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起業家募集の逆ピッチ?スタートアップスタジオのユニークさがわかるイベント!

 世界的に注目を集めるスタートアップスタジオという業態の会社が日本でも増えてきました。起業家に寄り添い、支援するという意味ではVCとも重なる部分もありますが、プロダクトやサービスに初期段階でこだわり、いわゆる「0→1」と言われるイノベーションの核を意識して、仮説構築とその検証を納得行くまでやるというスタートアップスタジオの業態は、まだ十分に理解されないと感じることもあります。

 欧米では、起業家と投資家の資金だけでは、事業の偏りや限界があることが認知されていて、そこを補正して成功確率を上げる方法論として、スタートアップスタジオがクローズアップされていった流れがあります。起業支援の仕組みの成熟でできている側面があるのですが、日本の場合は、まだ「スタートアップをもっと応援しよう、起業家を支援する文化を広めよう」という段階なので、VCとの違いが腑に落ちないのかもしれません。

 そんな理由もあって、スタートアップスタジオ同士が連携する機会が増えてきました。起業家や投資家に正しく理解してもらえないとスタートアップスタジオのノウハウやリソースも活かしきれません。
 さて、そこで今回のイベントです。「スタートアップスタジオって何?」がわかりやすい企画なので、是非、ご紹介したいです。スタートアップスタジオ側がプロトタイプとなるプロダクトをつくってあって、グロースさせてくれる起業家を見つけて、一緒に法人をつくろうという「逆ピッチ」イベントです。各領域でしっかりとした知見と情報網はもっているのがスタートアップスタジオですから、市場規模と成長可能性についてはリサーチ済みのはずです。各社「顧客のペイン」を押さえたMVP(ミニマムバリアブルプロダクト)ができていて、次のフェーズに作る段階といったところだと思います。良い創業チームが組成できれば成功確率は、通常のスタートアップより高いはずです。少なくとも初動でやるべきことは明確でしょう。

 エンターテックを得意領域としているStudioENTREはプロデューサーの中村が、HushTuneというサービスをピッチングします。
 HushTuneは、Gincoというブロックチェーン技術を持ったスタートアップと共同で進めている事業で、ブロックチェーン活用コンテンツ関連事業として、2019年に経済産業省の助成金を得て実証実験を行いました。その際は、JASRACやNexToneなどへの作品届を、作家が作曲した時点から一気通貫で行うという内容でした。楽曲ができた時点でタイムスタンプを押し、コンペ等で採用された際は、その情報が音楽出版社によって上書きされ、そのまま信託団体に提出できることが確認できています。僕らはすぐにでも提供するので、早くこの仕組になると良いのですけれどね。

 それだと既存業務フローの置き換えで事業としての収益拡張性(スケーラビリティ)が弱いので、Studio ENTREの事業としては、「楽曲コンペの民主化をインターナショナルに行う」というテーマを設定しています。ノンコードのバブルを使ったプロダクトで、Co-Writing Farm、anything goesの作曲家チームが数百曲を登録して、SDR、MSMILEといったインディーレーベル/事務所が参加。実際に楽曲の売買が成立することは検証済です。
 ただ、日本の音楽業界は、既存のレーベル、出版社、作家事務所のよるコンペの仕組みができあがっていて、ペインはありません。日本のインディーアイドルのためのコンペの仕組みを作っても、音楽ビジネス生態系のUPDATEに繋がるイメージは持てないので、本格的に事業化するとしたらインターナショナルなサービスとしてしてやるのはマストという認識です。調査の結果、どの国でも楽曲コンペは、業界内コミュニティ、インナーサークルで行われる場合が多く、そこにビジネスチャンスがあることはわかっています。
 もちろん課題も複数存在します。LAを頂点とする世界の音楽界は、コンペで集めた楽曲を音楽出版社がレーベルA&Rに売り込むというやり方自体が、時代遅れになり始めています。アーティストは、才能を感じるクリエイターがいたら、コーライティングして一緒に創ってしまうという流れが増えています。ここ創作〜原盤制作の領域でも音楽ビジネスの大きなトレンドである「個へのパワーシフト」が起きているのです。今から立ち上げて3年後にグローバルで使われるようにできるとして、その頃には、世界中の作曲家が参加できる「コンペの民主化」というコンセプト事態が時代に合わなくなりそうです。グローバルなクリエイターコミュニティ形成みたいな事業ドメインが必要なのかもしれません。
 元々、僕がイメージしていたHushTuneの最大の可能性は、ブロックチェーンで世界中の楽曲が流通する時代にルールメイカーの中に入るという目標です。世界一の楽曲コンペプラットフォームになれば、Spotify、Apple、ユニバーサルミュージックなどと一緒に新たな音楽著作権ルールを決める一員に入れるかもしれないと考えた訳です。その5年後想定の仮説は「個へパワーシフト」が加速していることで間に合わないかもしれません。ただ、中国を始めとした音楽市場が伸びているところに、他国の優秀なソングライターの楽曲をつなぐサービスはニーズはしばらく残っています。
 最初から国をまたぐという難しさと、最終的な目標をどこに置くのかのターゲット設定を創業チームに加わる起業家たちと話し合いたいというのが今回のリバースピッチでの僕の立ち位置であり、期待です。

 構想から何年も経って、改めて創業チーム組成に取り組んでいるHushTuneは遠回りをしているかもしれません。でも、無駄なプロセスや誰かが傷つく出来事は起こさないまま、ノウハウと知見が積み上がっているというスタートアップスタジオならではの展開になっています。
 イメージしなければ始まりませんし、挑戦しなければ何も起きません。何度でも挑戦できる、そして確度をあげていけるのがスタートアップスタジオの存在意義です。懲りずに続けていくつもりです。
 6月2日に Startup Hub Tokyo主催でオンラインで行われるスタートアップスタジオ3社によるリバースピッチイベントに是非、参加してみて下さい!

 「スタートアップスタジオ」について興味のある方は、こちらの書籍が日本語のものでは定番的にオススメです。

この入山教授の解説動画は素晴らしいので、是非、ご覧頂きたいです!

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モチベーションあがります(^_-)