30代独身女子の日常<終電を逃した日>

再入稿をしていると、終電を逃した。入稿データは、なんであんなに重いんだろう。

定期は日比谷線だが、JRで行けるところまで帰る。その駅で降りると、立ち食いそばの誘惑が待っている。平松洋子のエッセイに影響されて、安くて、おいしくて、店舗ごとに個性がある立ち食いそばにはまっている。

もう24時過ぎているのに、行ってしまった。

駅の近くにある2軒をのぞきみて、値段が安い富士そばに決める。店前の券売機で、400円を入れて、わかめうどん・そばを押す。ピッという音のすぐあと、券とおつりが出てきた。

店に入り、カウンターへ。この前と違うスタッフが、食洗器のような銀色の大きな機械を洗っていた。

「そばお願いします」と言うと、そばを沸騰した湯に入れた。前回の店員さんは、そばを注文したら茹でた麺を鍋から出した。券をカウンターに置いたままにしていると、店員さんは何か言いながら券を渡してくれた。これも、前と違ってた。

少し経つと、わかめそばが出来た。

麺が見えないというと言い過ぎだが、たっぷりとわかめがのっていた。わんこそばのお椀分はあったのだが、これはこの店の適量なのか。責任のない店員が、店の儲けとは関係なく適当にわかめを入れただけなのか。

麺も、いつまで食べたらいいんだろう、と思うくらいたっぷりだ。たっぷりのわかめと麺は、前回と同じだった。

その後、ひと駅分タクシーに乗る。タクシーに乗るなり、「タクシーでケータイを落とした場合って見つかりますか?」と聞いてみた。すると、運転手さんは陽気に「100%見つかるよ!」と教えてくれた。

「落としたの、どこのタクシー?」と聞かれて答えると、「そこは大きいところだから、100%を見つかるよ」とまた陽気に答える。「タクシーの落し物は、なんとかセンターってところにいくから104に聞いてみな」とも言っていた。

「取られたのかな」とつぶやくと、「ロックはしたの?ロックしてるんだったら、もう使えないから誰も取らないんじゃない?」。「いやでも、SIMカードとか抜いたら使えますよね?中古って結構売ってあるんですよ」と私。

運転手さんも負けずに、「でも、いまは中古品売るときも身分証明がいるんだよ。ちゃんとした仕事している人は、売らないんじゃない?」と返してくる。

私も、視点を変えて話す。「浜松町からJRに乗って、スマホ触って、充電きれたからポケットに入れて、鶯谷で降りて、タクシーに乗って、家に着いてすぐスマホを探したら、もうなかったんですよね。落としたエリア、こんなに明確なのに、なんで見つからないんだろう」。

すると運転手さんは「でもさ、1m以内に落としたって言ってもさ、溝とかに挟まってたら、見つからなかったりするからね」と返される。「もう忘れて、彼に慰めてもらいな」と言われたころ、タクシーは家に着いた。



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