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遺言に背いて

ここでは二つの例を取り上げる。

・ショパンの遺言に背いて「幻想即興曲」を出版したユリアン・フォンタナ
・カフカの遺言に背いてその作品を出版したマックス・ブロート

フォンタナとブロートというよき理解者は、ショパンとカフカの仕事を破棄するにしのびなかった。

非凡な芸術家の周りにいたそうした友人こそ、作品の価値を見抜く炯眼(けいがん)を持っていたと言わざるをえない。

芸術家は自身の作品を客観的に理解できているとは限らない。紹介者という、芸術史に欠くべからざる人々。この巧まざる役割分担。

一方、芸術家の初期の作品は未熟なものとして破棄されやすい。

これは、紹介者の眼にさらされることもなく、なきものとされた作品たち。

永遠に失われたものの中に価値あるものが含まれていたとしたら?

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