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見知らぬ人からのメールではじまった一日

その朝、見知らぬ人から1通のメールが届いていた。苗字には心当たりがあるのだが、名前は?だった。誰だろう?とメールを開く。

「突然のメールお許しください。本日、母Sが永眠いたしました。(後略)」

高校時代の友人S、息子さんからのメールだった。

自動的に脳内スライドショーが始まり、彼女の姿が次々と浮かび上がる。天然パーマの髪が愛らしかったS。葬儀は家族葬だという。何もできることは無いけれど、せめて・・・と私はメールを書きはじめた。

ここからメール

こんにちは^^お知らせありがとうございました。
お母さまとは、ほぼ毎年、東京へ行くと連絡をとってお会いしていたのですが、昨年はコロナ禍もあり行けませんでした。お誕生日にLINEからバースデーカードを送ったのですが、返信が無く・・・。が、後から「ごめ〜ん、今気がついた〜!」と返信があるのはよくある事なので、きっとまたそうだろうと思っていたのですが・・・。

本当に本当に残念です。

私とお母さま(Sと呼んでいましたのでSで)が出会ったのは高校の時です。家が近かったのと二人とも自転車通学をしていたので、行きも帰りもよく一緒に自転車で走っていました。お互いの家を行ったり来たりもしていましたし、吉祥寺の町をブラブラしたりとかも。

だって、Sはめちゃめちゃ可愛かったのです!ちょっと困ったような顔は、家族の話をする時。デキのいいお姉さんが悩みの種だったように思います。多感な時期ですから、みんなそれなりに悩みはあったと思いますが・・・。嫌いな先生は「もういや〜!✖️✖️️」と言ってました。実際イヤな奴でした(笑)

私が特に好きだったのはSの笑った顔でした。下手なジョークにもバッチリ反応してくれるのです、Sは。ですから、高校時代の私はいつもSをどうやって笑わせようか?と頭を捻っていたように思います。そのくらい素敵な笑顔でした。

大学は関西の方でしたから、その次にお会いしたのは千葉のマンションに伺った時かと思います。結婚されてすぐと、〇〇さんがまだムーニーちゃんだった頃に。お互い子育てやなんかでしばらく間が空き、東京に引っ越されたあたりからかな?またお会いするようになりました。

たまに会うと、Sはストパにしている以外は全然変わってなくて、お互いいいおばさんなのに、会えば秒速で高校生に戻るんです。ジャニーズの追っかけみたいなことをしているとか楽しそうに話しておられました。一度長野へも遊びに来てくれましたっけ。

私の父が亡くなった時は、葬儀に参列してくれて、姿を探した時にはもう会場から出た後でした。そんな風にひっそりと寄り添ってくれる人でした。「私は弱いから」とよく言ってましたが、弱いからこその優しさがあったと思います。人に寄り添えるというのは才能です。目立たないし誰に褒められるという訳でもないけれど、それは立派なギフトです。

大人になってからも、Sに会う前はいつも笑える話を用意するようにしていました。そのくらい私は彼女の笑顔が好きだったのです。その笑顔にもう会えないのはやはりこの上なく寂しいことです。

今朝起きて「そうか、もうSはお空の上へ行っちゃったんだね?そこの居心地はどう?まあ、私もそのうち行くから待っててね?」と話しかけていました。

〇〇さんの方がずっとずっとお辛いでしょう。寂しいでしょう。お父様もどんなにかお寂しいでしょう。
私も父が亡くなった後はしばらく使い物になりませんでした。腑抜けです。誰か大切な人が亡くなるって本当に大変な事なのだと思います。

私も寂しいです。あの笑顔を見られないのが。でも、記憶に残るくらい笑ってくれてありがとう、寄り添ってくれてありがとう、友達でいてくれてありがとうって思います。そして、もし天国で会ったらまたジョークを言おうって決めています。

天国のSがストパか天然パーマかが気になるところではあります。
とにかくSは、私にとって「笑顔の素敵な寄り添う人」でした。とお伝えしたくてメールを書きました。もし失礼なところがあったらお許しください。

〇〇さんもお体ご自愛ください。また上京の折には連絡させていただきます。

ここまでメール

人は死ぬ。必ず死ぬ。何をしても何もしなくても。

Sは最高の笑顔を私に残してくれた。

私は何を残すのだろう?

とか考えていると辛くなるばかりなので、うんと年上の友人に電話した。ここは経験者に頼る場面だろう。

「同級生に先逝かれるとしんどいよなぁ。」とKさん。

「そやね、クラスで目立っていたような人影の薄い人はわりに早く亡くなるわなぁ。」とKさんは言う。

「クラス委員とかで活躍するような人は、エネルギーを使い果たすんちゃうかなぁ?影の薄い人は、元々エネルギーが少ないんかもしれんね?」

「普通の人が長生きしとるわ。同学年200人おったけど、今残ってんの3分の1やで?」

もはや統計が取れるくらいの経験値に驚くが、彼女は続ける。どうやら72年生きた彼女によれば「普通の人が長生きする」という事らしかった。彼女と話す時はなんとなく関西弁になるので、以下関西弁で。

私「嫌やで、息子からメール来るの。前もって言うといてや。」

K「まだ死なへんやろ。もし死んだらあんたとこへ蛾になって飛んで行くわ。」

なんで蛾なん?

私「蛾は家の辺り、多いさかい、あんたとタダの蛾の見分けがつかん。蝶とかきれいな鳥とかにしといて。」

K「ほな、蝶々にするわ。」

私「うん、蝶々で頼むしな。」

そういえば、昨日あまり見かけないきれいな鳥がレッドオークの木に止まっていた。

あれは Sだったんだろうか?

ねえ?

Sちゃん

天国でまた会おうね

天国、なかなかええとこみたいやし♪


年長の友人のありがたみをヒシと感じながら、見知らぬ人からのメールではじまった怒涛の1日が終わろうとしている。

Sちゃん、また会おうね♪

Kさん、蝶やで、蝶!

蛾はあかんしな!



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