新納さんのお話。


いま出演している「TENTH」という舞台で初めて共演させていただいた俳優さんのなかに、新納慎也さんという方がいらっしゃいます。

今年の年明け、「風雲児たち」というNHKの時代劇で杉田玄白を演じてらっしゃって、その最後のシーン、前野良沢と再会する場面の演技には、大変心を動かされました。「温かな人間性をお持ちの方なんだろうな」とそれを見て想像してました。

「TENTH」ではその演技や踊りの魅力はもちろんのこと、2部の曲間のトークの時間にも強烈な個性を爆発させていて、毎回袖で新納さんの話を聞きながら僕も爆笑しています。

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そんな新納さんが1/10の夜公演でお話されていたことが、とっても心に残りました。

めっちゃいい話なので、もしかしたらルール違反なのかもしれないですけど、みなさんにもご紹介するために書きます。明日とか、もし怒られたら、全力で謝ろうと思います。

それは、2部のガラコンサート、「ウェディングシンガー」という作品から演奏される「POP」と「サタデー・ナイト・イン・ザ・シティ」という2曲の間のトークコーナーでのこと。


この、「ウェディングシンガー」という作品。2011年のクリエ公演のときに、のちに「東日本大震災」と呼ばれることになる大地震に遭遇したそうです。

3月11日のマチネ公演。1幕の最後。舞台上はクライマックスで、ほとんどの出演者が踊り狂っているようなシーン。そこに、地震が起きたみたい。

ショウストップとはせず、あと少しだからと、すごい揺れのなか出演者の皆さんは最後までパフォーマンスを続け、1幕が終わった瞬間に、それまでに見たこともないようなスピードで緞帳を下ろし、「出演者の皆さんはすぐ楽屋に避難ください!」と舞台監督から指示を受けたとのこと。

舞台の上には、照明器具やスピーカーが吊られていて、それが大きく揺れ、ガチャンガチャンと音を立てていたようです。

劇場の構造上、客席はとっても安全なので、お客様はその場に待機。でも、安全って言われたって、さぞかし不安だったことでしょう。

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その後、事態はどんどん深刻になっていきます。報道で知らされる各地の悲惨な状況、それが社会に認知されていくその過程は皆様も記憶に新しいことでしょう。

そんな状況で、「ウェディングシンガー」の上演日程はまだ残っています。

出演者、プロデューサーみんな集まって、話し合いをしたそうです。

こんなときに、公演を打つべきなのか。


たくさんの議論がされたでしょうが、ウェディングシンガーのカンパニーの皆さんは、「幕を開ける」という選択をされました。

震災から2日後。公演を再開したとのこと。


その、震災後の公演、客席には100名ほどのお客様しかいなかったようです。当然ですよね。というか、むしろよく100名も劇場に駆けつけてくれた、というような状況です。

出演者の皆さん、泣きながらパフォーマンスしたそうです。

お客さんも、力の限りの拍手と、大きな笑い声で、公演に力を添えてくださったんですって。


この話を、出番前の袖なかで聞いていてですね。僕はもう、なんか、涙が止まらなくって。いまも、この文章を書きながら、涙がちょっとだけ溢れてきます。

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新納さんは

「だからウェディングシンガーが日本でいちばん初めに震災後に上演した舞台やねん」

といって笑いをとってました。

あと、

「こっちも日本がこんなに大変なときにこんなことやってていいのかっていう葛藤もあったから、だったら少しでも被災地の役に立てるようにって、義援金集めもはじめた。これもウチらがいちばん初め。それ以降、義援金集めやってる劇場さんはみんなウチらをマネしてん」

といって笑いとってました。笑

なんて素敵な人なんだろう。新納さん。

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パフォーマーっていうのは、俳優だろうがミュージシャンだろうが、本当に無力です。有事のときには、なんの力もない。本当に、なんの力もないのです。多くのパフォーマーがそれを痛感しながら生きています。特に、「3.11」を経験してからは。

でも、そんななかで、「上演する」という選択をしたウェディングシンガーのカンパニーの皆さんの思い。本当に尊敬します。

もちろん、その選択が「唯一で最上の正解」ということではないことは十分理解していますが、それでも、日本中があれだけ物理的にも精神的にもダメージを受けていたときに「上演しよう」と決意したその勇気、すごいです。

こんなときだからこそ、経済を回す。

こんなときだからこそ、カラッとしたコメディを上演する。

こんなときでも劇場に来てくださるお客様に対して、精一杯パフォーマンスをする。

その後ろにある、演者さんやスタッフさんや、劇場に駆けつけたお客様の思いを想像すると、なんというか、言葉にならない気持ちになります。

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僕たちはなんて無力で、それでいて、なんて尊い仕事をしているんだろうと思います。

どんなときでも、誰かひとりの心に、元気の光を灯せるならば、周りの何万人に非難されようが、私たちは歌い、演じ、踊るのです。

あなたひとりが笑顔になってくれるなら、きっと僕らは、ステージの上に立つのです。

それが、社会にとっての最適解かどうかは、正直わからないんだけど、舞台表現者という生業である以上、僕らにとっての正解は、そこにあるのです。

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明日も、頑張ります。

精一杯、舞台に立ちます。

いまは、社会の機能の多くがストップするような災害は、幸いなことに起きてないけれど、またいつ大きな地震が来るかはわかりません。

もしかしたら東北や日本海側では大雪で悩まされる人がいるかもしれません。

いまなお、自分の家に帰れずにいる人もたくさんいます。

都会で、心を毎日殺されて、ギリギリのところで生きている人もたくさんいるでしょう。

そういった人たちに対して、僕らは、本当に無力です。

でも、僕らは舞台に立ち続けます。歌い続け、踊り続け、演じ続けます。

客席に来てくださるあなたのために。

僕たちのパフォーマンスが、あなたの心を元気にすることができるなら、僕らは自分のできるかぎりの力を振り絞って、あなたを元気にしたい。

その元気がもしかしたら伝染して、ひとりの人の命を救うかもしれない。被災地の復興を少しだけ後押しするかもしれない。日本の経済をちょっとだけ上向きにするかもしれない。

もしかしたら、まったく無意味かもしれないけれど、そうじゃないかもしれない。


ひとりでも、僕らのことを求めてくれる人がいるのなら。

僕らがやるべきことはひとつ。

そんなことをあらためて教えてくれた、新納さんのお話でした。

心からの尊敬を込めて、みなさんにご紹介させていただきます。

明日も頑張ります。






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