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【読書感想文】不射の射、心を射る物語『名人伝』

中島敦の「名人伝」は、弓術の名人を目指す紀昌の物語を通じて、技術の極致とその超越を描いた深遠な作品です。紀昌は飛衛に師事し、厳しい修行の末に弓術の奥義を会得しますが、彼の探求はそこで止まらず、さらなる真理を求めて甘蠅という老師に出会います。甘蠅によって示された不射の射、つまり矢を放たずに鳥を射落とす技は、紀昌の価値観を根本から変え、彼は名人としての技を披露することなく、弓の名前すら忘れ去るという境地に至ります。

この物語の見どころは、紀昌が甘蠅に出会い、不射の射を学ぶ場面です。技術の習得だけが名人への道ではないことを示唆するかのようですね。私は読んでいて、紀昌の内面の変化と、彼が最終的にたどり着いた境地に感動しました。彼の旅は、外見上の成功や名声を超えた、自己実現の物語と言えるかもしれません。

総評として、「名人伝」は、技術の習得という表面的な物語を超え、読む者に内面的な探求と自己超越の重要性を問いかける作品です。

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