方をしっかり説明する必要は出てきます。
ちなみに最近のパップ剤も改良が加えられ、パップ剤を伸ばしながら貼ると貼り付きが良くなる製剤もあります。

また、テープ剤はカットしても使う事があります。
ちなみにパップ剤もカットできますが、パップ剤の外縁に剥がれにくくする工夫がある製剤もあるので注意が必要です(ま。だいたい切っても大丈夫ですが。)。

慢性期だけどパップ剤?

これもあります。
患者さんの希望で出している事もあります。
「冷やしたほうが楽みたい。」などと言う場合に使われる事もあります。

また、薬剤師で注意したいのが、パップ剤でも「温パップ」がある場合です。
一般名が似ているので、レセコン入力で間違って選択している場合があります。

正直、この間違いはデカいです。

温パップは慢性期

温パップは患部を温めたい時に使用します。
冬場で冷えによる痛みの訴えで出される事があります。
温テープも同じ理由です。

しかしながら、温パップが患部を温めるかというかというと、表面温度は1~2度下がっているそうです。
あくまでも知覚神経に作用して温かい感覚を与えているだけだそうです。

大きさにも注目

貼付剤の調剤ミスで起きやすいパターンに規格違いがあります。
ケトプロフェンだと、テープとパップで

  • 20mgテープ

  • 30mgパップ

  • 40mgテープ

  • 60mgパップ

の4つの規格があります。
また、先発品のモーラスパップXRも含めると6規格まで増えます。

小さいテープは指や手、手首、足首、首などの関節部に用いられる事が多いです。
また、自分で腰や背中に貼る際に大きいと貼りづらい為、小さいサイズを好まれる場合があります。

部位の確認の大切さ

その為、部位を確認する事は薬剤師にとっても重要です。
患部によるトラブルは以下のものが、これまでありました。

  • 指への貼付方法の説明を受けてなかった。⇛様々なカットの方法があります。

  • 手への使用時に半日程度で汚れる。貼付回数が守れない。⇛剥がしても数時間効果残る事を踏まえ、指示の回数を超えてしまうものの貼り替えても良いことしてます。

  • 腰。冬場でも汗でかぶれることがある。⇛もし、蒸れてかぶれやすい場合は、次回の受診でテープ剤の検討を患者さんから医師へ相談してみるように促した事があります。トレーシングレポートも良いかも知れません。

  • 手首など露出部にケトプロフェンテープ。⇛疑義照会して他の製剤に代えてもらった事があります。特に春〜秋。

  • 膝下へのケトプロフェンの使用。⇛これも露出部への光線過敏症のリスクを避ける目的ですが、女性や短めいズボンを履く男性の場合には、注意を喚起してます。

  • 腰や背中への非露出部へのケトプロフェンテープ。⇛年齢に注目してます。夏場で外のプールに入る機会がある年齢には注意を促してます。大人でも子供とプールで遊ぶ方には光線過敏症の注意促し、必要があれば疑義照会で他の製剤に変更を相談します。ただし、ケトプロフェン製剤から他の製剤への変更で、他のNSAIDs貼付剤で「腰痛症」の適応は少なかったか、無かったかかと記憶してます。勇んで「ロキソプロフェンに変更!」と、疑義照会したら「適応が無いので出せない。」と言うこともあります。

性別にも注目

性別ですが特に妊娠後期の妊婦さんへの注意が必要です。妊娠後期ですと見た目からわかる事もありますが、過去の副作用報告を見ると家族が使用していた物を分けてもらった事から有害事象が起きた例があります。
そのため、全世代が知っておく必要がある内容かも知れません。ケトプロフェン製剤は妊娠後期では禁忌なってます。理由は胎児の動脈管収縮との事です。妊娠中期でも羊水過少の報告があります。
貼り薬だからといって軽視はできないかと思います。また、他のNSAIDsも慎重に使うべきでしょう。

蒸れやすい部位への使用や連日の使用

貼付剤のかぶれの原因に薬剤の成分が原因となる他、接着剤が原因であったり、蒸れが原因であったりします。

絆創膏などてかぶれやすい場合、事前の服薬指導で拾うことも可能です。

蒸れによるかぶれは、着衣の数、季節、温度差などさまざまな要因があります。

この場合、違和感を感じたらすぐに剥がす事の他に、剥がしても数時間は効果が残っている事を伝え、肌を休めながら使う事ができる旨を伝えてます。

一旦、かぶれると貼付剤を貼れるようになるまで結構時間がかかるため、この「肌を休める方法」と、言うのは重要かと思います。
また、2回目の以降での確認や、季節的な変化の有無を確認するのも重要です。

別の理由ですが、夏場だから冷たいパップを希望する方もいらっしゃいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
上記の内容を頭に入れておくと、薬剤師から見て使用している製剤の妥当性が評価できるかと思います。また、薬歴への記載も重要になってくるかと思います。

そうする事でエラーは少なくなるかと思います。
一部、私見も混ざっておりますご参考いただけると幸いです。

また、良かったと思われる方はサポートを頂けると幸いです。

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