この記事の内容は以下YouTube動画でも解説しています。

高IQの人がIQテストに正解するわけではない。

これは一見矛盾している。しかし、数学的な思考力を持つ人からすると至極当然の話だ。今回はこの事について書いていく

論理クイズに正解した、非論理的な人の話

4カード問題

世の中には自称高IQが多い。そして、その多くは、病院で検査したわけでもなければ、メンサのような高知能団体に入会したわけでもない（メンサが高知能の証明かというと、正直怪しいのだけれど）。

それは、「これに正解すると高IQ」のようなクイズがネット上で流行ったことも関係しているだろう。フジテレビ系列で放送されていた『IQサ○リ』みたいなものだ。

で、今回紹介するとある人(以下『彼』と書く)も、それを理由として高IQを自称している。

その彼が言うには、「正解率4%の『4カード問題』という論理クイズに正解した。よって私はIQが4%以内である可能性がある」とのことだ。

では、まずこの『4カード問題』とはどういうものだろうか。説明していく。

今目の前に、『A』『K』『4』『7』と書かれた4枚のカードがある。
前提条件として「アルファベットの裏には数字(整数)、数字の裏にはアルファベットが1文字書かれている」というのがある。

今、「母音(A,I,U,E,O)が書かれているカードの片面は偶数である」という仮説を立てる。

この仮説を検証するためには、どのカードを裏返す必要があるか？

という問題だ。

文章で説明すると想像つきにくいかも知れないので、以下の動画を参考にしてほしい

さて、「A」と「4」だと回答する人は多いのではないか。
上の仮説に書かれている「母音」と「偶数」という単語から容易に連想される。

しかし、正解はというと、「A」と「7」だ。
これは、高校の数学1Aの『論理と集合』という分野を理解していればわかる問題だ。(気になる人は『対偶』という言葉を検索しよう)

そして、9割以上の人は間違えたという。

では、この問題に正解した人は、論理的思考力が上位1割未満なのだろうか？

この命題について考えていこう。

「賢いから正解する」は「正解したから賢い」ではない

この論理クイズで問われているのは、先ほど申したように、命題の『対偶』を理解する能力だ。

もちろん、この対偶という言葉を知らなくても、論理的思考力がある人なら理解できる。

より日常的なシチュエーションで考えるとわかりやすい。

日本では、20歳未満の飲酒は違法だ。よって、国内のコンビニにおいて「未成年が買う飲み物はアルコール飲料ではない」は真だ。

この対偶は何かというと、「アルコール飲料を買うのは成年だ」となる。これもまた真だ。

一方で、「成年が買う飲み物はアルコールだ」は偽だ。僕は成人済みだけど、伊右衛門茶とか買う。
同じ理由で「アルコール飲料でない飲み物を買うのは未成年だ」という主張もまた偽だ。でないと、成人がいろはすを買うことが違法になりかねない。

同じように考える。

ある問題について、「賢い人だけが正解できる」時、「この問題に正解できる人は賢い」は論理的には正しくない。

特に、上のような選択肢のある問題（『A』『K』『4』『7』の4枚それぞれに対してめくるかめくらないかの2つの選択肢があるため、合計2*2*2*2=16通りの選択肢がある）では、テキトーに答えて正解する場合が一定数ある。

さらに言えば、事前に「9割が間違える」と知らされているので、「直感的に正しいと思う選択肢は間違っている」と裏を搔いた回答をすることも可能だ。そういうのを踏まえると、この問題に正解した人のうち、論理的に考えた結果正解した人の割合はあまり高くないと推測される。

よりによって、この「結果がすべてではない（思考過程が大事な）」問題に正解したという結果を理由として、自分は賢いと主張するのは、本当に賢いのかどうか疑ってしまう。

なぜ私はこの人にきつくあたるのか

賢くないことが理由ではない

言っておくが、私はこの人が賢くないから批判しているわけではない。
もしそうなら、それは例えば、『チルノのパーフェクトさんすう教室』にマジレスするようなものだ。

私がこの人を批判するのは、その人が陰謀論を信じ、またその主張の根拠付けに自分の高IQ()を使っているからだ。

詳しく書くと本人にばれるので書かないが、彼は「陰謀論を信じる人はIQが高くない」と主張した2日後には、「日本は○○人が牛耳っている」と主張するような人物だ。そして、その主張を批判する人に対しては「これを陰謀論って思う人はnot高IQですよ」などと言う。

あるいは、「私は高IQだから不倫した」など、自分の高IQ（だと本人が信じているもの）をダシにして、言いたい放題言っている。元MENSA会員の身として断言するが、IQはそんな便利なものではない。

万が一、彼の動画を見て「ああ、高IQの彼が言っているのなら間違いない」と思って危険な思想を信じてしまう人がいるかもしれない。その抑制に少しでも貢献できればと思い、自分の利己的な正義感から当noteを書いた次第だ。

自分の言いことは大きく2点。

・高IQの人のいうことが正しいわけではない
・そもそもIQクイズにたった1問正解したからと言って、その人が高IQとは限らない

ということだ。

ありきたりな結論になるが、話者の立場や肩書きに左右されず、自分でその是非を判断しようということを書いて擱筆させていただく。