PUFFYと挿し木

友人に「仕事、忙しそうだね」と声をかけたら、
「忙しい。お金のために、面白くないことやっている」
と言う。
「そんなことないでしょう。あなたは、仕事はけっこう面白がっている方でしょう。1面白いところがあったら、9めんどくさいことがあるのが仕事で、それでも1面白ければいいんだよ、って河合隼雄も言ってたよ」
と言うと、
「河合隼雄はいいこと言うね。元気出た」
と言った。

少し考えて、これは河合隼雄が言ったのではなく、この前たまたま読んでいたPUFFYのインタビューの発言だったことを思い出した。

由美 やっぱり楽しいことをやりたいじゃないですか。大変なことが10個あっても、それは楽しいこと1個をやるために必要なものならいいんです。大きくひっくるめて、1個の楽しいことだと考えられるんで。でも、そもそも楽しいことがないならやっている意味ないよね、と。なんとなくそういう話をしたのかな。

「楽しくないことももちろんあるんです」それでもPUFFYが25年間で一度も“解散”を考えなかったワケ(文春オンライン)

PUFFYのように仕事を突き詰め、継続している人の口から出てくる言葉は、河合隼雄が言ってそうな言葉になるのかもしれない。

LINE通話をしていた友人に、最近植物を育てはじめたと言ったら、彼女は椅子から立ち上がったようで画面が揺れて、窓の外が映し出され、

「これがうちのベランダ菜園」

と言う。画面にうつる植物はカラカラに枯れて茶色くなっている。二人でゲラゲラと笑う。

「いろいろこだわって、珍しいアイビーとかを育てていたんだけど、枯れちゃったなぁ。すぐ飽きちゃうね」

と友人は言い、それでもちょっとの罪悪感で済むのが植物の良いところだという話をした。

「すごい有名な植物ショップにも行ったし、メルカリで珍しい苗を買ったりもした」

と友人は言う。

私もガジュマルの苗が欲しくて、メルカリなどを見たことがある。ガジュマルの枝を切って、その一部を土に差すと、根が生え、それが成長していくのだ。

メルカリで3本いくらで並んだ苗を見ていると、縁もゆかりもないところで挿し木され、自分の分身が成長していくわけで、それは実が落ちて、自分の近くから芽を出すような感覚とはずいぶん違っているだろうし、植物の命は不思議だと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?