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地域のアイディアで紡ぐ道の駅リニューアルプロジェクトが面白い理由【山形県村山市】

先日書いたグランピングの記事がとても好評で、公開2週間で10,000PVを超える反響をいただきありがとうございました。

今回は、まさにその記事の延長線上にもなるお話で、山形県村山市にある道の駅むらやまのリニューアルプロジェクトに参加している私個人の視点で様々な気付きを得る機会をたくさんいただいているのでシェアしたいと思います。
この記事が地域での街づくりの何かヒントになれば幸いです。

国土交通省が描く道の駅のビジョン

道の駅の認知度は地方に行くほど高く、私もよく利用します。
旅行に行けば必ずと言っていいほどお世話になる場所であり、もはや「道の駅めぐり」などという言葉も生まれる程、目的地化されていて旅行者にとっては重要なポジショニングを獲得している感じがします。
私たち観光業従事者以外にも、地域の住民の活動拠点やインフラとしての存在意義もかなり定着している、そんな存在が今の道の駅です。

道の駅を管理する国土交通省の道の駅施設に対するビジョンをざっくり説明すると次の通りです。

・第1ステージ(1993年~)……
通過する道路、利用者へのサービス(休憩場所)提供
第2ステージ(2013年~)……
地域の創意工夫(地域自身の努力)による、「道の駅」の目的地(観光地、地域拠点)化
第3ステージ(2020年~)……
地方創生・観光を加速する拠点へ。「道の駅」を核に地方創生、「道の駅」の持続可能な安定運営

足かけ20年で当初はインフラとして提供されていた道の駅も、2013年以降は第2ステージとして目的地化され観光や地域拠点の場としての開発が続き、とうとう2020年には地方創生の核となる施設という著しい進化を遂げる第3ステージに突入しました。

そして第3ステージでは「持続可能な安定運営」というキーワードまで出現し、これは今でいうSDGsのような環境配慮の意味とビジネス面での自立自走のような意味も込められているのではないかと私は感じました。

「2025年」に目指す3つの姿
1.「道の駅」を世界ブランドへ
  主に海外プロモーションの強化
2.新「防災道の駅」が全国の安心拠点に
  主に地域の災害時拠点としての役割
3.あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに
  
子育て応援施設の併設など

国土交通省 公式HPより

普段当たり前に触れている道の駅が、既にここまで計画的に描かれて作り込まれ、実行されていたことを私はこのプロジェクトに参加するまで全く知りませんでした。

このような背景を知ることができると、自分たちはどう動けばよいのかがより具体的に見えてきます。
改めて地域や組織のビジョンを明確に持つことの重要性を再認識しました。

山形県内の道の駅の意外な現状

山形県にも多くの道の駅が存在します。
意外と混同しやすいのが、道の駅と物産館の存在です。
似てるように見えますが、分類上は異なるようです。

皆さんは山形県内の道の駅で一番の利用者が多い道の駅はどこだと思いますか?

私はやはり2018年にリニューアルして比較的新しい「道の駅米沢」を思い浮かべましたが結果は少し違いました。

令和2年度 山形県観光者数調査(山形県観光文化スポーツ部)出典

この資料は「1年間に道の駅とその他の観光地(主に観光物産館等の施設)に訪れた観光客の数」を集計したものです。
山形県庁のHPを見れば誰でも確認することができるオープンな資料です。
毎年10月に更新されるみたいなので、まもなく令和3年度分が公開されると思います。
(どのようにして数えているのかは不明ですが…)

どうやら山形県で人気の道の駅TOP3は、
1.道の駅ふらっと(遊佐町)151万人
2.道の駅米沢(米沢市)137万人
3.チェリーランドさがえ(寒河江市)59万人

利用者数が山形県で一番多い遊佐町の道の駅

私はTOP3の道の駅は偶然全て訪れたことがありますが、どの施設もしっかりと観光客を楽しませてくれるコンテンツが詰まった施設だと思います。

なぜ山形県内で一番利用者の多い道の駅が山形県内でもはずれの方のほぼ秋田県境に位置する道の駅ふらっと(遊佐町)なのか?という考察をすると長くなってしまうのでここでは割愛します。
(ただ、地域ブランディングや地方創生などの側面から山形県の観光コンテンツの一つとしてポテンシャル的な部分で次に盛り上がりそうなエリアは遊佐町かなぁと個人的には立地や観光資源のバランスなど実際に観光してみて肌感で強く感じています)

利用者数の昨年度比較も気になる部分ですが、このご時世の数値を見てもあまり参考にはならなそうです。
それよりも利用者数の県内・県外比率はポイントだなと私は感じました。

1位のふらっとと2位の米沢は県内利用者の倍以上に県外利用者が訪れている施設であり、3位のチェリーランドは逆に県内比率が高い。
数年遡ってみましたが、概ねどの年もこの傾向がありました。

すなわち、道の駅自体が県外ユースを想定した作りなのか県内ユースを想定した作りなのかというカラーリングがされているということになります。
結果的にそうなっているだけの施設もあると思います。
(ちなみに道の駅むらやまはやや県外ユースが多い)

道の駅をリニューアルする上で、「誰に来てもらいたいのか?」を明確にすることはとても大切だと思います。
現状で既に県内者利用が多いなら何か県民が利用する理由があるはずですし、県外者利用が多い場合も反対に同じことです。
もちろん、半々の割合を狙っていくという方向性も十分に考えられます。

この方向性によっては設置する設備や建造物、提供するコンテンツが変わっていくので、道の駅リニューアルでは重要な選択だと感じました。

そこで道の駅リニューアルプロジェクトでは、地域の魅力や強みを先に洗い出して村山市の道の駅がそこに存在する理由や利用者の顔を想像しながら向かう方向性を様々な角度から議論しています。

フラットに発言できる場作り

2022年度末を目標に、村山市長へ提案プレゼンテーションを行うことを目的として招集されたメンバー十数名。
農家さんもいれば、設計事務所、建築、デザイン会社、そして私はグランピング(観光宿泊)と多種多様な村山市の地域に根差した事業を展開されているメンバー構成になっています。

それぞれの業界のエキスパートの皆さんが、それぞれの見地からアイディアを出し合います。

当然、村山育ち村山在住の方もいれば私のように山形市に住む他県出身者もいる訳で、そうすると一言で「村山市の魅力は何か?」という疑問に対しても「蕎麦」「日本酒」「バラ」などの具体的なモノを挙げる人もいれば「雪」「夕日」「田園風景」など抽象物を挙げる人もいたりと、いくつかの解像度と多種多様な切り口でブレインストーミングされるのでとてもユニークなアイディアが掘り出てきます。

そして何よりメンバー皆さんが県内県外者問わずとてもフレンドリーに接して雰囲気を作ってくれるので「これを言っちゃマズいかな?」のような変なフィルターがかからないので本当に忖度の無い議論がされています。

また、議論の中にはグランピング施設に持って帰って商品化できそうなアイディアも出たりするので、道の駅を作るための作業が実業に繋がったり、グランピングでやろうと思ってたアイディアが道の駅で流用できそうなものであったりと面白い現象が起きています。

何よりも全員フラットな立ち位置で物事を議論すると多角的な面白いアイディアや仕組みがたくさんアウトプットできて会議がとても面白くなります。

古窯グループでも会議のルールとして「他人の意見を否定しないこと」や「決定事項は自分の意見とする」など7つの会議専用のルールを設けていて誰でも自分の意見を言っていいとしているので、こういう場作りは良いアイディアや解決策を見出す場としてとても重要な事なのだ再認識しました。

特徴を魅力に変換する

どうしても集客を考えると「他にないオリジナルなモノを新たに作ろう!」だけになりがちです。
確かにそれも大事なのですが、道の駅に関してだけ言えば私はどちらかというと今あるモノに意味付けやストーリー付けで差別化を目指した方が何かロングランできるんじゃないかなと感じる派です。
そこには無理がないからです。

私が村山の魅力と聞いて真っ先に思い浮かんだのは「雪」と「最上川」という雄大な自然のスケール感でした。
でもこの要素は正直、県内ならどこにでも同じ要素があります。
自然だけに関して言えば村山だけにあるという要素はほぼ無いでしょう。

でも、そこで少し俯瞰してみると雄大な自然のスケール感と村山にしかない立地・風景を利用した集客。
例えば、村山には周囲に建物が無い広大なロケーションがあります。
冬には周囲に何もないからこそ雪原に飛び込む体験が出来たり、水平線のように広がる田園風景の夕暮れ時、沈む夕日に稲穂が首を垂れる情緒的な風景が見れたりと、お手本のような田舎体験ができるのも村山の魅力になると感じています。

山形県に住んでると当たり前の光景ですが、集客の商圏の中心になるであろう仙台市では雪も稲穂も珍しいものです。

我々の運営している村山のグランピング施設「yamagata glam」でも冬の期間に営業を行っています。当初は夏のみの営業を想定していましたが、検討を重ねて雪も観光資源に転換できると考えました。

すると結果的にお客様は雪をしっかり楽しんでくれています。
雪合戦をしたり、かまくらを作ったり、天然の冷蔵庫でお酒を冷やしたり。
(春になると冷やしたまま忘れてしまったであろうドリンクやスイーツなどが地面に出現します。笑)
この時期は卒業旅行シーズンというのもあり、仙台圏の学生のお客様が多いです。

この状況をみて現在、現地メンバーは「来年はもっと雪を使って楽しんでもらおう!」とお客様向けのコンテンツを企画会議などで考えている最中です。

このように一見マイナス要素に感じるものでも、発想の転換でプラスに持って行くことはできると考えています。

要素の掛け算で独自性を!

自然以外にも村山市は農家をはじめおいしい食べ物が多いし、居合やお祭りなどの文化的な魅力もあります。
魅力が多いということはとても良いことである反面、多過ぎて選べない問題も発生しますが、そこは利用客の滞在時間を延ばしてあげることで解決できそうです。

滞在時間が延びればその分だけ集客の商圏範囲も伸びます。

滞在時間を延ばすには宿泊もできるようにしてあげるとか。
ただ泊まるだけだと面白くないので、例えば大自然を活かした星空が見えるアウトドアや雪中アウトドアを楽しみながら泊まるとか芋煮会もできたらいいよねとか、野菜や作物の収穫体験ができたらいいよねとか。

なにもすべての要素を道の駅に集約させずとも、魅力ある各地域を結ぶ拠点に道の駅がなれればいいよねなどと議論が広がると、村山には日本一のキャンピングカーの生産工場があるのでキャンピングカーの発着場所を道の駅にして各地域を回遊して楽しんでもらうとか。

〇〇×〇〇×〇〇のように魅力の要素を掛け合わせていくとその地域ならではのオリジナリティができます。
その他にもアイディアベースで「ドローンで食事をデリバリーできる特区を作る」とか「e-sportsと特産品を掛け合わせたゲームが体験できる」とかメタバースの世界まで話が発展したりします。

どれが採用されて実現化されるのか、はたまた全部ボツなのか。
それはまだわかりません。

しかし、できるできないに関わらずアイディアを出し合って現実ベースに落とし込んでいくことは大切だなと思いました。

ただ、今の新しい技術と今ある村山の魅力を掛け合わせることで何か面白いものができあがるような感触があります。

そして大人が真剣にこんな話題で盛り上がってる絵が既に面白い。笑

これから更に具体的に詰めていくわけですが、必ず面白い道の駅になって成功させたいなと思いますので応援よろしくお願いします!

2022年4月オープンの道の駅ふくしまも充実したハードとコンテンツで魅力がたくさん詰まった施設なのでオススメです。

all photos & movie 木幡純一
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