軍事クーデターによって三つに分裂したカトヴァーナ帝国を舞台に、主人公イクタと幼馴染ヤトリが、互いに敵対する勢力の一員として戦場で激突するシリーズ第7弾。本作は、友情と裏切り、戦略と謀略が交錯する中で、主人公たちの運命が大きく変わる瞬間を描いています。

この物語のテーマは「運命の不可避性」と「人間の意志の力」です。イクタとヤトリは、それぞれの信念と忠誠心に従いながらも、避けられない運命に翻弄されることになります。彼らの決断が物語の行方を左右する本作では、人間の意志が運命に対していかに強い影響力を持つかが示されています。

見どころは、イクタが帝国皇帝の身柄を確保する一連の展開です。佞臣トリスナイの策略によって、彼の計画は思わぬ方向に進むことに・・・。特にクライマックスでのヤトリとの対峙シーンは、彼らの関係性の変化と、それぞれの内面の葛藤を巧みに表現した本作屈指の名場面です。

読んでいて、特に感動したのは、イクタとヤトリがそれぞれの立場で最善を尽くしあう姿です。彼らの強い意志と、運命に立ち向かう勇気に心を打たれたと同紙に、複雑に絡み合う政治的な動きと、キャラクターたちの心理描写の深さにも引き込まれました。

総評として、本書は本格ファンタジー戦記としての面白さはもちろん、人間ドラマとしての魅力も兼ね備えた一冊です。読後には、運命とは何か、意志とは何かについて深く考えさせられるのではないでしょうか。