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【読書感想文】子どもの自立、親の愛情の物語『いてふの実』

宮沢賢治の「いてふの実」は、いちょうの実たちが目覚め、旅立ちの日を迎える様子を描いた物語です。この作品では、いちょうの実たちがそれぞれの思いを胸に準備を進める姿と、いちょうのおかあさんの沈黙を通じて、親子の絆と成長の切なさを繊細に表現しています。

いちょうの実たちの旅立ちの日は、子どもたちが成長し、親元を離れる瞬間を象徴していると感じました。子どもたちのわくわくする気持ちや不安、そして親の深い愛情が、会話や描写から痛いほど伝わってきます。特に、いちょうの実が落ちた後に木に残された一枚のコートのエピソードは、親の無言の愛を感じさせ、読後に長く余韻を残します。

私は、本書のテーマは、いちょうの実たちが新しい世界へと旅立つことで、自らの運命を切り開いていくところから、「成長と旅立ち」だと思いました。また、親であるいちょうのおかあさんが子どもたちを見守る姿は、子どもが成長し自立することへの親の複雑な心情を表しているように感じました。

この作品を読むことで、親子の絆の深さと成長の過程で経験する喜びと苦悩を改めて考えさせられます。独特の詩的な表現が物語の美しさを際立たせており、大人も子どもも心に残る作品だと言えます。

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