うそんこ地学事典 10. 海洋プレート層序

地球上に陸地が出来たので、牧場を作った神さまたちは、毎日毎日ステーキだの、しゃぶしゃぶなどに舌つづみをうっておった。ところが、ある日の健康診断で、コレステロール値が高くなり、腹囲がとんでもない数値になったので、びっくら仰天してしまった。あわてて神療内科医に相談したところ、「魚を中心とした食事に戻さないと、長生きできませよ。」といわれ、神さまたちは、本当に寿命が縮む思いをした。「これでは、いかん。しかし、近海の魚は飽きてしまって、もう食べたくないなあ。遠い海の魚でも手に入らないものかのう?」「そうじゃ、世界神さま会議で名刺交換した、ポセイどんがおった。あいつに頼んでみよう。」「そうだな。会議であったとき、『珍しか魚なら、おいに任せちょきやんせ』と言って『海の神さまポセイどん。薩摩生まれ』と書いた名刺をもらったよな。」このように相談した神さまたちは、名刺に書いてあったメルアドにメールをすることにした。

ポセイどんのメルアドは、poseidon@ezweb.ne.marineとある。どうやらAUのユーザーらしい。海底にも基地局があるのだろうか?神さまたちのそんな心配をよそに、ポセイどんからはすぐに返事が来た。
「太りすぎん神さぁたち、連絡あいがとごわす。珍しか魚が欲しかとじゃなぁ。いっき送っで、待ちたもんせ。」と分かりにくい鹿児島弁で返事が来たが、どうやら送ってくれるようであった。神さまたちは、「良かったでごわす。」と口々に慣れない鹿児島弁で喜びあった。

しかし、来る日も来る日も、神さまたちの所に、珍しい魚は届かなかった。「黒毛和牛も黒豚も絶滅してしまったぞぃ。何千万年待たせるんじゃ。時間がかかりすぎじゃ。」神さま達のイライラは頂点に達しようとしていた。すると遠くの船から、女の子が2人が降っているのが見えた。島には、ポセイどんと書いた幟が立ち、女の子達は大きな皿を抱えていた。

「長らくお待たせいたしました。」2人の女の子は、申し訳なさそうに頭を下げた。「いやはや、待ちましたぞ。神さまじゃなかったら、とっくに死に絶えているところじゃった。そうでなくても、コレステロールで死にそうだったんじゃが。。。」神様は、ちょっといらだちながらも、女の子達をいたわるように話しかけた。「申し訳ありません。ポセイどんから送り出されてすぐ、海底火山の噴火があって、海面に出来た島の上に、この船が座礁してしまったのです。幸いこの海底火山は、年に10cmの速度で移動する海底と繋がっていたため、ゆっくりとですが、こちらにたどり着くことができました。この船には大型冷凍庫を備えておりましたので、数千万年くらいでは、魚は腐ったりはしません。安心してお召し上がりください。」2人の女の子は、遅れた理由をそのように述べた。

よく見ると、2人の女の子は、顔かたちも、ほくろの位置も、背の高さもスタイルも、そっくりであった。
「あなたたちは、双子なのですか?」と神様の一人が尋ねた。
「はい、私たちは、双子で、ポセイどんの孫娘です。まあ、それはともかく、まずは私たちが持ってきた珍しい魚たちをお受け取りください。」と彼女たちは、皿を差し出した。

その大きな皿は、深緑色をした岩石の1枚板で、その上に透明な強化ガラスが敷いてある。ガラスの上には、深海のアンコウやミナミマグロ、カジキなど、神様がこれまで見たことのない魚が沢山並んでいた。皿の脇には、細千切り大根やわさびが並び、彩りに赤い珊瑚が並べられている。

神様は、あまりの珍しさと美しさから、食べるのも忘れて、見入ってしまった。
「ポセイどんは、こんな素敵な食事を毎日食べていなさるかい?」神様の一人は、女の子たちにそのように尋ねた。
「いえ、祖父でも、こんな豪華な食事は滅多に食べることはありません。海の神に就任するときなど、特別な催し物を開くときに、お客様を沢山招いて、一緒にいただくのです。」
「そんなに貴重な料理であれば、この料理には何か名前がついているのではないですか?」神様の一人は、大切な質問を彼女たちにした。

「はい。この食事は海の様子をそのまま表しています。深緑色の岩石の皿は、海底を表現していて、その上の強化ガラスは深海底の堆積物を表しています。その上に並べられた深海魚や遠洋の魚たちは、広い海の豊かさの象徴です。このような料理を『海洋プレート料理』と呼ぶのですが、大切な祝宴では私たちのような双子の女の子が運ぶことが多いので、特に『海洋プレート双女』と呼ばれます。

「まあ、名前などはどうでもいいではないですか?どうぞ、お召し上がりください。美味しいですよ。」と双子の女の子が声をかけると、神様たちは、一斉に皿に群がり、美しい盛り付けの『海洋プレート双女』を堪能した。あまりのおいしさのため、神様達は、双子たちに、おかわりをお願いしたが、遠い海を往復すると1億年以上かかると言われ、断念することになった。

双子の女の子が乗ってきた船は、海底火山とともに、海溝に沈んでしまったため、ポセイどんの元に帰ることがかなわず、神様達のアイドル『アンコウ美人姉妹(AKB-twin)』として、長く活躍したとのことである。

追伸:いつものことながら、「海洋プレート双女」は、文部科学省のジェンダーレス化政策によって、その後「海洋プレート層序」という用語に改められた。。。という無理な説明を付け加えさせていただく。

また、この「海洋プレート層序」こそ、「うそんこ地学事典 9. 付加体」で紹介した、新たに付け加わった陸地「付加体」の重要メンバーなのです。ご存知でしたか?知らないですよねぇ。。だって、この地学事典が適当すぎて、そんな風に読み取れないんですものね。すみません。お許しください。てへっ。。。