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看病はしません。仕事じゃないので。

 シャチョーが風邪を引いたっぽい。

 事務所にある社長のデスクに、冬眠から目を覚ました熊のような、二日酔いしている像のようなおっきい人がいると思ったら、それが彼だった。「大丈夫ですか?」と尋ねると、「…チョーゲンキ」とかすれ過ぎて声になってない声で返事が来た。目は真っ赤に充血していて、たぶん今日中にはゾンビになる感じの顔面だった。普段はVシネっぽい様子のシャチョーも今日はパニック映画状態である。

 病院にも行った後で、ちゃんと薬も飲んでいるようだったので、あとは何も出来ることはない。ゆっくり休んでほしいけれどもそんなこと私が言ったところで素直に聞かないだろうし、とにかく私にできることは、自分の仕事の傍ら「筋肉ハ、全テヲ、解決スル…」とか言いだして筋トレしようとするのを制することくらいしかなかった。

 噂を聞いた従業員さんが休みを返上して様子を見に来てくれた。シャチョーは、熱はないし仕事には支障はないと主張。しかしあまりのゾンビ化にさすがの従業員さんも心配している様子だった。喉が完全にやられたのは前日からで、その時はまだ「声がかすれてるせいで“反社み“が増すね」みたいなジョークも言えていたのだけれど、今はもうそれどころではない。

 それなのに従業員のために会社のキッチンでお昼ご飯を作ろうとしだしたのでそれも阻止して、私がかわりに煮込みうどんを作った。会社の冷蔵庫には冷凍うどんが山ほどあるのだ。そう、私のために。(謎の経費)
 くたくたうどんをちるちるすすっているシャチョーは、無事にゾンビから弱ったトロールみたいになった。はやく人間になりたいね。

 ただ私の喉がちょっと調子が悪く、咳き込んできたので、私も薬を飲んでマスクして厚着をした。シャチョーが「ダイジョウブ?」と聞くので「大丈夫です」と答えると、”女の子の大丈夫は信じちゃダメだ”ってTikTokで見た、みたいなことをのたまうので、丁寧に「うるせぇ」と申し上げ、食後は静かに休んで頂いた。

 周りでもインフルだとかも流行っている。身体には気を付けよう。

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