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シン雪女

 小さい頃に家族でスキー旅行に行った時に猛吹雪に襲われた。意識を失って気づくと、私は青白い妖艶な女性に介抱されていた。

一夜が明けて、女は「今日のことは二人だけの秘密だよ。もし言ったら凍らせるからね」と呪いの言葉を残し、颯爽と消えた。

あれから十年経った。私はライターとなり、様々なスポーツ選手のインタビューをする様になった。今日は未来のオリンピック候補生を取材する日だった。候補生の後ろには異様な威圧感を放つ女性コーチが控えていた。私はひと目で直感した。あの女だ。十年前に私を介抱してくれた女だ。

私は居ても立ってもいられず、そのことを打ち明けると女は血相を変えた。「二人だけの秘密だと言ったのに」としかめっ面をしていた。

あの場所は女性コーチの秘密の特訓場所だったのだ。私はあの時見た美しい滑りを忘れた事をなかった。ライターになったのも、あの時の感動や興奮を誰かに伝えるためだ。その事をコーチに話すと

「覚えてくれて嬉しい」と微笑んだ。

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