高齢者の住まい

高齢者の住宅内での不慮の事故死は、交通事故死よりも多いと言われています。
おふろでおぼれる、階段から落ちる、小さな段差につまずいて転ぶ、住宅内での事故は、直接・間接的に死に至ることが多くあります。

また、老人保健施設が病院を退院し、老人保健施設でリハビリを行い、自宅に帰るという本来の目的として機能できず、特別養護老人ホームの待機者の受け皿となっています。
これは、安心して帰れる家がないからだとも言われています。

こういった問題も、安全で自立度に応じて、いつまでも住み続けられるような住まいがあれば、問題は解決するはずです。
バリアフリー住宅なら、住宅内の事故は大きく減少するでしょう。
安心して住み続けられる住宅があれば、老人保健施設が中間施設としての本来の機能を取り戻し、特別養護老人ホームの待機のための入所者は減少します。
さらに、高齢者が身体能力を維持するためにも、身の回りのことを自分自身で行うことが可能な住宅環境が必要です。
使い勝手が悪いと、いろいろなことが億劫になり、徐々にその能力も奪われていきます。
いつまでも身体能力を維持しながら、生き生きと暮らし続けることは、本人にとって幸せなことばかりではなく、医療・介護など自治体の負担を減らすことにもつながります。

しかし、ことは、そう簡単ではありません。
バリアフリー住宅に必要なものとして、手すりの設置、床の段差解消、車椅子の通行が可能な廊下幅、扉幅があります。
手すりはすぐにでも付けられますが、湿度が高く、雨の多い日本では床を高くつくるため、段差を解消することや、また、尺貫法でできた住宅は車いすが通るだけの廊下のスペースを確保するのが難しいのです。
建具も規格外のものを使うこととなり、建設費用にはね返ってきます。
湿度が高い気候と尺貫法がバリアフリー住宅の普及の大きな障壁となっています。

施設に入るに当たり、荷物とともに、たくさんの思い出を整理しなければならない、そういうお年寄りを私は見てきました。
バリアフリー住宅を普及するには、技術的、経済的革新が必要になりますが、住みなれた家にいつまでも住み続けたい、多くの方がそのように願うのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?