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【読書感想文】子供と雪童子、見えない絆の物語『水仙月の四日』

雪深い山岳地帯での1夜を描いた物語。物語は、雪童子と赤い毛布をかぶった子供が出会う場面から始まります。雪童子は子供にヤドリギの枝を投げて遊びますが、子供はそれを拾い、家路を急ぎます。

本書のテーマは「見えない存在の価値」と言えるでしょう。雪童子は目に見えない存在ですが、子供の命を救う重要な役割を果たします。このテーマは、私たちが普段意識しないものの大切さを教えてくれます。

しかし、天候が急変し、雪婆んごが現れると、物語は一転します。雪婆んごは厳しい自然の法則を体現しているかのようです。そんな雪婆んごから、人間社会とは無縁であるはずの雪童子が、なぜ子供を守ろうとしたのか。命ある者同士の連帯感を描いたこのシーンは、自然の厳しさと、その中での微細な慈悲の見事な対比です。

私は、本作の物語を通じて、自然との共生や、見えないものへの思いやりを感じました。物語の終わりには、雪童子が子供を救う心温まるエピソードがあります。子供は最後まで雪童子の存在に気づかずにいて、ここに雪童子の思いやりがにじみ出ているようで、忘れがたい余韻も心に残りました。

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