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MIX師協会で語った著作権の捉え方と、コーライターとしての可能性。

MIX師という存在

 ニコニコ動画で築かれたUGMカルチャー、ユーザーが作り出すコンテンツがデジタル上で広がっていく動きは、今でも拡がり続けているようです。  ニコ動は、「ボカロP」による楽曲と「絵師」とのコラボレーションで広まっていきましたが、既存曲を自分で歌う「歌ってみた」をネット上で行う人は「歌い手」と呼ばれ「踊ってみた」を演る人は「踊り手」と呼ばれるようになっています。
 そんな流れで「MIX師」という言葉あるのは知っていました。DAWが得意でないことも多い歌い手が自分の曲をアップするときのクオリティを上げるためにmixしてあげる人たちです。無償の場合もあるようですが、5000円〜2万円という金額相場を聞いて、まさにクリエイターエコノミーの世界、なるほどなと思いました。
 協会ができたのは驚きました。一般社団法人「日本歌ってみたMIX師協会」は、mix師の活動がスムーズになるように啓蒙活動をする団体のようです。設立した小泉さんとは、nanaでお仕事をご一緒したことがあり、著作権についてセミナーをやってほしいとの依頼があったので、喜んでお受けしました。
 新しいムーブメントに関わっている人たちには、ポジティブなバイブレーションがありますね。「何かが起きそうな感じ」新しいシーンの出現を感じました。その時のセミナーに内容をここでシェアしようと思います。

n次創作時代の音楽著作権アジェンダ

 依頼を受けてから、少しでも役に立てるようにと内容について考えました。まず、最初に「何故、著作権を守るのか」について考えてもらいたいなと思いました。もちろん守らないと罰せられる法律があるからなのですが、それ以上に大切なのは、音楽家と作品をリスペクトする感覚なんだと自分でも改めて確認しました。

 同時に伝えたのは、既存の著作権の仕組みの限界です。COPYRIGHTという言葉が象徴するように、マスターからの複製物というのが、著作権ルールの基本です。クラウド上でコンテンツを管理して、アクセスする権利を商品化する時代には、間尺に合わなくなってしまっています。これを解消するのがブロックチェーン技術なのですが、すべての音楽作品を取り扱う=社会実装には、まだ時間がかかります。今のところは、既存のルールを無理くり、木で竹を接ぐように運用していくしか無いのが実情です。
 n次創作のルールも同様です。許諾ルールを一元化して、n次創作を活性化されうことを望む音楽家も少なくないと思いますが、適切な仕組みはまだありません。

歌ってみた動画の権利者は誰?

 n次創作カルチャーは、アマチュア/セミプロのクリエイターたちが、性善説的に回している仕組みです。トンマナはみんな知っていることでしょうが、あえて、「権利」という観点で整理してみました。

 歌ったみた動画を収益化する方法についても触れてみました。

 mix師は、著作権の使用者と権利者の両方の側面があるということを認識してもらえると良いのかなと思いました。

 せっかくなので、音楽ビジネスのマクロ的な現状を、先月出版した拙著『最新音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』をベースにお話しました。noteでは何度も書いていることなので、ここでは繰り返しません。

mix師はコーライティングすべし!?

 セミナーの内容を考えているうちに、思いついてしまったことがあります。mix師が持っているだろうスキルを活かす方法、「mix師のキャリアップ」を考えていたら、コーライティングを活用して作曲に挑戦することではないかということです。
 せっかくの機会なので、その趣旨をまとめてブツケてみました。

 まずは、複業音楽家、複業作曲家が可能な時代になっているという認識です。大企業も兼業OKになっていますし、個人で請け負える仕事も増えています。そんな中で、音楽にまつわる仕事は、それだけで食っていこうとするとハードだけれど、自己実現のためにライフワークとしてやるには、向いているという最近、僕が良くする話です。ライフワークとしてやっているうちに、ライスワークの収入を超えて一本化できたら、ハッピーな生活になりますね。

 さて、そこでmix師の持っているスキルの分解です。「こんな事ができる人たちが集まっているんですよね?」という問いかけには、「YES」とのことでした。

 だとしたらコーライティングに参加すると重宝されるよという話に進む前に、プロ作曲家になる入口を説明しました。
 コンペという形で数多くの曲を集めて、アーティストサイドが選ぶという仕組みが浸透しています。

 コーライティングについても、書籍と併せて紹介しました。mix師の持っているスキルは、3〜4人でコーライティングする場合は、とても重宝される領域のものです。
 楽曲にあった適切な仮歌シンガーをチョイスできて、ボーカルディレクションと、エディット、ミックスができれば、それだけでもデモクオリティは高まって、採用確率が上がります。コーライティングの本質は分業ではなく、化学反応を目指す共同創造ですから、作詞も作曲も編曲も積極的に関わっていくべきという説明をしました。

 mix師の経験とスキルを持って、コーライティングに参加するのは、新しい展開として期待したいです。
 コーライティングがどんなものなのか、体験してみたい人は、コーライティングの日本の「本家」であるCo-Writing Farmが定期的に行っているワークショップへの参加がオススメです。peatixをフォローしておけばお知らせがいきます。

 そんなことならプロの作曲家活動もやりたいと勇み立った人は、育成プログラムである「山口ゼミ」を是非、受けて下さい。レコード大賞2021受賞者など、現役バリバリの作曲家たちと一緒に楽曲を作れるチャンスが有り、コンペにデモを提出してキャリアをスタートすることができます。
 コーライティングの活用方法と、一緒に創れる作曲家ネットワーク(CWFは150人の会員がいます)が手に入るのが、他のDTMスクールや作家事務所には無い、魅力になっています!

 クリエイターエコノミーの時代と言われる昨今、様々なクリエイターたちが一緒に創造するn次創作とプロ作曲家のコーライティングが、グラデーション的に繋がっていくのは、時代感もあって、面白いなと思っています!come on!!!

 また、MIX師協会は歌ってみたMIXに興味がある人であれば審査の上無料で加入できるとのことなので、興味がある人は以下のリンクを見てみると良さそうです。


モチベーションあがります(^_-)