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目が小さくなる(2024.01.26)

妻がここ一か月くらいずっと神棚(的なただの高い棚)に上げている宝くじがあって、それがついこの間当選発表となった。

「当たる気がする!」と妻は日頃から言っており、私もなんだか「当たる気がする!」と思っていた。そして長男(8歳)に至ってはもはや当たる事は既定路線として捉えられているようだった。

妻は二種類の宝くじを買っており、その片方はけっこう前に当選発表が行われていた。長男と私は毎日のように「当選発表まだ見らんの?」と妻を急かしていたが、妻は一向に見ようとしないので、「実は妻はとうに発表を見ており、高額当選しているのだが、それを言い出せずにいるのではないか」と私は勘繰った。妻の怪しい素振り、思わせぶりな言葉は度々あったので、長男と私の期待はさらに高まっていった。

そして今日、晩飯の後、妻は意を決したように宝くじを神棚(みたいなただの高いところの棚)から宝くじをうやうやしく下してきて、当選発表を確認し始めた。

固唾を飲んで見守る長男と私。傍らの長男に目を向けると、見たことないような真剣な表情をしている。目が爛々としており、妻の持つ宝くじの一点に神経が集中しているのが分かる。「こんな真剣な表情、初めて見た」と私は思った。

妻がテーブルの上に宝くじを並べて、スマホで当選番号を確認する。緊張感が走る中緊張感のない妻が次々とスムーズに番号を読み上げて、それまで夢の詰まっていた番号がただの数字の羅列に成り下がっていく様があまりに淀みない。

ため息が漏れる間もなく、全ては夢と消えた。「まぁそんなもんだよな」と妻と私が笑っていると、長男が固まっているのに気づく。微動だにしない長男。本当に夢が潰えたような表情をしている。

そしてよく見ると、目が小さくなっている。印象とかそんなではなく、物理的に、現実的に、目が小さくなっている。宝くじを確認する前は瞼が二重だったのに、確認後は一重になっている。そして瞬間冷凍したみたいに、表情がピシッと固まっている。

妻と私は長男のそんな顔に気づいて、ゲラゲラ笑った。「瞼が一重になってるやんwww目ぇ小っっさ!!www」と言って、長男の落胆ぶりを笑った。

長男は「この人たちは宝くじが外れたというのに、夢が壊れたというのに、なんでこんなに笑っていられるんだろう」みたいな顔をして、絶望している。

真の落胆、シン・ラクタンは、二重瞼が一重瞼になって目がちいさくなるくらいに身体的な影響を及ぼす事があるのだなと、ますます妻と私は笑った。

宝くじが外れて2千円くらいの損失だったが、長男の顔のおかげでまぁまぁ笑えたし、「人は落胆し過ぎると目が小さくなる事がある」という発見もあったので、元は取れたかなと思った。

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