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楽しい観察調査 アンケートやインタビューにない学びについて(前置き)

レアな調査手法:観察調査

マーケティングリサーチの世界には数多の調査手法がありますが、私がいちばん好きなのは、表題の観察調査です。

世の中のマーケティングリサーチの大半はアンケート調査とインタビュー調査で占められているのではないでしょうか。一般的に、マーケティングリサーチャーが観察調査に取り組む機会はレアなのではと思います。

実際に調べてみたところ、調査種別ごとの売上を日本マーケティングリサーチ協会が経年で調査されていました。

出典:一般社団法人日本マーケティングリサーチ協会「第46回経営業務実態調査」
http://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_46.pdf

この表から確実に観察調査と判断できるのは「エスノグラフィー」ですが、アドホック調査の売上を100%としたときのシェアはわずか0.2%です。
それ以外のところにも観察調査が埋まっている可能性はありますが、それらを合算したとしても大した分量にはならなそうです。
やはり、観察調査はレアなのです。

前職での観察調査

しかし、私にとって運の良いことに前職は観察が極めて容易な業種・職場環境でしたし(徒歩3分で観察し放題!)、私に求められた役割もそうだったのです。

前職では7年ほどマーケティングリサーチャーとして働きまして、私も前半4年ぐらいはほぼアンケートとインタビュー(と、政府統計などデスクリサーチ)を仕事としていました。
一方で後半3年ぐらいは、それらをサブ業務として持ちつつ、各施設の利用人数や待ち時間、待ち人数を分析する業務をメインにしておりました。テーマパークのキャパシティマネジメントの一環ですね。

もちろん、それらにも定量分析は欠かせないのですが、同時に観察も不可欠でした。
「待ち人数がこれぐらい」という量的な情報を机の上で見るのと、実際に施設へ出向いてその目で確認することはまったく次元が異なります。

例えば「フードコートのレジあたり待ち人数10人」は、ひょっとしたらデータ上は大したことないように見えるかもしれません。しかし、実際のテーマパークで各レジに10人並んでいる時の混雑度合いが筆舌に尽くし難いことは、ご経験おありの方なら思い出せるかと思います。
レジの混雑もそうですが、その状況では席の空きがなく、近くのベンチならまだしも地べたに座って食事されているお客様までいらっしゃる状況です。

観察をするということは、そのような情報まで得られることを意味します。
それがいかに「欠けた大事なものが埋まる感覚」を得られてエキサイティングであるか、特にマーケティングリサーチャーやUXリサーチャーの方々でしたら容易に想像がつくと思います。

そんなわけで、前職ではあっという間に観察調査にハマってしまいました。本当に色々な調査をやりましたね。楽しかったなあ…。
思い出せる限りのことを書いてみますと、待ち時間や待ち人数はアトラクションやパレード、フード施設や商品施設の他にもトイレや喫煙所、はたまたベンチにまで及んでいました。通行人数などもやったかな。

大先輩に教わる

こんなふうに書いていくと、前職での観察調査は私が発起人のように読めるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
この分野には偉大な先輩の存在がありました。

お人柄は実に柔和で、相手のことを思いやる態度は崩さず、激昂したところなど見たことがありません。
しかし観察に関しては本当に厳しく、現場のあらゆるところに足を運びます。「この時間のこの場所」という現場の勘所には、午前4時だろうが深夜0時だろうが、休日だろうが長期連休中だろうが必ず現れ、隅から隅まで肉眼で確かめていらっしゃいました。

このような先輩には、リサーチャーとして強烈な尊敬とシンパシーを感じざるを得ません。
そして、いったいこの人の目には何が見えているのか、同じものを見ているが自分に見えていないものが絶対に見えているはずだ、なんとしても自分もそれを見てみたい…と思ったわけです。

実際、先輩にくっついて(私も午前4時だろうが深夜0時だろうが、休日だろうが長期連休中だろうが必ず行きました。幸い不規則な勤務形態には慣れていました)観察して回る間に、「見える 」ようになったことがたくさんありました。

見えるようになると、今まで目に入っていたはずなのに、その意味に気づかなかったことが膨大な量にのぼることが理解できてきます。

本当にもったいない、と思いましたね。
自分はなんと貴重な情報を見逃してきたんだろう、と切歯扼腕する思いでした。
そして、こういうことが見えないままのリサーチ提言が、他人を動かせるわけはなかったな、と大いに反省しました。

次回予告

このように、観察調査はマーケティングリサーチャーとしての私に与えた影響がとても大きいものでした。

そんな観察調査という手法について、次回は私が学んだことをお伝えいたします。
観察調査とはどういうものか、どんなベネフィットがあるのか、そしてなぜ観察調査が難しいのか、それを打ち破るコツは、などの内容です。

観察調査の魅力を感じとってもらえれば、それ以上のことはありません。
楽しみにお待ちくださいませ。

あ、その前に動画をアップするかもしれません。そちらもご覧いただければ幸いに存じます。


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