かねぼう

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  • 浜通り滞在記

    • 28本

    福島県浜通りにある富岡町に滞在し、インターンシップを行う学生のみなさんが書く滞在記です。

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選んで選ばれた私の写真たち

福島県の浜通り【富岡町】

    • 生活することで分かること

      生活すること 生活することで分かること 洗濯物を外に干そうと思ったとき、放射線が付着したら嫌だなと思った みんなは洗濯物を普通に干せたのかな? 窓を開けることや、外で遊ぶことが普通にできたのかな? これはここで生活しなければ、思いもしなかった感覚だろう ここに来て、生活をしなければ 多分こういう些細な営みの中で、ここで生活しているのだと気づく とても当たり前のように、 自然に、身体の中に染み込んでいくように 富岡町の一部として取り込まれるかのように 私はやっぱり、こ

      • 【ペルソナ】誰かの語り?

        あの日から13年が経った いまだに言われる避難生活という言葉 私って避難生活をしているのか? 私は今、自分の意思でここにいる 避難生活と言われると、私はここで生活をして生きていると言いたくなる でもあの6年間は確実に避難生活だった 選択肢すら奪われて、第三者が勝手に自分の中に介入してくるような感覚 でも実際に私はあの頃自分の意思でそこに居たのかと言われると、別にそうでもなくて なんとなく生まれた場所だったっていうだけだった だからここにいる理由はなかったかもしれないけど

        • ソーラーパネル観察日記

          3月3日(日) 曇のち晴れ 今日も家の周りには 変わらずソーラーパネルがある 少し曇りがちだけど 雲の隙間から覗く太陽の光を浴びて  たくさんの電気をつくっている  こっちに来てから  毎日 晴れの日も雨の日も雪の日も みんなおんなじ方向を向いて 太陽の光を待っている じーっと、待っている 何十年も枯れることはないし お世話をする必要もない 水や肥料も もちろんいらない 私たちは 何十年後まで あの景色を見続けるだけ 電気を使い続けるだけ みんなが力

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        • 浜通り滞在記
          28本

        記事

          富岡の砂を配達します

          福島県の浜通り なので富岡町には海がある うん、それはみんな知っていると思う だけどね、砂が ここはすごい 知ってた? 砂時計のあの砂 粒が細かくて手のひらからこぼれ落ちる感じ それにね、どこまでも沈んでいっちゃうんじゃないかと思うほど抵抗感がまったくない すごく身体に馴染む だからあの砂になら沈んで行ってもいいと 身を委ねてしまう 常にポケットに入れておきたい それでずっと手を入れて触っておきたい 甲子園の球児が砂を持ち帰る気持ちが少し違う意味で  で

          富岡の砂を配達します

          猫に

          福島県の浜通り 私はここにいながら1週間前に会った彼女に想いを馳せている  それは猫 家にいるだろう猫 おそらくこたつに あのふわふわの毛並みを 窓を開けるとすんすんと匂いを嗅ぐしぐさを まるまってお腹が上下に動くさまを 爆睡していると聞こえるあの変な寝息を 私がここにいる間 彼女はひとりで寝るようになった 私がここにいる間 玄関の鍵の音に敏感になった 離れていながら 私が彼女に影響を与えているかと思うと ひどく嬉しい どうか  帰ってやらないんだから

          富岡の風

          福島県の浜通り 磯の匂いがまったくしない 柔らかくて冷たい海風 この風によって 電車がよく止まる 「今日の風は大丈夫だね」 「これよりさらに強かったら止まってたね」 「夜にこの風が吹いていたら富岡には着けなかったね」 何があろうと 常に富岡にふぶく風 身体感覚にのみ残る 富岡に住んでいる証 住んでいた証 今の私たちと 過去をつなぐ共通の感覚 私は1カ月の滞在で、この風に対する感覚を持ち帰ることができるのだろうか ここに来なければ、滞在しなければ分かるはずも