小説未満 気になるのは後ろむきの二人
朝の夢
カルチャー教室へ行こうとしていた、ような気がする。
誰もいないので、『誰もいないなぁ』と思っていた。
部屋に入ると、二階建てのような講義室のようで、二階部分は学生と思われる若い男女が席をうめ、空いている席はなさそうだ。
ここへ座るつもりはない。場違いだ。
下を見るとそこは作業場のようでそれぞれ形が違う机が無作為に置かれている。一見すると五台か六台の机がそこにある。だが数えるたびに数が違ってくる。
気持ちが焦る。どうしよう、どうしようと不安になる。
机に付随する椅子は半分ほど空いているようだ。
一階へ降りる階段は城の城壁のような石組みで、踏み面が狭く蹴上げが高くて傾斜が急で手すりがない。
恐くて降りられない。でも早く降りないと講座を受けられない。
わたしは落ちた。
塗装があちこち剥げたアップライトピアノ、昔々の足踏みミシン、錆びた鋳物の一口ガスコンロ、ボロボロの本や破れた資料が乱雑に載ってガタガタしている机の脚は長さがそろっていない、傷だらけコントラバスが三台もたれかかっている壊れかけた机、錆が浮いたテーブルソー……。
誰もいない。
どのテーブルも、どの椅子も誰かの荷物が置いてあって、わたしの席はない。
『困ったな』と思っていると、「ここへ座りなさい」と紺色のスーツを着た男性が指差した。
窓は広く明るくただただ白く風景はない。
女性二人がこちらに背を向けて窓際に座っている。
わたしを嫌っている(とわたしが思っている)二人で、やっぱりわたしを嫌いなんだと思っていた。
設定起床サウンドの「フクロウ」が鳴って眼が覚めた。
二人の女性の顔を思い出せないし、二人が誰なのかわからない。
青いスーツの男性は中学の時の音楽の先生だった。担任だったこともあったが、ほぼ接点がなくて、ちゃんとした会話をしたことがあったのかどうかもわからない。
目覚めの夢としてはリアルで、夢らしく辻褄はあわず、気持ちがざわついた。 了
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?