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映画「灰とダイヤモンド」を見て 新しい社会の始まりをみた

 アンジェイ・ヴァイダ監督の映画「灰とダイヤモンド」を見ました。アンジェイ・ヴァイダ監督はポーランドの映画監督です。灰とダイヤモンドは1958年の作品です。灰とダイヤモンドは第二次大戦末期の1945年5月8日のポーランドが舞台になっています。映画は、一日の中の出来事を描いています。

 主人公は党県委員会書記の暗殺をします。すでにドイツからは開放されたものの共産党の力が増していた時代背景があります。画面には映りませんがワルシャワ蜂起のことが何度も語られています。 

 最後の方でお祝いの花火が上がるのですが印象的な場面になっています。

 戦争の混乱が収まりかけ新しい社会が始まる瞬間を描いています。地方の役人が大臣になり、共産党は新しい社会を作るためと言いながら犠牲を払うのをためらいはしません。未だ残っている反乱分子を粛清していきます。

 主人公は女と恋仲になり、少佐は暗殺を完遂することを求め、共産党書紀は離れ離れになった息子をさがし、秘書官は酒にひどく酔っ払い宴席に消化器を噴射します。宴席に呼ばれた有力者はダンスを踊ります。

 ここには色々なものが映っています。男と女も、老人も若者も、労働者も、権力者も、兵士も、罪も罰も、戦車も皆映っています。混沌としています。でも物語は破綻していません。主人公が恋に落ちながらも暗殺を行い、ゴミ捨て場で死にます。

 今となっては歴史の一部分です。歴史を描いているのは確かです。でも具体的です。町が舞台になり、ホテルが舞台になっています。そこで人々が活動しています。歴史という大きなものを小さな具体的なものをとうして描くということに成功していると思います。

 そして描かれる歴史とは日付のある社会の始まりなのです。何かが始めるというのは力のあることです。まっさらな状態で始めることはできません。しかし始まりの日というのは特別な日です。

 ひるがえって身の回りを見回せば、いつもの日常が繰り返されています。でももしかしたら毎夏花火が上がるのは始まりの合図なのかもしれません。今も何かが始まっているのかもしれません。

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