世界的なコンサート興行会社ライブネーションの記事です。インターネットのコンサート配信については、アメリカも動きが鈍いなと思っていたのですが、いざ動き始まるとさすがアメリカは動きが早いですね。
　間違いなく言えることは、これからのコンサートはリアルとオンラインのハイブリッド型になるということです。リアルとバーチャルは対立概念ではなくて、両者の間もグラデーションで繋がっています。東京ドームの端っこで大画面を見ながら楽しむコンサートと高音質高画質の映画館で生中継されているコンサートを他の観客と一緒に観るのでは、どちらが「リアル」なのでしょうか？VRや立体音響などの効果的な技術活用もこれから本格化していくでしょう。「空間の共有」よりも「時間の共有」の方が「リアルにコンサートを楽しむ」ことの肝になっていくかもしれません。

　コロナ禍で政府や自治体から「自粛」が強いられる中、やむを得ずという形でコンサートのオンライン配信は始まりました。「無観客」という言葉に象徴される、嫌々やっている感はもう卒業しましょう。観客はオンライン上に居るのですから、そもそも「無観客のコンサート」という言葉は間違っていると思います。見切り発車的に始まったこともあって、デジタル配信に関する技術的な知見やクリエイティブ演出に関するノウハウが不十分のまま広がって、既にアーティストもファンも「配信疲れ」が起きているという説もあります。
　ただ、俯瞰して状況を眺めた時には、インターネットとテクノロジーを活用したコンサートというコンテンツを活用するのは自然な流れです。これまで行われてなかった分、伸びしろは大きいでしょう。サイバーエージェントが発表した市場予測で「デジタルライブエンタメ市場」は2024年で984億円となっています。

　リアルの興行に関する市場変移のグラフはこちらです。順調に成長したコンサート市場は2019年に4000億円を超えました。2020年、2021年は壊滅的な数字でしょうが、遅くとも2022年に4000億円規模を回復することは間違いないでしょう。「自粛」を強いられた分、音楽ユーザーからの渇望感も強く、感染症の終息に合わせて、強い回復を見せるでしょう。

　2023年から2024年で、ライブエンタメ市場は、リアル興行とオンラインと合わせて5000億円突破が期待できますね。オンラインでの鑑賞は、国境を越えやすいですから、海外の音楽ファンに日本のアーティストのパフォーマンスを観せていくことは、同じくコロナ終息後に期待される訪日外国人観光客のリアルコンサートへの送客にもつながります。日本の国内市場だけだと、どこかで天井が見えてしまうコンサート市場を伸ばす役割をオンライン配信が果たすことにもなる訳です。

　そのためにも、アーティストが精魂込めて創り上げる「コンサート」というパフォーマンスをオンラインでもユーザーに届けて、エンゲージメント（関係性）を深めていくことは、とても大切です。ファンが喜んでくれる演出法を工夫したり、オンラインならではのユーザー参加を模索したりしていく必要がありますね。スマホでユーザーとアクセスできることによって、リアル、オンライン問わず、コンサートを観た後に「次のコンサートまで」に熱量をつないでいくことができるようになるはずです。

　デジタルクリエイターをコンサート演出に巻き込んでいくことは、重要ですが、大切なのはコスト意識です。クリエイターのエゴではなく、音楽家の思いがファンに届いて、共有できることがコンサートでは重要です。成功した演出事例は「テンプレート化」して、良い意味で真似し合うことがよいでしょう。

　オンラインコンサートは、（無観客という言葉は辞めましょうね）オンライン専用ステージとリアルなコンサートを配信するハイブリッド型と両面で伸びていくことになるでしょう。僕は、全国ツアーが復活した時に、リアルのコンサートを配信すると同時に、そこで作ったステージを配信専用でやる日もあるような形も面白いと思っています。（それが可能なコンサート配信専用ステジオを作りたいと構想中です。興味のある方は連絡下さい。）

　Studio ENTREの第１号法人FAVERは、コンサート配信プラットフォームの会社です。先月から実際の配信をやり始めています。CEOの小島健太郎は、北海道一のコンサートプロモーターWESSとSXSW日本事務局の両方の経験があり、ITスタートアップであると同時に、アーティストのマインド、コンサートプロモーター、事務所の事情、音楽ファンの気持ちがわかる経営者です。必ずアーティストとファンの両方がハッピーな事例を増やしていってくれると思いますのでご期待下さい。僕も全力で支えます。