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文化・クリエイティブ産業に日本の未来がある!東京五輪で僕たちがやり残したこと

 定期的に書籍出版したり、noteを継続的に書いていると、趣旨やロジックに興味を持っていただいた行政関係からお声掛けいただく機会が増えていきます。経済産業省の委員会に「有識者」枠で呼ばれた時は、気恥ずかしかったですが、もう慣れました。コロナ禍が明けて、改めてエンタメ領域の産業振興に未来志向で取り組む状況になり、ヒアリングという形で各省庁に呼ばれる機会が増えました。大学で講義をやったり、神戸市や東京都のスタートアップ事業者に採択されたりしていることもあり、マクロ視点で考えるようになっていきます。自己紹介では「本籍音楽業界、現住所はITスタートアップ」というのが常套句になっていますか、自分の専門分野から少し視座を上げて、日本の未来のために何が必要かを考えるいると、「文化・クリエイティブ産業の振興」という言葉にたどり着きました。この数ヶ月調べている中で、素晴らしい本に出逢いましたので、紹介したいと思います。「森ビル」の森記念財団都市整備研究所が出版している『文化・クリエイティブ産業の育ち方』という本です。「ロンドン式」「ニューヨーク版その1「その2」と3冊の本が出ています。非常に的確な指摘にあふれ、丁寧な調査、適切な人のコメントが載っている素晴らしい本でした。是非、多くの方に読んでいただきたいです。


日本の未来は文化・クリエイティブ産業にある

 この本によると、クリエイティブ産業の定義は「文化的な創造物の生産・販売・サービスを行う産業。コマーシャルカルチチャーを含み、経済的な利益を与える意味合いをもつ。また個人のクリエイティビティ(創造性・創造力)とも結び付きが強い」とあります。具体的には宣伝・広告業とマーケティング、建築、工芸品、デザイン業、メディア産業、IT産業、美術館博物館ギャラリー図書館、音楽、アート、出版業」などです。
 産業革命以降世界経済を牽引したイギリスが1960年〜70年代に「英国病」とまでいわれる長期の経済的な経済成長が長期的な停滞しました。そこから英国病からの脱出において、クリエイティブ産業は経済の多様化と成長に重要な役割を果たし、英国の経済を新たな方向に導いた要因の一つと言えます。日本にとって、大きなヒントになるというのが、この本が企画された理由のひとつなのでしょう。

『文化・クリエイティブ産業の育ち方』〜ロンドン式〜

未来のカルチャーを示せなかった東京五輪

 2012年のロンドン五輪を活用して世界に、イギリスの文化・クリエイティブ産業の存在感を示しました。同様の効果は東京五輪に期待されていたはずです。2016年3月から2019年12月にかけて出版され、表紙に「BEYOND 2020」とあります。東京オリンピックという世界的イベントを文化・クリエイティブ産業を世界に広めるために、どう活かしていくかが意識されていることがわかります。
 そして、残念ながら、みなさん御存知の通り、東京五輪では日本のカルチャーを十分に示すことはできませんでした。Covid-19の流行という、不可避のトラブルは仕方のないことですが、それだけが理由ではありません。開会式の演出家が直前に辞任したり、エンブレムの盗作疑惑があったりと、従来のクリエティブ産業の「村の常識」が通用しないことが明らかになり、日本の恥部として世界に知らしめることになってしまいました。
 多くの利害関係を「電通(的な存在)」が水面下で調整するという、ブラックボックス的なやり方が批判を浴び、崩壊していく姿も見ることになりました。スポンサー企業の経営者が検察に逮捕されるという信じられない事態に発展したことは記憶に新しいです。国内的には不祥事のオンパレードとなり、グローバルに日本をアピールどころでは無くなっていましたね。

「昭和の清算」に35年かかった日本の芸能界

 醜聞といえば、今年はジャニーズ事務所にまつわる騒動があります。個人的には、創業者が(おそらく)変態的な性癖があり、未成年への犯罪的行為を繰り返していたことと、法人としての社会的な責任は、区別して語られるべきだと思っています。特に故人となっていて訴訟などができないからこそ、法人が取るべき法的、倫理的な責任はロジカルに整理する必要があるはずです。姪っ子で当時から取締役でもあったからと社長に責任があると糾弾するなら、その責任範疇は明確にすべきだなですね。同時に、テレビ局への影響力を源泉に、グラックボックス化した利権を最大化するという「ジャニーズ事務所的なやり方」が害が大きすぎたのは事実です。これが変わる契機にできたら日本の芸能界にとっては大きなプラスでしょう。
 これら一連の動きで僕が感じるのは「昭和の芸能界がやっと終わる」ということです。村的な構造になっているギョーカイは既得権者が情報をブラックボックス化することで利権となっていました。一般の人が思うほど、悪いことばかりが行われてきたわけではなくて、日本らしいバランス感覚で行われた「村」の良い面もあったと思います。陰謀論的に語られる「大ボスみたいな人がすべてを牛耳っている」ということではなく、戦後日本の芸能界を築き上げた人達による秩序には良い面もあったと率直に思います。
 けれども、もうだいぶ前から完全に時代遅れになっています。地上波テレビ局の圧倒的な伝達力、「マス」の力が中心でしたから、デジタル化したことで、優位性が失われています。電通とジャニーズ事務所に象徴される日本の昭和の方法論が、令和5年にやっと終わるのでしょう。
 これまでは映画、音楽、出版、アニメ等々、商材ごとにそれぞれタコツボ化した「ギョーカイ」をつくっていましたが、その壁は溶け始めています。作品を創るための資金供給やノウハウなどを特権的に独占することはできなくなり、必要もなくなりました。エンタメビジネスはわかりやすく「デジタルの進化に伴う民主化」が起きています。メデイアもマスメディアからSNSに主従逆転しました。ルールの前提が変わっているのです。デジタル技術によってスキルのコモデティティ化(誰でも手軽にすぐ作れる)が進み、コンテンツごとの制作ノウハウもフラット化し始めています。
 一言で言えば、エンタメビジネスは「デジタルファースト」になったということです。DX(デジタル・トランスフォーメーション)さえできれば、日本のクリエイティブ力自体は世界有数のポテンシャルを持っています。

さあ文化・クリエティブ産業の時代

 そんなエンタメ業界側がフラット化、民主化していると同時に、注目すべきは産業界全体の変化です。日本の高度成長を支えた製造業は産業界の中心を担えなくなりました。
 これは日本経済の衰退を語る時によく見かける表ですね。

 1989年には時価総額ランキング30位以内に21社あったのが、2022年は0です。31位のトヨタも業績自体は今のところ好調ですが、EV化、自動運転、スマートシティといった変化に対応できるかどうか剣ヶ峰にいます。経営陣のお家騒動が酷すぎる日産はともかく、トヨタとホンダは自動車製造業からモビリティ事業という業態変化を乗り切って、グローバルで頑張っていただきたいなと願ってます。
 そんな日本の経済界において、必要だと言われているのはイノベーションです。スタートアップが重要視される理由でもありますね。
 ここでイギリスの例に戻りましょう。英国病とまで言われた長期経済不振から復活した姿を見てます。

英国病脱出の理由は、文化クリティブ産業によるイノベーション

 僕の専門領域からやや離れてくるので、この本を参考にしながらChatGPTに訊いてみることにしました。まずは英国病脱出の理由です。3つのポイントが出てきました。

政策変更: 英国政府は1980年代に新自由主義的な経済政策を導入し、国有化企業の民営化、規制の緩和、税制改革などを行いました。これにより、市場競争が促進され、経済の効率性が向上しました。
投資とイノベーション: 英国は研究開発への投資を増やし、新しい技術や産業の発展を促進しました。特に、情報技術、バイオテクノロジー、ファッション、デザインなどの分野でのイノベーションが加速しました。
グローバル市場への参入: 英国企業は国際市場への参入を積極的に推進し、輸出を増加させました。特に金融サービス、エンターテインメント、広告、デザインなどの分野で国際的に成功しました。

ChatGPT3.5の返答

 よくまとまっているなと思いました。定説が定まっている案件をまとめてくれるのは生成AIは上手ですね。
 続いて、クリエイティブ産業の貢献についても訊いてみましょう。

新たな経済の牽引役: クリエイティブ産業は、英国経済において重要な役割を果たしています。映画、音楽、テレビ、広告、デザイン、ゲーム、ファッションなどの分野が、経済成長と雇用創出に貢献しています。
輸出と国際競争力: 英国のクリエイティブ産業は、国際市場で高い評価を受けており、多くの製品やサービスが世界中で販売されています。これにより、英国は輸出を増加させ、国際競争力を維持しています。
イノベーションと文化的影響: クリエイティブ産業は、新しいアイデアやアートの形式を生み出すことに貢献し、文化的な影響力を持っています。英国の音楽、映画、ファッション、デザインは国際的に有名で、世界中の文化に影響を与えています。
雇用機会の提供: クリエイティブ産業は多くの人に雇用機会を提供し、特に若い人々にとって重要な職業選択の一つとなっています。
まとめ:英国病からの脱出において、クリエイティブ産業は経済の多様化と成長に重要な役割を果たし、英国の経済を新たな方向に導いた要因の一つと言えます。

ChatGPT3.5の返答

 わかりやすく勇気がもらえるまとめだと思います。本書でも、日本はイギリスの20年前だという識者の証言が載っていますが、日本に対してもそのまま有効なロジックに思えます。

東京の未来を考える 6つのアイデア

本書では、「東京のこれから」として、貴重な提言がされてます。

ロンドンオリンピックでは、開会式から閉会式、 レガシーに至るまでイギリス文化を織り込み、 自国のクリエイティブパワーをより一層強化し、 イギリスが「国際的にクリエイティブな国」と認められることに成功した。 東京も2020年以後を見越し、自身がまだ気づいていない「高いクリエイティビティ」や「独自性」を更に強化し、世界へ 発信していくことが重要である。

「ロンドン式 文化クリエティブ産業の育て方」P37


全くもって同感です。そして、2020年21年にはできませんでした、、。
これからやらなければならない6つの提言をみていきましょう。

1:「歴史伝統」と「現代未来」両輪の文化を意識する
→日本でも意識はされていると思うのですが、伝統芸術を守ることと、ポップアート、サブカルチャーを支援することが全く別のこととして分断されてしまっていますね。文化庁の長官が、ピンクレディ「ペッパー警部」等の流行作曲家、都倉俊一さんなったことで、少し変化の兆しを感じています。京都移転して伝統芸能を守りつつ、ポップミュージックの振興にも取り組んでもらいたいですね。

2:若い才能をいかに生み出し、育てるか
→一番と言ってよいほど大切ですね。本書でも、「文化人種の多様性」と「世界的なネットワーク」がポイントとあります。既存の芸術系大学や専門学校では心もとない(というか多分無理)なので、デジタルとグローバルの時代の人材を育てる。プロジェクトを立ち上げようと準備しているところです。

3:一般の人が参加しやすい「文化産業」にする
→アニメ、コミック、音楽、ゲームと言ったポップカルチャーを軸にすることがポイントだと僕は思っています。


4:アートのインフラ (環境)を整える
→美術館は充実しているので、日本にも存在している富裕層をもっとカミングアウトしやすくする雰囲気作りや寄付税制などが大切でしょうね。寄付ベースのアメリカと、公的資金のフランスとう欧州の良いとこどり作戦したいです。


5:「日本の強み」の ブランディングを行う
→外国人の「有識者インタビューでも日本や東京の評価は非常に高い、驚くべきクリエイティブ能力があり、独自性を備えていると思われている」と書いてあります。外国人目線での日本再評価は、グローバル市場での文化商材のマネタイズにつながりますね。
 また、本書を離れますが、韓国との比較でいうと、「選択と集中」に対して、日本の強みは多様性で、多様なものをキュレーションするのは複雑で難しいので、「日本ブランディングの向上」という観点は非常に重要ですね。
 
6:文化・クリエイティブ産業の 統計を整備する
→「デジタルコンテンツ白書」の編集委員を10年務めたものとして、経産省に提案したいと思います。

 この6つのポイントに、イギリスが経済復活のテコにし、日本ではまだできてない課題がまとまっていますね。官民連携も必要な分野です。

『ニューヨーク版 文化・クリエイティブ産業の育て方』P34

そしてもちろんスタートアップ

 デジタル化によって、構造が変わった文化クリエイティブ産業を活性化することは既存の会社、組織だけではできません。スタートアップが次々と挑戦してくれることがマストで必要、かつ肝になります。
 文化クリエティブ産業を活性化というのはエンターテック領域を盛り上げるというのはほぼ同義だと思います。そのためにスタートアップを、新事業を産み出していくというのは、StudioENTREの設立時からの命題です。環境つくり、基盤となる事業の立ち上げ、スタートアップにとどまらない既存会社との連携など、みなさんと相談していきたいと思っています。
 特に「個へのパワーシフト」を前提としてコラボレーション、そのコラボの中にAIを導入されていくというWeb3.0の時代は、ビジネスユニットが個人で成立するようになっている音楽が実験場として適切です。僕の本籍地になるので、「文化クリエイティブ産業の次世代(Web3.0時代)での振興のために、音楽フィールドでの環境整備は先行事例にできるでしょう。生態系のupdateに繋がるサービスを生み出していきたいです。是非一緒にやりましょう!

 という、本稿はこれからもっと考えていきます。行動しましょうという投げかけでした!ビジネス思考での勉強会/研究会みたいなことも始めたいと思っているので、興味のある方はご連絡ください。
 他にもご批判や質問や激励や、連携のお誘いなどなんでも待っています!
企業へのコンサルティングもお受けします。既存の金融機関、コンサルティング会社が知見がなく弱いのが、エンターテインメント領域です。音楽系会社の株価が低い一因でもあるので、解消していきたいです。

 そういえば、フォーブスの特集「カルチャープレナー」も親和性の高い話だなと思いました。ここで紹介されているような人たちがもっと活躍する環境つくり、収益化しやすいサービス作りなどが、大切だなと思いました。改めて日本には潜在力はあると感じる特集でした。興味ある方はこちらも読んでみてください

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モチベーションあがります(^_-)