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【読書感想文】税務署長、密造酒に挑む! ユーモアとヒューマニズムの冒険譚『税務署長の冒険』

税務署長の冒険と聞いて、どんな物語を想像しますか?密造酒の摘発に奔走するハードボイルドなドラマ?それとも、税務署長が密造酒に酔って変なことをするコメディ?実は、この本はどちらでもありません。

この本の主人公は、他の村からやってきた税務署長です。彼は、村の人々が密造酒を作っているという噂を聞き、潜入捜査を始めます。しかし、村の人々は口を固く閉ざし、証拠も見つかりません。税務署長は、村の人々に近づき、密造酒の製造場所や流通ルートを探ろうとします。しかし、その過程で、村の人々の暮らしや思いに触れ、次第に彼らに心を開いていきます。そして、税務署長は、密造酒の背景に隠された村の秘密を知ることになります。

この本のテーマは、正義と人情の間で揺れる税務署長の葛藤です。税務署長は、法律を守ることが自分の仕事であり、義務であると考えています。しかし、村の人々と交流するうちに、彼らの生活や苦労に共感し、密造酒を許す気持ちにもなります。税務署長は、自分の立場と感情の間で苦悩します。この本は、税務署長の心の動きを丁寧に描いているんですよね。

私は特に、税務署長が村の人々と打ち解けていくシーンや、密造酒の秘密を知ったときのシーンが印象的でした。税務署長は、密造酒の秘密を知ったとき、村の人々に対する自分の気持ちを認め、自分の選択をすることになります。

総評として、この本は、宮沢賢治の作品の中でも、特にヒューマニズムが光る一冊です。

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