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【読書感想文】超自然が紡ぐ、家族の絆と秘密のドラマ『赤川次郎クラシックス 幽霊愛好会』

友人の新たな家族との関わりの中で遭遇する不可解な出来事を描いた作品。

永井夕子は、久しく会っていなかった高校時代の親友との再会を果たします。そんな夕子の友人・片倉敦子は、年上の会社社長・泰長と結婚を遂げ、その豪邸での生活を満喫する日々。しかし、そこには敦子自身も理解できない不穏な空気が漂っていました。というのも、敦子の夫・泰長は、月に一度、故人との対話を試みるという奇妙な習慣を持っていたのです。

泰長の先妻の「幽霊」との会話が家族にどのような影響を及ぼしているのかは、物語を読み進めることで徐々に明らかになります。そして、敦子の娘・亜里沙の突然の死が、この物語に新たな展開をもたらすこととなるです。

この作品の見どころは、一見平穏な日常の裏に潜む不気味な出来事と、それに立ち向かう登場人物たちの心理描写にあります。また、家族という身近な関係性の中に隠された秘密や、人間の内面に潜む闇を巧みに描き出しており、そのことが物語の世界へと引き込まれる要因になっているとも思いました。

特に印象深いのは、亜里沙の部屋が荒らされた事件をきっかけに、家族内の緊張が高まり、それぞれの登場人物が抱える心の葛藤が浮き彫りになる場面です。亜里沙の死を巡る謎が深まる中、夕子と敦子、そして泰長の三者三様の感情が交錯し、その心理戦にはハラハラさせられました。

赤川氏の作品は、常に驚きの要素が満載なのですが、この作品では特に、人間の心理を巧みに操る描写が圧巻で、幽霊という超自然的な存在をリアルに感じさせてくれました。

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