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Origin:かつての材木通りに、再び灯火を


とある材木通りの話

 岐阜県飛驒市古川町宮城町の、とある通り。住宅街のなかを通る1本の太い道。一見するとなんてことのない、住宅の建ち並ぶこの通りは、かつての飛驒市の材木通りで、木材関係の事業者が軒を連ねる工業区画でした。

 ほんの20~30年前までは、製材所が何軒も連なり、チップ工場から大工さんの作業場、建具屋さんなど、幾多もの木材関係事業者が人々の暮らしのなかに溶け込むように存在していたそうです。全盛期には17軒ほどあったという製材所は、現在は1軒のみとなり、材木通りは住宅街へと変わってしまいました。

 一時代の終わりの果てに、残された製材所が1軒。それが今回、私たちが再稼働させた匠和組さんの製材所です。

地域の工務店・匠和組さんの製材所

材木通りが残してくれた製材所、その更新と再生

 オペレーターの高齢化により、2022年頃に稼働を停止。資材置場となっていたところを私たちで借り受けました。工業区画から住宅区画へと変わった立地なため、一度工場を取り壊してしまうと、次は住宅しか建てられません。製材所という、ひとつの地域の資産を、また次の時代へ引き継ぐことができ、本当に良かったとおもいます。
 地域材の流通を考える上では、地場に根付いた製材所の存在が欠かせない一方で、一から新設するにはハードルが高く、製材所の継承と伝承が肝となります。人工林生の針葉樹の建築部材製材をしてきた工場は、地場の天然生の広葉樹・針葉樹製材をする場所へと生まれ変わり、息を吹き返すのです。

窓の大きな製材所:夏
窓の大きな製材所:冬

個から集へ:広葉樹のまちづくりとの連動、そして中間流通のハブ拠点へ

 飛騨地域では、2015年頃より広葉樹のまちづくりを掲げ、地域に豊富にある広葉樹資源の活用に取り組んできました。地域風土に根ざした地場の素材を活かすことで、飛騨地域らしい地場産業を育てることができるのではないかと考え、地域一体となって取組みを進めています。
 そのなかで重要な機能を担っているのが、原木仕分から製材乾燥までを含む「川中」の事業です。需給情報を川中の中間流通に集約することで、地場の天然の素材情報と、多様なマーケットニーズを擦り合わせていく。いわば流通の、ひいては人と自然との関係性におけるハブの機能を、ここ川中で駆動させています。
 

北陸性の気候が、飛騨の植生と木の文化をかたちづくっている。

製材業の再定義

 廃業のほうが多い製材・木材業界、現代における役割と価値の転換点に差し掛かっているのではないでしょうか。自然と産業の狭間に立ち、地場だからこその解像度の高さで折り合いをつけながら、人と素材の価値を引き出していく仕事は、面白くないはずがないだろうと、私はおもいます。
 製材所が町の流通網のハブとして駆動することで、もしかしたらかつての材木通りにも、新しい灯火が灯るかもしれません。そうした地域の未来に向けて、この製材所を地域の象徴として育てていきます。

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