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【読書感想文】魔剣との絆が描く愛と命。死に至るまで斬り合うか、生きて愛するか『七つの魔剣が支配する』

魔剣との絆をテーマにしたファンタジー小説。

主人公のオリバーは、魔剣を使える少年で、キンバリー魔法学校に入学します。そこで、トロールの暴走事件をきっかけに、新たな仲間と出会います。彼らは、魔法剣の授業や迷宮の探索など、魔法学校での生活を満喫しながら、魔剣の秘密を探っていきます。しかし、彼らの前には、人権派の魔女の陰謀や、母の仇である教師たちの存在が立ちはだかります。オリバーは、母の遺した魔剣を使って、仇を討つことを誓います。そして、世界に七つしかないとされる魔剣の力を目覚めさせるのです。

この本のテーマは、魔剣との絆だと思います。魔剣は、人間の感情や思考に影響を与える存在であり、それぞれに個性や意志を持っています。オリバーとナナオの相愛の剣、カティとトロールの友情の剣、オリバーの母の遺した復讐の剣など、魔剣との関係は物語の重要な要素です。魔剣との絆は、人間の成長や運命を左右する力にもなります。

私は特に、魔剣の個性や能力が興味深くてとても楽しめました。例えば、ナナオの魔剣は、相手の心を読んで、相性の良い人を見つけてくれますが、その相手とは、真剣で斬り合うことでしか愛を示せない、というもの。実際に、オリバーは、ナナオの魔剣の要求に応えられず、彼女に死なないように約束させられます。このように、魔剣とのやりとりは、ドラマチックで切ないものでした。

また、感動したのは、カティとトロールの友情のシーンです。カティは、トロールの殺処分に反対して、トロールとコミュニケーションを取ろうとします。トロールは、カティの努力に応えて、人語を話し始めます。しかし、それが彼らの危機を招くことになります。他にも、ミリガンは、トロールの脳を研究するために、カティを手術台に乗せようとします。オリバーとナナオは、カティを救うために戦いますが、トロールも自らの命を犠牲にして、カティを守ります。トロールは、カティにお礼を伝えて死んでしまいます。このシーンは、涙なしには読めませんでした。

総評としては、本書は、魔剣との絆を描いた、軽快でスリリングなファンタジー小説です。魔剣の設定や世界観は、オリジナリティーにあふれており、登場人物も、みな魅力的です。物語の展開は、やや単調で予想通りという感じもしますが、それを補って余りあるほどの魔剣のアクションやドラマがありました。

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