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小銭じゃ足りない

上野に着いて「さぁ飲むぞ!」という時や「最後にあと一杯!」とまだ飲み足りないって時に行く『立飲み屋たきおか』は朝7時から営業している呑んべえの楽園だ。

「こちらどうぞ」と通されたカウンターに財布の中の小銭を並べる。
見ているだけでわくわくする壁にかけられたホワイトボードには一六〇円〜三〇〇円のつまみが並んでいる。

まずは酎ハイを注文。喉が潤ったところでつまみの里芋煮とガツ刺とイカぬたを注文。並べた小銭から支払い、この小銭が無くなったら店を出ようと一応ルールを決める。

味がしみた里芋煮を箸で割りぱくり、酒がすすむ。一杯目の酎ハイはすぐに飲み干してしまう。二杯目はのんびりといこう。カウンター越しのテレビをなんとなく見たり、外の通りを行き交う人を眺めたり。

僕より後に来て二〜三杯飲んでサクッと帰る客。後腐れない飲みっぷりに憧れすら感じる。僕といったら決めたルールはとうに破りカウンターに並べた小銭に札を追加するのであった。

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