ヤマノエ

文章力、鍛。 もはや読む専

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ショートショート 顔自動販売機

「はい、勉強お疲れ様」 「…ん」 大学受験の頃。 部屋に缶詰で勉強をしていると、母はよく夜食を作ってくれた。 夜食といってもおしるこだ、俺の好物だった。 「あんまり無理しないでね」 俺は碌に返事もしなかった。 上がらない成績の事しか頭に無かったのだ。 ガタン 自動販売機から水を取り出す。 ベンチに座り、飲み会での話を思い出した。 タケルは公務員、ミカは銀行員。 皆、内定を受け取り価値のある人生を送る。 一方俺は志望校に落ち、無理に上京して就活を始めるも全落ち。

    • note更新したいと思って早数ヶ月、 note更新したい

      • ショートショート 名刺交換

        「あれ?嘘、高橋くん?」 懐かしい声に、思わず振り返った。 「…え、田町さん?」 夕方、駅前のリクルートスーツ集団の中に、その声の主を見つけた。 「…田町さん、何やってるの?」 「え?…あー、なんかさ、新人研修みたいで」 「…あー」 道ゆく人を捕まえ、名刺交換をしている人がちらほらと居る。何となく察しがついた。 「本当やんなっちゃう」 そう言って田町さんはヘラッと笑った。 「高橋くんはさ、元気だった?」 「…あ、うん」 「…そっか」 5年前、高校で俺と田町さんは同じ

        • ショートショート 感想文部

          このラーメン屋は親父から継いだ。 親父の旨くはないラーメンも俺はそのまま継いだ。 不味いので客は定着せず、親父の客も来なくなった。 「潮時か…」 そう呟いた時だ。 ガラガラ 「さぁ、感想文部の活動開始です」 あの高校生が来た。 閉店後、スマホを確認した。 『魚介系スープは旨いが、まだ脂っこい 3.5点』 奴だ。前回より高評価…でも腹立つ。 奴は毎回グルメレポを残す。 レポは的確だ。 実際、従う事で客足が増えた。 今じゃ時々TVにも出る。 しかし、奴だけは未だ4点

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        • ショートショート
          12本
        • 脚本練習
          2本
        • 日記
          2本

        記事

          ショートショート 株式会社のおと

          『株式会社〇〇、食品偽装か』 新聞の目立つ位置に記事は載っていた。 株式会社〇〇、親父の会社だ。 「もしもし、親父の様子どう?」 「落ち込んでるわよ、お父さんも知らなかったからね」 いつも険しい顔で仕事の印象しかない親父。 そんな親父が落ち込むなんて。 「また顔見せに来てね、喜ぶと思うから」 昔の事だ。 俺は中学生になり夜更かしを覚えた。 深夜2時頃、親父が帰ってきてかなり驚いた。 それまで親父がいつ帰宅してるのか知らなかったのだ。 働き出し、家庭を持つ今なら分かる。

          ショートショート 株式会社のおと

          ショートショート タイムスリップコップ

          夏休み最終日に、自由工作の宿題を思い出した。 半泣きの俺は考え、近くの紙コップで貯金箱を作った。 かこん 机に置くと軽い音が響いた。 「先生それ手抜きですよ」 学級委員の武田だ。 「見せてよ」 「やめろよ!」 貯金箱は俺と武田の間を行き交い、床に落ちた。 そして、武田に踏まれた。 「あ、ごめ…」 俺は、泣いてしまった。 1ヶ月後。 工作の展覧会が終わり、貯金箱が返却された。 踏まれたせいで皺がついている。 「……」 武田の視線を感じる。 俺は隠すようにランドセルにし

          ショートショート タイムスリップコップ

          脚本 大切な贈り物

          脚本作成ルールは以下の記事から 今回のお題 うっかりして表示語数を3にしてしまったので、下二つの「12月」、「アイスキャンディー」をお題として採用。 以下、脚本 ───────────────── タイトル「大切な贈り物」 照明、薄暗い。 舞台下手にベッド、中央にはテーブル(手紙、ビスケット、牛乳あり)、上手には暖炉がある。 ベッドには男が眠っている 暖炉からサンタが出てくる。 サンタ「しー」 サンタ、テーブルの上に置いてある手紙を読み、顔をしかめる。 少し考え

          脚本 大切な贈り物

          脚本練習 ルール

          こんにちは、ヤマノエです。 ちょっと思いつきなんですが、あるトレーニングをこのnoteを利用して行おうと思います。 実は僕、舞台脚本を趣味で書いていきたいな〜と思っているんですが、実のところ、まともなものを全然作れていません。 なので、脚本作成の経験を積む為にも、定期的(可能な限り…)にこの場を借りて作った物をアップしていこうと思います。 ○ルール 無から有を生み出す事がまだ出来ないので、 以下のサイトでお題を決めてから作成しようと思います。 このサイトでは表示語数

          脚本練習 ルール

          ショートショート 初めての鬼

          毎年夏になると、従兄弟はウチヘ遊びに来る。 従兄弟はまだ小学生で、俺達兄妹はその遊び相手をしていた。 素直で可愛い従兄弟。 その従兄弟が、今年は違ったのだ。 「アニキ」「アネキ」 俺たちの事をそう呼び始めた。 おそらく友達の影響だろう。 「おに…アニキはさぁー」 「おね…アネキはどうなの」 全然呼び慣れていない従兄弟。 「前みたいにお兄ちゃん、お姉ちゃんって呼んでもいいぞ?」 「うるさい。…おに…キはもう風呂入ったの?」 おにおにおねおね言っているのが可愛くて、俺達はずっ

          ショートショート 初めての鬼

          ショートショート フシギドライバー

          私が部屋で躓くと、息子がドライバーを患部に当てた。 「こら、それで遊ばない」 「でもロボのしゅうりにひつようなの」 おもちゃのロボの事だ。 「パパ人間だし治らないよ」 「これはね、フシギドライバーだからなんでもなおるよ!」 息子はドライバーを捻り続けていた。 ロボ映画のCMを見て昔を思い出した。 「休職を勧めます」 息子の事を医師に相談した所、そう返された。 久々に会った息子には、以前のような快活さは無かった。 息子が苛ついて居間に入ってきた。 「…パソコン動かないんだけ

          ショートショート フシギドライバー

          ショートショート チャリンチャリン太郎

          フワフワの茶色い毛。クリクリの黄色い目。 「これからよろしく、太郎」 「にゃーん」 俺が8歳の時、新しい家族を迎えた。 「シャー!」 「ご、ごめん」 うっかり太郎を踏んづけた事があった。 チャリンチャリン 俺は、太郎の首に小さな鈴をつけた。 これで居場所が分かる。 太郎は不思議そうに駆け回っていた。 そんな太郎が去年の夏、亡くなった。 両親曰く寿命だったらしい。 17歳だった。 「うち、夏休みとかないから」 「そうですよね…」 現在、俺は日々激務に耐えていた。ここ数

          ショートショート チャリンチャリン太郎

          ショートショート ビール傘

          幻のサッポロビール遺跡の噂を耳にし、我々探索隊はやってきた。 なんでも秘宝が存在するらしい。 遺跡はビール工場の地下に存在した。 これまでの遺跡とは何処か違う…。 メンバー4人、エレベーターに押し入りB10のボタンを押した。 キツネの襲来。メロンでの砲撃。落し穴に味噌ラーメン。 罠を抜け、最深部に辿り着いた。 そこにはビールサーバーが置かれていた。 サーバーのトリガーを引く。 出てきたビールは人に姿を変えた。 「願いを叶えよう」 呆然とした。 「…まずは風呂に入りたい」

          ショートショート ビール傘

          ショートショート ふりかえるとよみがえる

          秩父旅行の最終日。 本日来たこのお店、聞いた所隠れた名店らしい。 ただ注意点が一つ。 絶対に食べ物を残してはいけない。 「もう、お客さんったら」 「いえいえ、凄く美味しかったです!」 本当に、文句無しに美味かった。 …帰りのバスの時間が近いな。 「お会計お願いします」 「お客さん、サービスです」 自席を振り返ると、デザートが置かれていた。 「え、いいんですか?」 嬉しい気遣いだ。 「ご馳走様です、お会計を」 「…サービスです」 自席を振り返ると、再び天ぷらが盛られていた。

          ショートショート ふりかえるとよみがえる

          ショートショート おうちカフェ

          「先にお飲み物お伺いしましょうか?」 その時、時間が止まった、気がした。 「この店のオススメはカフェオレですよ」 「ちょ、ちょっと…祐介…」 「あれ、店長。コーヒー豆切らしてましたっけ」 何が起きてるのか少しずつ整理する。 「あれー、コーヒー豆ってこんな形でしたっけ、店長?」 「いや私、店長じゃないし…。祐介それ、納豆だよ」 「そっかー。でも豆って所は同じですもんね」 今日は彼氏の、祐介の誕生日。 私はサプライズで祝おうと思い、午後休を貰ってさっき会社から帰ってきた。 「あ

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          墓参り 2022/06/25

          一日遅れたけど、昨日の日記です。 昨日、半年ぶりに実家の家族が集まった。 それも、全然お墓掃除してないから、そろそろやっておきたいねという話だった。 最初、お墓掃除には少し抵抗があったので、その提案を最初された時、俺は「うん…」と小さな返事しか出来なかった。 でもその後、ついでに温泉、カラオケにも行っておこうかと提案されて快諾することが出来た。 なので、昨日という日が楽しみだった。 霊園に到着して、母親の指示に従って父親を含む男勢はちゃっちゃか墓掃除を済ませて、墓参りも

          墓参り 2022/06/25

          ショートショート 宇宙戦艦

          「ビッグバン砲、発射!!」 ドーン 我が戦艦、スペースダイアモンドは並の船ではない。 なんせ宇宙戦艦だ。 なんでも、地球が宇宙人によって支配された為、安住の地を探すために造られたとか、なんとか…。 詳しい事は覚えていない。 何しろ、私は自分が艦長に指名されてからというものの、興奮のあまり会議の時の記憶が途切れ途切れになってしまったからだ。 「艦長!一体なぜ!」 「どうしてビッグバン砲を撃ったんですか!」 「……」 ギロリ 「う…。」 「艦長の事だ、何か深いお考えがあ

          ショートショート 宇宙戦艦