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都会と田舎、カナダの最果て、ガスペの「ムースまつり」(4/4)

「実はな。俺はこのムースを猟銃で仕留めたのではないんだよ。弓を使ってやっつけたんだ」

私が話しかけた一人の男はニコニコとしながら、そんな自慢話をしてくれました。その男の車の上に置かれているムースの目をみていると複雑な気持ちになりました。きっと、都会の人は、この男に怒りをあらわにするか、シニカルに蔑視するはずです。

そこに生きる人の文化や習慣への敬意。これは世界の人々と交流を深めるためにもっとも必要な意識です。都会の人工的な世界から旅してきた私が、過酷な自然と共に生きる人々の晩秋のまつりに接し、そこに集められたムースの亡骸をみたときに、どう反応したらいいのか。

私自身、言葉がみつかりません。

パリの人は、カナダの辺境のフランス語をきいたとき、田舎者の言葉と思うでしょう。

あのガスペの広場に流れていたカントリーソングの音が、美しい森や岸壁の続く国道を一路アメリカとの国境に向かって車を走らせる私の耳に残り続けたのでした。

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