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2023年の終わりに。


毎年思うんですが、年が終わるというのはいいことですよね。

自然と区切りがつきますものね。

僕もずいぶんとだらしない人間だからほっといたら、日々をダラダラ過ごしてしまって、いつのまにか昼と夕方が溶けちゃって今が何時かわからなくなって、昨日と今日の境目が曖昧でおんなじ風景の中でおんなじことの繰り返しをしているような気持ちになっちゃって、そうやって時間を過ごしているなかで本当は特別なことや大切なことを「当たり前」に格下げして、ちょっとずつ傲慢で無感動な人物になっていっちゃいますもの。

けど、こうやって「年末」とか「大晦日」とか「お正月」があるおかげで、少なくとも年に一度は自分の過去を振り返って、これからの自分の姿に思いを馳せて、気持ちを新たにしたり、自分の立ち位置を再確認できたりするわけですから。本当にありがたいことです。


2023年はかなりいろいろなことをやって、いろいろなモノやコトやヒトに出会った1年でした。

特にコトとヒトとの出会いはとても大きくて、いままでチャレンジしたことない仕事に挑戦する機会をいただいたり、新しく出会った人たちとこれまでの僕の人生ではあまりなかったような繋がりを持てたり、本当にスペクタクルでした。

何人かでワイワイした人たち。3人ぐらいで集まってあーでもないこーでもないと話した人たち。ふたりで顔をつき合わせてゆっくりいろんな話をした人たち。

人と過ごした時間の中に楽しさや喜びや嬉しさがありました。もちろん困惑や反省や戸惑いや焦燥もあるにはあったけれど、そういう感情や自分の反応すらも「ちゃんと人と関われている」ことの証左だったと思うのです。

尊敬する人に何人も出会えましたし、それはとても年上の大先輩の場合もあれば、同世代の場合もあれば、僕よりも年下の人の場合もあって、これってとても健全なことだけどなかなか実現できることじゃないですよね。年齢関係なく尊敬できるような相手に会えることって。


今年は本当にたくさんのいろいろな仕事をしまして、表に僕の名前が出るものもあれば、サポートワークだったり企画段階のあれこれだったり、大々的にSNSで告知するようなものじゃない仕事もけっこうありました。

世の中にはいろんな仕事があるという当たり前の事実の片鱗を見ることができたのは大きな収穫ですし、ある場所では活かせない僕の能力や技術も、別の場所では価値を提供できる場合があると知れたのも嬉しい経験でした。

大きな舞台で商業作品に出続けることは僕の喜びでもありますし、やりがいのある、チャレンジし続けたい仕事としてずっと目標の第一番手にあるのだろうけど、そうじゃない山野の社会貢献の仕方もあるんだなと。


今年は『SPY×FAMILY』も『DEVIL』も『ラグタイム』も『タリータウン』も、新作なり新演出なり日本初演なりと、「みんなではじめてのものを作っていく」という作品に恵まれました。僕がいちばん好きなかたちでの舞台との関わり方です。

いろんな人のアイディアと技術が組み合わさって、それまで世界には存在しなかったものが生まれる瞬間。そして、そこに集まった人たちがまた次の場所に散り散りって作り上げたものが跡形もなく消えていく瞬間。

これが舞台芸術の美しさの源泉だと思うし、僕が舞台芸術に惹かれる大きな要素のひとつです。

年明け1本目の出演作品は、日本でも何回か上演がされている『スウィーニー・トッド』という舞台なんですが、「新しいメンバーでの新しいスウィーニーを作りたい」というヴィジョンをプロデューサーの皆さんや演出の宮本亞門さんがお持ちとのこと。どんな「新しさ」なのか、楽しみにしていようと思います。


来年がどんな年になるのかは本当にまったくわからないのだけど、いつも出たとこ勝負というか、流れに身を任せて、しんどくても楽しい方へ進んでいけたらいいなと思います。

なによりも、世界が平和でありますように。治安が安定していなかったら僕たちのやっている仕事なんて、あっという間の活動の機会が失われてしまいますから。

どんな歴史があっても、どんな文脈があっても、無惨に一般市民が殺されることを許容してはいけない。子どもや赤ん坊が悲惨な目に遭うことを肯定してはいけない。

また、自分の身近にある暴力を、見て見ぬ振りしてはいけない。自分もまた加害者のひとりになり得るという可能性を捨て去ってはいけない。ビクビク暮らす必要はないけれど、自分の喜びや幸せや満足感が、誰かの心を踏み台にして生み出されてはいないかと注意する心を忘れないこと。

嫌なことには「嫌だ」ということ。大好きな人には「好きだよ」と伝えること。嬉しいときには「嬉しい」と言い、悲しいときにはちゃんと悲しがること。人と会ったら「おはよう!」とか「よろしくお願いします!」ってちゃんと言うこと。

美味しいものを食べること。空を見上げること。月を眺めること。季節の花を愛でて、風の匂いを嗅ぐこと。ときたま深呼吸をすること。よく寝ること。

そういったことがいつも上手く完璧にできるわけじゃないけれど、できないときがあっても必要以上に落ち込まないこと。次からまたやり直したらいいのだとちゃんと知っておくこと。

来年も、こんなかんじでいきたいと思います。


本年もたいへんお世話になりました。

いつも応援くださって、支えてくださってありがとうございます。心から感謝しています、マジで。

来年も、どうぞよろしくお願いします。

良いお年を!



山野靖博


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