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道具は同じでも少しずつ違う韓国。現地でわかった、それぞれのお箸文化

こんにちは。「竹の、箸だけ。」に、こだわり続けてきた、熊本のお箸メーカー「ヤマチク」です。純国産の天然竹を人の手で一本一本刈り取り、削り、「竹の箸」を作り続けてきました。

ヤマチクのお箸は、アメリカやフランス、オランダ、そして韓国など、日本国内だけでなく世界の人にも使っていただいています。

韓国への輸出が始まったのは、コロナ禍のまっただなかの2020年10月。以来、月に約5000膳のお箸をお送りしているにも関わらず、なかなか現地へ行くことができない状況が続きました。

「ヤマチクの箸は韓国の方たちにどのように評価いただいているのか、取扱いのお店では、どのように展示されているのか、早く現地へ行って話を聞きたい」とやきもきしていましたが、そのうちにコロナ禍も落ち着き、やっとチャンスが到来!

今回は、2023年4月5日から6日にかけての1泊2日間に韓国ソウル市へ行ったヤマチク・専務の山崎彰悟が感じた、韓国のお箸文化についてや、日本の文化について、聞きました。

日本と違う韓国のお箸文化

ソウルでは、韓国への輸出を取り持ってくださっているヤヌクさんとともに、3つのお取扱店を回ってきました。

「韓国でお取扱いいただいているのは、オーナーの気に入ったものを扱う雑貨屋さん、『ヒュンダイ』様など大手の百貨店、そのほか企業の私設美術館、『Kurly』様などネットショッピングモールです。百貨店訪問は日程が合わなくて断念せざるを得ませんでしたが、韓国の文化を深く知るよい機会になりました

2日間で山崎が実感したのは、お箸文化に大きな違いがあることだといいます。

韓国の一般的なお箸は、ステンレス製で少し長めのもの。最近は持ち手の部分に着彩されているものや柄が入っているものもありますが、絵柄はなくシンプルで、形も長さも統一されています。そのため絵柄と形と長さをそろえた「一組」という考え方をせず、また「これは誰々のお箸」と家族の中で使い分ける銘々箸(めいめいばし)という使い方もないそうです。

ほかの選択肢として竹製のお箸もありますが、扱いはステンレスのものと同じです。作り方が日本の竹箸と異なり、太い竹を割いて成形したようなものではなく、細い竹を決まった長さで切って先を細くしたものだそう。

「D&Department Seoul」での、箱売りされているお箸。箸立て(右)に入れられているお箸は、箱の中身。

「長さのバリエーションは、大人が使う長いものと子どもが使う短いものでほぼ2種類。素材も形もある程度決まっているので、見た目や重さや触り心地にこだわる機会がないようです。韓国ではネットショッピングでお箸を買う人が多いというのは、そんな背景があるからかもしれません。日本のお店では、一組ずつ梱包された多種多様なお箸が陳列されますが、独特なことだったのだと知りました」

多様な食器に合うカトラリーとしてのヤマチクのお箸

韓国に多く輸出しているヤマチクのお箸の大半が『スス竹丸箸』『スス竹角箸』『子どもがんこ箸』なのも、シンプルなお箸が歴史的に使われてきたからかもしれません。

ヤマチクお箸の輸出数は、当初の500〜1000膳からこの3年間で、4000〜5000膳。4〜5倍になりました。山崎は、どんな理由があると考えているのでしょうか。

「韓国にはいろいろな国から磁器や陶器がたくさん輸入されていて、日本の波佐見焼や美濃焼なども含む、おしゃれな食器が使われているんですね。竹の素材感を活かしたヤマチクのお箸は、磁器・陶器はもちろん、ステンレス・ガラス、洋食器・和食器にも合うので、食器の多様化に伴って受け入れていただいているのかなと思います」

お取り扱いいただいている店舗で、波佐見焼と。手前の黄色いお箸は『子どもがんこ箸』。隣のスプーンは鹿児島のメーカーさんのもの。
別のお取り扱い店では、ヤマチクコーナーを展開。

SNSも浸透している時代だからこそ、器とお箸などテーブルウェアの組み合わせて楽しむ人が増えているのかもしれません。

「今回伺ったお店の方に聞いたんですが、まず、ヤマチクのお箸が太さも色もバリエーションが豊富なことに、まず驚かれる方が多いみたいですよ。韓国では左右の手に1本ずつお箸を持ってチヂミを割くそうなんですが、こんな細いお箸でやったら折れちゃうんじゃないの? と心配されたりとかも。でも、動かしやすくて使い心地がよいし、折れもしないから、気に入ってくださる方が多いそうです。店員さんは、最初は太めのお箸を使っていたけれど、細めのお箸が好きになってきたと言っていました」

たくさん種類のあるチヂミ。韓国では、油の揚げる音が雨音に似ていることから、雨が降るとチヂミを食べる、という習慣があるそう。「天気と食べ物がリンクするのが、とてもおもしろいなと思った」(山崎)

表面は違っても、文化の根本はやっぱり似ている

化粧品会社『アモーレパシフィック』の本社内にある『アモーレパシフィック美術館』も訪れました。

アモーレパシフィックには、2022年の新年のギフトセットに、ヤマチクのお箸を取り上げていただきました。韓国の化粧品業界で人気のブランドに取り上げられたことで、ヤマチクにポシティブなイメージを多くの人に持っていただくきっかけになりました。

「ギフトセットに加えていただいたご縁もあったので、開催されていた韓国の伝統美術の展示を見てきました。韓国の伝統的な絵画技法も、近代にかけて西洋文化が入ってくる時期やルートも、とても日本と似ているなと思いました。細かい違いはありますが、干支や神仏、花鳥風月など共通するモチーフが多くて、根本的な美的感覚は近いんだろうと感じます」

アモーレパシフィック美術館で、水墨画の前に立つ山崎(左)と同行した吉田真菜(右)。

美的感覚が似ているということは、文化の奥底に共通するものがきっとあるのだと、山崎。

「共通するものがあるなら、どんなに時代が進んでもベースは変わりません。だからお箸の文化に違いがあっても、ヤマチクのお箸を受け入れてくれたのかもしれません」

実際、ネットショッピングで「ヤマチク(야마치쿠)」と検索すると、たくさんの件数がヒットします。レビューを見ると、「かわいい」「よくつかめる」「軽くてよい」と日常での使い心地を実感いただいたり、スプーンなどほかのカトラリーと色を合わせて楽しんでいただいている方が多いようです。

世界の人たちとも顔の見えるコミュニケーションを

「今回の視察を通して、やはり自分自身で訪れて直接見たほうが得られるものはあるのだと改めて思いました。コロナ禍もある程度落ち着いてきましたし、海外渡航が気軽にできると、世界各地でのより密な商談やポップアップショップ、お箸と料理のペアリングといった企画のハードルが下がりますね。韓国の人たちとも直接会って、接客したいです」

お箸を使う方の顔を見ながらコミュニケーションをとることは、ヤマチクらしさのひとつです。

こちらのお取扱店ではシンプルに陳列。手前の3膳が、ヤマチクのお箸。

「視察を通して、韓国独自の食文化とそれに根ざしたお箸文化を体感することができました。私たちはこれを十分に理解したうえで、お箸作りをしなければならないと強く思います。それはつまり、単に日本のいいお箸を輸出するだけではなく、その国に住む人たちの暮らしに寄り添うお箸を作ることです。国が変わっても、ヤマチクの目指すお箸作りは変わりません」

一度使っていただくと、違いがよくわかる竹のお箸。世界中の人にも、その良さを実感していただけると思います。笑顔とともにある食卓のために、これからも熊本県南関町から日本全国、世界へとお箸を届けます。


語り手/山崎彰悟 聞き手・書き手/松本麻美

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