グラトニーというセレブがいた。有名人の子供で博識で、容姿端麗で金もあった。しかし、かなりのデブだった。

彼は電車のシルバーシートを一人で占有する位に太っていた。このままでは高血圧で死ぬと思い、有名なお医者さんのクリニックに通った。

「最近、朝起きるのしんどいですけど」
「そうですか。では、食生活の改善をしてみてはどうでしょうか」
「どうしたらいいですか？」
「ピザや焼肉、ビフテキ。脂こってりの家系ラーメンは控えて下さい」
「…じゃあ何食えばいいんですか」
「そうですね。お粥はどうでしょう？」
「お粥」
「ええ。お塩や卵、梅干しを入れて食べてみて下さい。美味しいですよ」
「わかりました」
こうして、グラトニーのダイエットがはじまった。

数日後、グラトニーは医者のもとを訪ねた。

「先生ぜんぜん痩せないんですけど」
彼は以前よりも太っていた。
「おかしいですね」
「言われたらとおり、お粥しか食べてないんですけど」
「…どの位食べてます？」
「一食でお茶碗十杯くらい。あと付け合わせに、アマゾンで取り寄せた梅干しと卵もたくさん」
「そんなに食べたら痩せるわけないです」
「だって先生、量については何も言ってなかったじゃないですか」と逆ギレした。
「常識で考えて下さい」と医者は呆れていた。