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あの日、助産院で生まれてきたナツとなーちゃんへ。【つむぎやさんからのお手紙】

2023年12月。
次女のナツを助産院で出産して、半年が経った。いつの間にか寝返りをうつようになったナツ。ふにゃふにゃだった新生児の頃が懐かしい。

妊娠も出産も特別な体験だったけど、時間が経つとその記憶はだんだん薄れていってしまうんだ。

だから、忘れたくない大切ない記憶を、出産の代筆屋「つむぎや」さんにお手紙にしてもらったの。宛名は二人のむすめ、なーちゃんとナツ。この場所にも残しておこうと思う。

この記事は、次女を出産してから1ヶ月半後に、出産の代筆屋「つむぎや」で綴っていただいたお手紙です。写真とキャプションはこちらで追加しました。

なーちゃん、ナツへ


このお手紙を手にとって読んでいるあなたたちは、どんなことしているかな。毎日を楽しんでいるのかな。

このお手紙を書こうと決めたのは、ナツがママのお腹にいる時のこと。

毎日お散歩をしながら、あなたたちがお腹に来てくれてからこれまでのことを思い返すと、ここに辿り着くまでにすごく壮大な旅をしてきたなって感じたの。

2人が生まれてきてくれたこと、元気で息をしていること、日常が続くと忘れそうになるけど、当たり前のことなんかじゃない。本当に奇跡で幸せなことだから、大切にしたい、絶対にこの思いを忘れたくないって思ったんだ。

今は、ナツが生まれて1ヶ月半。かけがえのないあなたたちがくれた奇跡のような旅を、このお手紙にして贈ります。

助産院のこと

ナツがお腹に来てくれたことがわかったとき、なーちゃんと同じクリニックで出産しようと思っていました。だけど、そのクリニックはとっても人気で、ナツの出産予定日がわかった時にはもうすでに予約がいっぱいになってしまっていたの。

どうしようかな……と思っていたところ、家の近くに助産院を見つけました。さっそく見学に行ってみると、助産師さんたちがみんなすごく楽しそうに過ごしてて、助産院の建物も「このおうち、すごい好きだな」って感じて、すぐに気に入りました。

助産院って、普通の病院では当たり前ということでも、ここではそうじゃなかったりするの。まず、助産院に白衣を着たお医者さんはいません。お腹の中のあかちゃんの様子をみるエコーは滅多に使わないから最新の機械は置いてないし、じつはママも最初はちょっと心配になっちゃったんだ!

だけど、妊婦健診ではじっくりと1時間くらいかけて、ママの頭のてっぺんから足の先まで触ってくれて。ママの体や、お腹のあかちゃんの状態を感じてくれて、マッサージやお灸もしてくれるんだよ。普段の生活や、趣味のことも聞いてくれて。助産師さんたちは、五感を使って1人ひとりに向き合ってくれていたし、ここの助産院で産みたいと思うようになりました。

それに、なーちゃんが安産で生まれてきてくれたから、きっとお腹の子も絶対大丈夫って思えたんだよ。

ママが悩んでいたりすると、助産師さんにはすぐバレちゃうの!「最近、忙しいでしょう」「頭固いから、考え事が多いのかな」って見抜かれちゃいます。そして、体が冷えるからトマトとかキュウリとかはあんまり生で食べないでねとか、ワカメとかゴマ、玄米とか食べてねとか言ってくれる。ストレス溜めずに、たくさん寝て、生活してねってよく言われたよ。

そうして、だんだんと妊娠や出産は、日々の暮らしの一部なんだなって感じるようになりました。

助産院でいただくごはんは具沢山で、栄養満点で、愛情たっぷり。お産のために、身体づくりに励んだよ

なーちゃんと2人旅

その頃、なーちゃんは1歳。ママは、なーちゃんが生まれる時にお休みしていたお仕事に戻ったばかりで、とっても忙しくしていました。

なーちゃんが生まれたばかりの時はいつも一緒の時間を過ごしていたのに、お仕事をするようになってなーちゃんと過ごす時間が減ってしまって、寂しくて……。ママとなーちゃんと2人で鎌倉旅行をすることにしました。

なーちゃんと2人で出かけるのが本当に久しぶりだったから、ママはすごく嬉しくて!きっと、ママにとってもすごく大切な時間になるだろうなって想像しながら旅行に向かいました。

鎌倉では、海の砂浜で一緒になって泥んこになって。2人で一緒になってたくさん遊んだね。
だけど、旅行中にママの不注意でなーちゃんが頭を打ってしまったの。あの時はごめんなさい。痛かったよね。ママも本当にショックでした。

頭を打ってしまったから、もしも脳出血とかになって、明日や明後日、もしかしたら1ヶ月後に急に容態が悪くなっちゃったらどうしよう。もしも、なーちゃんが死んじゃったらどうしよう……!心配で不安で、そんなことが頭の中をよぎりました。
だからこそ、なーちゃんが笑っていること、泣いていること、ご飯を食べていること、そんな普通の日常が本当に愛おしくて、こうして一緒に過ごす時間も奇跡なんだって、改めて思ったの。

幸いなことに、なーちゃんはその後は何ともなく楽しく過ごせました。海で、はだかんぼのお尻丸出しで遊んでたね!こんな間近に1対1で笑顔を見る時間は久しぶりだったから、ママにとって本当に大切な時間を過ごせた旅行になりました。

なーちゃんはお風呂に一緒に入ると、ママの大きくなったお腹をぽんぽんってして「あかちゃん、生まれたら遊ぼうね」って話しかけてくれていたね。保育園の先生にも、「もうすぐあかちゃんが生まれるの」とお話したり。ナツが生まれてくるのを楽しみに待ってくれていたよ。

「ちゃんと、わかってるよ」

臨月を迎え、お腹も大きくなってきて、もうあかちゃんがいつ生まれきてもいい頃。助産師さんに、あかちゃんに気持ちが向いてないねって心配されたことがあります。その時、ママはお仕事だけじゃなくて、どうしてもやりたいことがたくさんあって、心も身体もいっぱいいっぱいになっちゃってたの。忙しくて疲れていると、ちょっとだけって、インスタントラーメン食べちゃったりして。でも、後になって「お腹のあかちゃん、ごめんね」って思うこともありました。

臨月になって、もう生まれてきても大丈夫だよって思っているんだけど、心のどこかで、やり残したことがあると感じていて。

助産師さんには、それが全部わかっていたみたい。「まだあかちゃんに気持ちが向いてないね。あかちゃんを感じて、お産できるかな?」って聞かれたの。

やりたいことがたくさんあって、まだ終わっていなくって、それであかちゃんに気持ちが向き切れていなくて、本当はすごく申し訳なくて……そんな気持ちが溢れて、ママは号泣してしまいました。

そしたら助産師さんが、ママのお腹に手をあてて、ナツの声を聞いてくれたの。

ナツはね、
「お母さんが、毎日頑張ってるのちゃんと知ってるよ。家族のために頑張ってくれてるんだよ。だから、申し訳ないなんて思わなくていいんだよ。気持ちが向くようになったら、その時に向いてくれればいいからね。ちゃんと、わかってるよ」って、言ってくれた。

ナツの言葉に、ママは救われたんだよ。お腹の中からママを勇気づけてくれていて、本当に心強かった。

お腹のこの子は、ママの心も身体も全部わかってる。そのうえで、いいんだよって言って背中を押してくれてる。

たぶん、こうしなきゃいけないって、いろいろ考えちゃってたけど、そうじゃなくてもいい。自分のやりたいことをやって、自分のタイミングでお産に集中すればいいんだ。ありのままでいいんだって思うことができました。

きっと、助産師さんにお腹の中のナツの声を聞いてもらっていなければ、全く違うお産になってたと思う。声を聞かせてくれたことに、本当に感謝しています。ママは、自分の感情をぜーんぶ出して、やりたいことをやり切って、よし、お産だ!この子と一緒に頑張るぞ!って、心の底から思えるようになりました。

産休に入ってから、やりたいことが爆発しちゃって。どうしても書き終えたいものがあったんだ。書き終えたら、気持ちがスッとしたよ

陣痛、いよいよ出産へ

2023年6月22日は、なーちゃんの保育園の夏祭り。おばあちゃんも一緒に3人で夏祭りを楽しんでいたんだけど、途中からちょっとずつお腹が痛くなってきました。そう、陣痛です。

夜中にだんだんと痛みが強くなって、感覚も短くなってきて。そして明け方5時、パパもなーちゃんもまだ寝ている中、1人で助産院まで歩いて向かったの。

途中でお腹が痛くなったら休みながら行こうって思いながら、いざ出発。家を出ると階段を降りなきゃいけないから、転ばないように手すりをガシッと持ちながら一歩一歩階段を降りて川の方に向かいました。

寒くもなく暑くもなく、気持ちがよくて爽やかな陽気の日でした。

空は白んできていて水色に染まり、誰もいない道はとても静かでシーンとしてる。ママが好きな山登りに行く時みたいな静けさでした。

川辺には緑がたくさんあって、小鳥がピィピィ鳴いててね。ジョギングしている人がいたり。
「みんなも、今日の1日が始まるんだな」って思いながら、ゆっくりゆっくり川沿いを歩いて、途中、いててててって痛みがくると立ち止まりながら進みました。

ママが、いててって立ち止まったときに、出勤しているおじさんが横を通り過ぎながらチラチラ見ててね。過ぎ去ってどんどん遠ざかってもチラチラ振り返ってくれるの。きっと心配してくれたんだね。ママも朝5時に会社に向かうそのおじさんを見送りながら、助産院までゆっくり向かいました。

朝の5時、陣痛は10分間隔。痛みのない時に、川沿いの道をゆっくりゆっくり歩いたんだ

助産院の出産

助産院について、陣痛の痛みの間隔が5分くらいになってきて。お腹のあかちゃんに酸素を送るようにふぅーっと息をゆっくり吐いて。

お腹に手を当てながら、
「もうすぐ出てくるのかな」
「お腹の中でくるくる回りながらすごく頑張ってるよね。ママも頑張るよ。一緒に頑張ろうね」
そう話しかけながら、生まれる時を待っていました。

でも、いよいよ出産の時が近づいてきたってときに、助産師さんたちや、パパ、なーちゃんとたくさんの人が駆けつけてくれて、陣痛が遠のいてしまったの。ママは、人がたくさんいると集中できないタイプみたい。

朝8時頃、みんながお部屋に集まったら陣痛が遠のいてしまったよ。なーちゃんには保育園に行ってもらうことにしました

トイレに行きたくなって、トイレで1人になった瞬間に稲妻に撃たれたように陣痛の痛みがドーンってきたんだ!しばらくトイレでいきんだ後、いよいよあかちゃんが出てきそうになったので、急いで助産師さんがパパを呼んでくれようとしていたんだけど、ママは集中力を途切れさせたくなくて「パパ来ないで!」って言っちゃった(パパ、きっと「あれ?」って思ったよね……笑)。

生まれる波がきて、普通はもう一息いきむところを、最後うわーってめちゃめちゃ踏ん張って一気に産み落としたの!助産師さんも驚いてた(笑)
生まれてきたあなたのおぎゃあって声が聞こえました。ママの胸の上に乗せてもらって、とんとんってあなたに触れて。ぴとってくっついて、可愛い。あったかいなぁって。

無事に生まれてきてくれてありがとう。なーちゃんの時もそうだったけど、生まれてもおぎゃあって声が聞こえなかったらどうしようとか、最後まで不安はあったから、本当に安心したよ。いつもは寡黙なパパも、すごく嬉しそうにしていたよ。

助産院で出産して、助産師さんがお腹のあかちゃんやママの気持ちや状況、どんな風にしたらいいお産になれるのか察してくれて、ママもたくさん考えたり発見したりすることができました。素敵な経験をさせてくれてありがとう。

トイレで一人になった瞬間、ドカーンと強い陣痛がきたんだ。ロープにつかまっていきんだよ。助産師さんはときどき手指でお腹や赤ちゃんの様子を感じながら、近くで見守ってくれたんだ
無事に生まれてきてくれて、ありがとう。あなたもママもすごーく頑張ったね。助産師さんたちも、全身でわたしたちに向かい合ってくれたね。「お産の時はみんな野生になるの。頭で考えなくていい。感情も全部出していいのよ」「あなたはひとりで向き合う洞窟タイプだったわね」って。おもしろいよね

一緒に楽しもうね

ナツが生まれて、なーちゃんは嬉しそう。最初だけ、ちょっと寂しそうでもあったね。今まではパパとママとなーちゃんだけだったのに、突然ナツが加わって戸惑ったのかもしれないね。

だけど、なーちゃんはとっても優しいよね。ナツにお布団をかけてくれたり、お風呂に入るときには、おむつやタオルを持ってくるー!って準備したり、いっぱいお手伝いしてくれるよね。「ナツちゃん」ってよく話しかけたり、耳元で、「こんにちは、あかちゃん♪ わたしがマーマーよ〜」っておうたを歌ってたり。

そんなあなたたちが、すっごく可愛くて!
パパも、ママも、2人にはありのままに育ってほしいって思っているよ。こんなふうに育ってほしいって、あまり決めつけたくないなと思ったので、ナツも、なーちゃんも、実際にある草花の名前をつけました。

ありのままに、好きなことを、好きなようにしてくれたらいいな。

これから、つらい時もあると思う。自分で頑張る時もあるでしょう。だけど、パパもママも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、助産師さんも、いろんな人があなたたちのことを見守っているよ。今はおばあちゃんもほとんど毎日来てくれているし、おじいちゃんも週に1回は来てくれてる。なーちゃんとナツのこと、いつも誰かが見ていて、みんなであなたたちのこと育てているんだよ。だから、安心してね。全然1人じゃないんだよ。

周りには、家族のように頼りあったり、心置きなく遊べるいとこもたくさんいるから、そういう繋がりも楽しんでほしいな。

これからも、ママも楽しむつもり!だから、あなたたちも楽しんでね。
みんなで一緒に楽しもうね!

ママより

いつも自分の好きなことを、一番楽しんでしまうママより

つむぎやさん、素敵なお手紙をありがとうございました☺️こんなふうに自分の想いが形になって本当に嬉しいです。いただいたお手紙はこれからもずっとずっと大切にしますね。

代筆者・たなかあゆみさん
編集・あんどうまりこさん


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