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③「2020、渦中」とは。

一曲目(「変化の兆し」)のレコーディングを終えた後、ムクムクと沸き上がった感情は「2020年を一つのアルバムに閉じ込めよう!」というものだった。

誰もが不自由を経験し、無力感を持て余した一年。未知なる恐怖と対峙しながら、それでも営みを続けなくてはならない心許なさ。
僕にとっても、変化の年だった。
そんな、2020年に書いた曲を中心に「架空の日記」みたく曲を並べようと考えたのだった。

一曲目がオープニングならば、次は本題だ。
それにしても分かりやすいタイトル「2020、渦中」。もともとはDTMの練習として2020年の元旦に書いたメロディー、そしてコード。
歌詞はもっとポジティブなもので、「これからいいことあるかもね!」なんて今考えると超能天気なものだった。
2月の終わりにコロナがやってきて、世界を陥れて、20年の暮れに歌詞を書き直した。

優秀(?)な僕は案の定、スマホのメモアプリに歌詞を留めておいたので、それを眺めながら一発録りで歌を仕込んだ。(ピアノは先に録音。この辺りから“弾き語り”の前提を覆した)

2020年の9月に退社し、10月の初めに姪っ子が生まれた。甥っ子が生まれた時、仕事であまりそばに居られないもどかしさがあったので、姪っ子とは生まれてから半年以上を一緒に過ごすことができた。

朝目覚めると生まれたばかりの赤ちゃんがいる生活は、世界中のどんな苦悩や複雑さとも無縁で、本当に健やかなものだった。無条件の愛を感じ、保育園から帰ってきた甥っ子と遊び、観たかった映画や読みたかった小説を摂取。時間をかけて珈琲なんて淹れつつ、家族とランチに出掛けたり、友達と曲作りをしたり、充実を絵に描いたような毎日。

しかし、テレビを点けると心は萎む。
憶測で変容する世論、閉塞感が押し寄せる映像、それでもせっせと働く人々。
「俺はいったい何をしてるんやろう」
時々、無力感につまづく。
けど、けれど。
まずは心を護らなければ。
自分と、周りにいてくれる愛する人々の。

本当に贅沢な時間だったと思う。時勢はどうあれ「大人の夏休み」を満喫できたことに感謝している。

・・・・・・

山田喜大 1st album 『I Rise』
1.変化の兆し
2020、渦中
3.25
4.斜陽
5.ハロー・ストレンジャー
6.15
7.寸劇

2023年11月9日〜
各種サブスクリプションサービスにて配信中


『変化の兆し』Music Video

https://youtu.be/AUOXiSS40w8?si=OtEcpKXTrQGOByZk

Director 杉澤亜美

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